不毛地帯(三) (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (640ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101104423

感想・レビュー・書評

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  • 感想は最終巻に。

  • 太平洋戦争、シベリア抑留、商社での活躍とおよそ一人の人生とは思えないほどたくさんのことを経験する壹岐正、親友の自殺ともとれる鉄道事故死と最愛の妻の事故死を経て、かつて自決した上司の娘との恋・・・
    ボリュームがあり過ぎて凄い、残り2巻の展開が楽しみです。

  • 中東編。老いらくの恋もはじまり、ますます物語はドラマティックに。

  • 時代が変わる中で事業形態も大きく変革する必要があり、それに反する社内勢力があっても信じる方向性を貫く。一方で私生活には大きな変化。面白い第3巻。

  • 湾岸戦争で成果を挙げ、アメリカの自動車会社と日本メーカーとの提携に奔走する主人公。

    仕事が国際的になってくるにつれ、陸軍時代とはやり方は異なるが、常に国を背負って仕事に取り組む決意を固めていく。

    そんな中で不意に起こる悲劇・・・
    いったい、何のために働くのか、そんなことを考えさせられる第3巻でした。

  • 新車種の製造・販売が裏目裏目にでる日本の弱小自動車会社。一方、日本進出の足がかりを求めるアメリカ巨大自動車メーカー。そんな矢先に、主人公の愛妻が突然の事故死。愛娘は、競合商社のライバルの息子と結婚。息子は、財閥系商社に入社し、インドネシアへ赴任。
    傷心しきった主人公は、ニューヨークに転勤し、心機一転し、上記、日米の自動車会社の提携など尽力する。そして、主人公のプライベートも新たな局面が。

  • ますます激しくなる社内抗争に巻き込まれるなかで大切な支えを失って、揺らぐ気持ちと、、、
    アメリカ近畿商事社長になった壱岐
    権力とお金、

  • 千代田自動車との提携に纏わる話。
    加速する提携談、それを妨げる動きの中で、副社長里井との確執、妻の死、ニューヨーク駐在など新局面を迎え、人間ドラマが色濃くなっていく。

  • 近畿商事を重工業化路線へ転向したい壹岐と、繊維部門の地位を保持したい里井副社長。
    2人の溝はますます深まるばかり。

    そんな中、近畿商事の取引先である千代田自動車に提携の話が持ち上がった。
    相手はアメリカビッグ・スリーの1つであるフォーク(フォード?)。
    アメリカの自動車が上陸すれば日本のメーカーは1たまりもなく食いつぶされてしまう可能性があり、交渉は容易に進まない。
    当時(1970年代)、自動車産業の資本自由化について自動車メーカー、商社、ならびに通産省がいかに頭を悩ませていたかというのがよくわかった。

    この巻では、壹岐の妻・佳子が交通事故のため亡くなってしまう。
    しかもそれは、壹岐が秋津千里に対して心を揺らしていることを妻に見咎められたことが原因になった。
    ドラマを見ていたとき、和久井映見さんの演技すごくいいなあと思っていたので、あまりに突然死んでしまったのがショックだった。

    壹岐は、妻を失ったのを機にニューヨークへ駐在することを決め、アメリカ近畿商事に社長として赴任することとなった。
    フォードと千代田の提携交渉は、フォードの出資比率を何%にするかで折り合いがつかず、難航を極める(フォーク側は、重要議案について発言権を確保し得る33.4%の持株比率を要求。一方の千代田は、そんなことをされると会社そのものをフォードに乗っ取られてしまうので、出資を20%までにとどめたい)。
    しかし、交渉が最終段階に入ろうかというとき、副社長の里井が狭心症のため倒れてしまう。
    出張の多い商社マンにとって病気に神経質にならなければならないことは大きなハンディキャップになる。
    壹岐にナンバー・2(=次期社長)の座を奪われたくない一心から焦る里井副社長。
    岸部四郎さんはこの里井という人間を本当に上手に演じておられたなあと改めて思った。

  • この巻の中心となるお話は日本の「資本自由化」の時代の商社マンたちの経済戦争のお話です。  メインとなる商談は「自動車会社の資本提携」で、かつての鎖国時代さながらに国内産業擁護一辺倒だった我が日本国がグローバル化への舵をきりはじめた時代を描いています。  KiKi にとって最も感慨深かったのは、あの戦争が終結し、そこそこの時間を経て強いアメリカ自動車産業が弱い日本自動車産業に食指を伸ばし始めていた時代があり、そこからさらに又そこそこの年月を経て、KiKi の学生時代には「日米貿易摩擦」な~んていうことが言われ始めた時代があったという事実でした。

