女系家族〈上〉 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101104317

感想・レビュー・書評

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  • 今月初めにテレ朝系で放送。放送前に読了するはずが、ずれ込んでしまいました。大阪の老舗を舞台に、遺産相続を巡ってのお話。3姉妹が段々と欲を出していくのに加えて、生前懇意にしていた女性に子どもが生まれることで更なる探り合いが繰り広げられます。遺産の行方は...誰が一番得をするのか?下巻に続きます。

  • 下巻に記す。

  • 大阪の老舗木綿問屋の、四代目当主が亡くなったことで繰り広げられる相続争いの話。
    代々女系の家系で、総領娘が養子婿をとって事業を継続していたので、当主と言えども家庭内では影の薄い存在であった。

    長女の藤代は出戻りの33歳。
    総領娘として母親から甘やかされて育ち、プライドが高い。
    父の跡を継ぐ(財産も家名も)のは当然自分であると思っていた。(事業にタッチしていないのに、この自信は何だ?)

    次女の千寿は地味で大人しく、姉が嫁に出てしまったため、養子婿をとった。
    全てのことで姉に差を付けられてきたことを恨んでいる。
    末の雛子は、まだ19歳。
    マイペースな現代っ子(連載当時)だが、苦労知らずゆえの酷薄さはある。

    家業のことも矢島家の財産のことも一手に任されている、大番頭の宇市。
    先先代から仕えているので、さすがの矢島家の面々も、彼には頭があがらないところがある。
    三姉妹の母の妹である芳子叔母。
    姉が家を継いだため分家を立ててもらったものの、分家に追いやられたという恨みがある。
    年齢をたてに三姉妹の上に立とうとするところが無きにしも非ず。
    この二人も一筋縄ではいかず、隙あらばうまい汁を吸おうと画策するのは三姉妹と変わらず。
    なんなら彼女たちよりも強かで、質が悪い。

    そして、父親が囲っていた藤代と同い年の妾・文乃。
    家庭内で影の薄かった嘉蔵を思いやり、ひっそりと息をひそめて生きてきた彼女。
    嘉蔵は遺言状の中では具体的に何かを残すことはなく、文乃も特に何かを欲しがることはなかった。
    しかし彼女が妊娠していることがわかり、事態は大きな局面を迎えるのだった。

    面白そうなプロットではある。
    でも、読んでいてもちっとも楽しくなかったのは、出てくる人出てくる人がみんな欲の塊で、一向に気持ちが晴れなかったから。

    山崎豊子の作品なのだから、単純なハッピーエンドや勧善懲悪ってことはないだろうと思うけれど、誰が得をしても嫌な気持ちになるだろうし、誰が損をしても自業自得だと思うだろうから、なかなか興が乗らないのだ。
    誰か一人でも善人が出てくれたらなあ。

  • 何度目かのテレビドラマ化を前に読んでます。
    遺産相続の嫌なところが思いっきり描かれており、読んでいて萎えました。
    実は身内でも骨肉の争いってヤツを繰り広げている者がおり、「ホンマに嫌になりますわ~」と思っているところで読んでしまったのがいけなかった…。

    長女が婿をとり家業をやっていく家でありながら、藤代はお嫁に出ていったのに(しかも出戻り、更に次女が婿とって後を継いでいる)、自分は総領娘だから!と強引に取り分を主張するあたりが理解し難い。
    しかもその理由が「自分は長女なのに、他の姉妹より取り分が少なかったり損することは、絶対に許せない」っていうのが、もうね…。
    けれども権利を主張してる人って、そういう考え方なんだなと、ちょっと身内の揉め事が理解できたような気もする。

    あと自分が相続する土地建物は、相続税が多く取られるから割に合わないので、他の姉妹たちの相続財産から少し回せってのも、すごい理由だなと。
    みんなの相続税を平等に負担したらいいんじゃないの?と思うんだけど、税理士さんや弁護士さんは登場しない(笑)

    しかも亡くなった旦那さんの愛人は妊娠してるし、先々代から仕えてる大番頭は財産をちょろまかしてるし、もう色々と大変。

    婿とって家を継いだ次女・千寿、頑張れと思って読んでます。

    裕福な商家のお嬢様方のお話なため、着物など立派なものが文章で表現されておりますが、私にその方面の知識がないため全く想像つかないことがとても残念。
    こちらはドラマで美しい女優さんによる映像で楽しみたいと思います。

    読んだ内容で気持ちは萎えますが、どんどん読み進めていけます。
    この相続、最後はどうなるの?という期待感を持ちつつ、下巻を読み始めます。

  • 秀作。
    山崎豊子さん、流石。関西を舞台にした作品は真骨頂。
    男女関係、商売に古さ、時代を感じるが、それも良い。
    人間の欲は時代が違っても変わらない。
    終盤の急展開が面白い。

  • ドラマを見て面白かったので原作へ。
    時間さえあればとにかく読み耽りました。それくらい面白い。
    昔の関西の名家の人々の暮らしぶりや価値観が分かる。ドラマであまり私には伝わってこなかったのかもしれないが、宇市がさらに醜悪で藤代がさらに恐ろしい女だと思った。本家からすれば妾の存在が面白くないのは分かるが、どうしても文代が気の毒に思えた。ただ自分が藤代らの立場だったらどうだろう。妾を面白くない気持ちになるのは分かるし、人間だれしも藤代らのような面を併せ持っているものなのでは。そこを容赦なく描き出した山崎豊子はやっぱりすごい。

