黒地の絵 傑作短編集2 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101109039

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  • 衝撃、の一冊。

    昭和が舞台の9篇。
    社会派推理小説の印象が強かった著者だけに、意外性と衝撃を味わった。

    一言で言うと底知れぬ人間の怖さを描いた作品だと思う。

    表題作「黒地の絵」は衝撃が半端ない。
    知らなかった、朝鮮戦争が九州の小倉にもたらした陰の事件。
    衝撃で掻き乱されるとはこういう事なんだなと実感する傍らで、恐怖と虚しさ、そして復讐の念を言葉にのせる松本清張の筆致にのみ込まれそうな感覚にも陥った。

    妻の不貞を疑う夫の復讐を描いた「確証」も衝撃。

    妻を追いつめるこの蛇のような夫が心底怖い。

    これぞ人が心に持つ毒だと震えた。

  • 松本清張の傑作短編集第二弾。現代と言っても昭和中頃の話。七つの短編からなる。ミステリー要素あり、さらっと読ませる。さすが清張さん。

  • 松本清張の短編集。『黒地の絵』は九州小倉の米軍基地からの脱走兵の黒人たちに妻を犯された男の凄絶な復讐を描く。朝鮮戦争で戦死した米軍兵士の行末が興味深い。『真贋の森』閉鎖的な日本美術学界から追い出された男の復讐を描く。『紙の牙』市政新聞の記者の残酷さを描く。主人公に同情するが、まさかこんなことからという恐怖。1個人を追い詰めるマスコミの残酷さ。『空白の意匠』広告記事を巡っての新聞社と広告代理店の探り合いを描く。『確証』妻の不貞を疑う夫は、ある方法で確信するが など 何気ない毎日が突然何かの拍子で一変し、それに怯え、あるいは闘う普通の人間の末路が描かれていて、さすが清張だと思う。2023年6月17日読了。

  • 9つからなる短編集。
    後味悪くてなんだか読むの辛く感じた作品でしたが、ある意味人間の嫌な部分が露わになったストーリーに感じました。

    『二階』『拐帯行』『黒地の絵』『空白の意匠』
    『草笛』『確証』

  • 9作品収録。嫉妬、恨み、脅迫、男の職場などがテーマかな。妻側からしたらこれほど辛いものはない「二階」。戦後、黒人たちに家庭を壊された夫が最後にとった行動が不気味な「黒地の絵」。自分のミスではないのに会社という組織の中で責任を取らされる「空白の意匠」が印象に残った。少年の初恋がテーマだと思う「草笛」は中途半端な終わり方で残念。

  • 「二階」「拐帯行」「黒地の絵」「装飾評伝」「真贋の森」
    「紙の牙」「空白の意匠」「草笛」「確証」の9つの短編が収録。表題にもなっている「黒地の絵」は、朝鮮戦争中に九州は小倉にあった米軍基地での黒人兵士脱走と小倉市民への危害や被害の実話が素材になっている。他の作品も、アカデミズム、白い巨塔に対する鬱積や企み、虐げられた仕返しをしたつもりが逆に嵌められて、組織防衛のために犠牲になる人間など、読み応えのある作品ばかり。

  • 人間の悪意に焦点を当てた作品が多い。戦時中の闇を引きずるような内容が多いが、人の心の弱い部分をリアルに描いており今日でも色あせない。少し人間不信になるかもしれない。

  • 「装飾評伝」は秀逸。才ある者への羨望。復讐としての記録。08.4.8読む。

  • 清張の短編集2冊目。
    こないだの『黒い画集』ほどの衝撃は無かったが、それでも印象の強い作品はいくつかあったし、どれも興味をぐいぐいと引きつけられ一気に読まされてしまう、優れた語り口が見られた。
    「紙の刃」などはサラリーマンが苦境に陥り困惑を極める話なのだが、実際の自分の仕事とはえらく違う領域であってもこの仕事上の困窮は身に迫る感じがして、読んでいて辛くなった。
    どうやら松本清張は現代日本人が普遍的に日常的にすれ違うような「イヤな感じ」を見事に抉り出す点で実に傑出しているようだ。
    松本清張は、「イヤな感じ」大魔王である。
    現実生活にもありがちな「イヤな感じ」を、フィクションを読んでわざわざ反芻させられ強調されることに喜びを感じるという傾向は、「ホラー映画/小説」に何故か惹かれてしまう人の心の闇に通底するのかもしれない。

  • 本のタイトルは黒地の絵だが、内容は「真贋の森」が出色。
    清張のアカデミズムに対する見方が色濃く作品に反映されている様に感じる。

    「装飾評伝」「草笛」がこれに次ぐ。虚実ない交ぜとなったリアリティー溢れる佳品。

    他の作品も読みごたえはあるが、話の結末はことごとく悲しい。清張の現代小説は人が死なない(殺されない)方がよい。推理小説はまた別。

    「真贋の森」は特にオススメ。

    くまざわ書店阿倍野店にて購入。

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著者プロフィール

1909年、福岡県生まれ。92年没。印刷工を経て朝日新聞九州支社広告部に入社。52年、「或る『小倉日記』伝」で芥川賞を受賞。以降、社会派推理、昭和史、古代史など様々な分野で旺盛な作家活動を続ける。代表作に「砂の器」「昭和史発掘」など多数。

「2023年 『内海の輪 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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