- Amazon.co.jp ・本 (592ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101105079
感想・レビュー・書評
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主人公、次郎の気持ちがとても丁寧に正直に描かれている。子供って、こんな風にきかん気だったり泣き虫だったり、勝手気ままだったり繊細だったり、そしてとても傷つきやすいということを思い出した。次郎が人間関係に悩みながら少しずつ成長していく様子を、見守っている気持ちになった。
久し振りに良い読書の時間を持てた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
全巻を通したメモです。初めて読書に開眼した本です。小学校の国語の先生が教師になったきっかけとして紹介されたことを覚えていて、大学の卒業旅行に持参しました。貧乏旅行で電車に揺られながら泣いてしまいました。読書で泣いたのが初めてで、自分でも驚きました。論語物語の入口になりました。
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読んで良かった。目と鼻から水だだ漏れ。とても、読んで良かった。
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次郎ちゃんとにんじんは仲良くなれるな
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こんなにも内面の描写に成功した小説はいまだかつて読んだことがない。
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中学生の頃に好きだった本
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路傍の石と同時期に書かれた成長小説です。
前半はけっこう暗い感じでしたが、第一部の最後の母の会話は非常に感動的でした。
次郎の母は、教育家で厳しい面が強く、次郎は無条件の愛を提供する乳母と比較し、母に反抗することが多かった。けれど、母は病気になり次郎が居候している母の実家に、母が療養のために一緒に住むことになる。次郎を含めた3人兄弟の次郎以外は家に戻るが、次郎は母の周りの世話をすることになる。最初は周囲への評価が気になり、一生懸命身の周りのお世話をするが、次第に彼と母の心は変わってくる。その最後、母は次郎が愛してやまない乳母を呼び、乳母に語る。
「子供って、ただかわいがってやりさえすればいいのね。」
この言葉は非常に感動的でした。切り文句では伝わらないかもしれませんが。
また、
「『世の中にはね――』
と、先生は次郎の頭から手をはずして、ゆっくり言葉をついだ。
『たくさんの幸福にめぐまれながら、たった一つの不幸のために、自分を非常に不幸な人間だと思っている人もあるし、……それかと思うと、不幸だらけの人間でありながら、自分で何かの幸福を見つけだして、勇ましく戦っていく人もある。……わかるかね。……よく考えてみるんだ。』」
人には、それぞれの人生の成長や転機があるものですが、それぞれに教訓を与えてくれるものがあると思います。一つ一つのエピソードをあげたらそれこそ、無限といえるでしょう。そういうことは、いろんな人から聞くことは多いです。でも、ひとつひとつのエピソードを単発で学ぶことではなく、小説で一人の人間の成長をおっていき、その主人公に影響を与えた教訓、年長者からの指導を自分も学んでいくことで、また違った感覚で自分の中に入る気がします。
筆者は「この本を世の親たちに読んでもらいたい」と語っています。子供はまだいませんが、いないうちに読めてよかったです。
昭和初期に書かれたものでも、時代を超えた感動を伝えるものだと思います。 -
幼き日、父より「読め」と渡された『次郎物語 上・中・下』(児童版)…
面白さがさっぱりわからず、上巻の半分にすら至らずにこっそり手放した3冊だったけれども、時を経て今や50代。
父への鎮魂を込め、改めて本元の方の『次郎物語』を手に取ったらば…
なんちゅう面白さ!
今や絶滅危惧種になるかと危ぶまれる“男の子”を存分に味わえる上巻は、“育児書”としても絶品なり。 -
わたしの人生の根底に流れるものを作ってくれた物語。
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2月からずっと読み続けていたけど、途中震災やら引っ越しやらがあって止まった時期があった。
けどなんとか読了。
早い段階で気が付いたけど、名作。次郎の心理が深く描写されていて、登場人物もキチンと人間性が描かれている。そしてこの物語の中には悪人が一人もいない。誰かにとって悪だったりすることはあっても、万人に対しての悪役がいない。これが素晴らしい。間違ったり諭したりし省みたりしながら、みんな一生懸命それぞれと向き合っている。
次郎は自分のことを醜く浅ましいと思っているようだが、私はそうは思わなかった。下村氏自身も幼少の頃里子に出ており当時の経験を基に書いたらしい。だからだろうか、書き方が次郎の心理により気味なのは。下村氏自身が次郎に同化するあまり、醜く浅ましいと感じる部分を客観的に書けなくなったのかもしれない。
児童文学としても評価が高いとどこかで書いてあるのを読んだけど、児童には難しいんではないだろうか。
惜しむらくは未完であること。完結していたら名を残す程の名作になっていたに違いない。