    KiKi は学生時代にESS (English Speaking Society) というクラブに所属し、1年生の時のその活動の中の Discussion で、「日米貿易摩擦」をテーマにした大学対抗の大会に出場しました。  これは壱岐さんたちが必死になって強者アメリカに対峙していた時代とはパワーバランスがある意味で逆転し、低燃費の日本の自動車産業が世界ブランドになり、日本が一方的な(?)貿易黒字を謳歌していた時代に、これから日本の貿易はどうあるべきか?を議論する場でした。  でも、この物語で描かれているアメリカ > 日本 というパワーバランスの時代は、そのほんのちょっと前、KiKi の子供時代の出来事だったんですよね~。  そしてこの日本の経済成長の果てに「ジャパン・アズ・ナンバー・ワン」がありバブル崩壊があったわけです。



    物語の中ではシベリア抑留帰還者で私欲とは無縁の善人壱岐 vs. 嫉妬に燃える男・里井副社長という対立軸やら近畿商事の頭脳の壱岐 vs. 東京商事・商社マンの鑑(?)の鮫島という対立軸ばかりが強調されているけれど、個人的にはそのあまりにも「とってつけたような人物設定、対立設定」に胡散臭さみたいなものを感じました。  

    まあ、会社社会の中での男の嫉妬なるものの壮絶さ(?)は KiKi 自身、社会生活の中で嫌って言うほど見てきているけれど、里井さんは単なる権力欲・出世欲だけで動いていた人物ではなかったんじゃないかな?・・・・・と。  もちろん壱岐さんの方が上手だったのは間違いのないことだったんだろうけれど・・・・。

    又、上司には恵まれなかったけれど、部下の信望は厚いっていうのもねぇ・・・・。  あの「高度成長期」の「会社人間」の原型みたいなものを感じるだけに、正直、綺麗ごとに過ぎるかなぁ・・・・・と。  今でこそ「プライベート・ライフを大切に」は当たり前みたいになっているけれど、日本の高度成長の背景には「滅私奉公」が暗黙の了承事項だったような時代があったんですけどねぇ。  物語の中では壱岐の部下のアメリカ人の奥さんが愚痴をこぼしているシーンがあるけれど、ここで敢えて日本人ではなくアメリカ人の奥さんにしているあたりが、商社マンらしさ・・・・を表現していると言うよりは、ある意味の逃げだなぁ・・・・と。  そうやって滅私奉公で頑張った末に「濡れ落ち葉」な~んていう陰口をたたかれた哀しい男性がいっぱいいたわけでして・・・・・。

    個人的に一番気に入らなかったのは、「内助の功」の見本みたいな奥さんを交通事故で失ったという設定でしょうか。  何て言うか、そこにこのどちらかというと硬派なこの小説にラブ・アフェアという軟派なプロットを持ち込むためのご都合主義みたいなものを感じちゃいました。  (基本的に KiKi は天邪鬼ですから 苦笑)

    と、ちょっと否定的なことをあれこれ書いちゃったけれど、全体的にはよくできた作品だったと思います。  かなりグイグイと「読まされちゃった」物語でしたし・・・・・。  そして最後に・・・・・・

    この物語を読了した今、一番感じることは、かの大戦では石油に泣かされ、その後の経済発展の中でもエネルギーに課題を抱えていた我が日本が、未だにそこに何ら「あるべき解決策」を持ち合わせていないという事実を再認識したということでしょうか。  この物語の流れの中で、「原子力依存体質」が育まれたことは容易に想像がつくし、それもある意味では「仕方なかったこと」だったかもしれないけれど、あのバブリーな時代に原子力以外の次世代エネルギー開発に我が日本国がどれだけの資本を投下してきたのか、どこかで一度しっかりと調べてみたいなぁと思いました。

    そして物語はいよいよ「シベリア」に続く不毛地帯、中近東へ移行します。

    (全文はブログにて)

著者プロフィール

山崎 豊子(やまざき とよこ)
1924年1月2日 - 2013年9月29日
大阪府生まれの小説家。本名、杉本豊子(すぎもと とよこ)。 旧制女専を卒業後、毎日新聞社入社、学芸部で井上靖の薫陶を受けた。入社後に小説も書き、『暖簾』を刊行し作家デビュー。映画・ドラマ化され、大人気に。そして『花のれん』で第39回直木賞受賞し、新聞社を退職し専業作家となる。代表作に『白い巨塔』『華麗なる一族』『沈まぬ太陽』など。多くの作品が映画化・ドラマ化されており、2019年5月にも『白い巨塔』が岡田准一主演で連続TVドラマ化が決まった。

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