  • 善人不在。

    もうそれに尽きる。おどろおどろしいのかなって思ったらその通りだし、上回る感じでした。

    上下一気に読んだけど、最後はやっぱなぁ!!!そうくると思ったわ!!!って感じである意味爽快でした。

    昭和のその時代はそんな感じだったのかあ、て感じと令和になるとだいぶん変わった感じ。
    女性は大変だったのね…長男が総取りだった頃は他のお子さんも大変だったんだろうけど。

    法律について勉強しながら作者の方が書かれたのはすごいなぁと思った。

    現代はFPとかの人ならわかる展開…てとこかな。
    時代ですね。

    個人的には、とても自然の形容の仕方とか表現が美しい…と噛み締めながら読んでました。上巻の春雷のシーンとか。あの雨の匂いと一気に降られてムワッとくる空気の流れとか読んでて蘇りました。

    あと、笑窪とか、北叟笑みとか腥いとか、漢字の勉強になりました!

  • 久しぶりに山崎豊子さん。
    社会派で重厚な作品の多い山崎さんだが、この作品はちょっと違う角度かもしれない。

    大阪の老舗矢島家は、代々跡継ぎに婿養子を迎える女系家族。
    その四代目である嘉蔵が亡くなり、莫大な遺産を巡る三人の美しい娘たちと大番頭、嘉蔵の妾、娘たちを取り巻く人々の愛憎劇。

    簡単に書くとこんな感じで、遺産を巡る諍いが繰り広げられる。
    美しい娘や大阪の富裕な家庭という一見「細雪」みたいな華やかで美しい物語の設定ではあるけれど、繰り広げられるのは遺産を巡る争いなので、華やかではあるが美しくはない。生々しくいやらしい。
    また、莫大な遺産を巡る争いではあるが、「犬神家の一族」のような血で血を洗うような惨劇も起きない。
    物語の展開としては金融業界と親子の隔絶を描いた「華麗なる一族」のような、しっかりした社会派なものだ。

    ところで、この作品は「にょけいかぞく」と読むし、わたしも女系と書いてにょけいと読んできたのだが、どうやら違うようだ。天皇陛下の退位(退位もおかしいとは思うが)に関してや後継問題などの報道の際、大抵のニュースで女系天皇(じょけいてんのう)と言っている。
    女系って、じょけいって読むんだ、知らなかった、とかなり衝撃を受けた。
    わたしが使うiPadでも、にょけいでは変換出来ない。
    知らなかった。
    いつからそうなったの。
    昔からなの。
    わたしと山崎豊子さんが間違っていたの。

    と、思ったわけだ。

    そんなこんなで下巻へ。

  • えげつなく面白かったです(笑)
    大阪を舞台にした小説を大阪にいるうちにもうちょっと読んでおこうと思って、手にとった本です。
    (電子書籍なんで手には取れないんですが)。

    1960年代と思しき大阪。老舗の木綿問屋が舞台。
    代々女子ばかり生まれ、能力のある男を婿にとって続いてい女系家族。
    つまりは女性が権力を持っているわけです。
    冒頭、当主の葬式から。奥さんはもう死んでます。
    という訳で相続争い勃発。
    ①わがままで婿取りを嫌がり嫁に行ったのに離婚して出戻ってきて長女として惣領のプライドを持つ長女。
    ②長女の割を食って婿取りし、家に残っている次女。
    ③若くてまだまだぶらぶらしている三女。
    ④その三女を取り込む、分家の叔母。
    ⑤三代に仕えすべての商売を知悉している老いた大番頭。
    ⑥長女のバックに着く、野心家の若い踊りの師匠。
    ⑦死んだ当主が囲っていた妾。
    などなどが怒涛に入り乱れる。えげつない心理描写。欲望のエレクトリックパレード(笑)。よく取材されたディティール。
    面白くないわけがない。さすが山崎豊子。

    しかしまあ・・・えげつないったら(笑)。ザ・ドロドロ。でも語り口は絶妙のサスペンス。
    そして小説ならではの心理描写の醍醐味。
    うまい。

    で、あと、当然地名などが大阪なんでちょっと面白い。
    あと、関西弁ってこうなると、効果抜群。

    一つ悔やまれるのは和服の知識があったら、倍くらい面白いだろうな、ということ。
    女性陣の服に意味や心意気が溢れている。んだろうな、きっと。

    多分、電子書籍でどこでも読めるので、下巻も怒涛に読んでしまいそうな予感。

    実は何年か前に米倉涼子さんでテレビドラマになったらしいんですが、不勉強で全く知りません。
    ただまあ、こりゃあ、原作の方が面白いに決まってるなあ、と勝手に感じながら読んでいます(笑)。

  • なんと人の欲望の際限のなさ、嫉妬の醜悪さだろう。妾の家に上がり込んでの所業の描写は鳥肌が立つくらいの凄惨な場面だった。

著者プロフィール

山崎 豊子(やまざき とよこ)
1924年1月2日 - 2013年9月29日
大阪府生まれの小説家。本名、杉本豊子(すぎもと とよこ)。 旧制女専を卒業後、毎日新聞社入社、学芸部で井上靖の薫陶を受けた。入社後に小説も書き、『暖簾』を刊行し作家デビュー。映画・ドラマ化され、大人気に。そして『花のれん』で第39回直木賞受賞し、新聞社を退職し専業作家となる。代表作に『白い巨塔』『華麗なる一族』『沈まぬ太陽』など。多くの作品が映画化・ドラマ化されており、2019年5月にも『白い巨塔』が岡田准一主演で連続TVドラマ化が決まった。

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