- Amazon.co.jp ・本 (317ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101115054
感想・レビュー・書評
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短編11編を収録しています。
表題作の「夢みる少年の昼と夜」は、ギリシア神話に興味を示す少年を主人公にした物語で、感受性の強い少年の不安定な心をていねいにえがきとろうとしています。
おなじく強い印象をのこす少年が登場する「死者の馭者」や、画家の父をもつ少女を主人公とする「鏡の中の少女」は、すこし神秘的な内容を含んでおり、ロマン派の小説の影響が感じられます。
一方「鬼」は、『今昔物語』から想を得てつくられた作品です。人間の心のありようを冷徹に見つめようとする著者のまなざしが印象的です。
兄の自殺した理由を知る女性をえがいた「秋の嘆き」や、精神に異常をきたす医者の妻をえがいた「世界の終り」は、題材にどうしても古さを感じてしまいますが、整った短編小説にしあげられていて、著者のストーリー・テラーとしての卓越した手腕にあらためて目を開かされました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
不安定な少年、少女期の果てしない空想(妄想)。思春期を過ぎ、変化に乗り切れなかった女性の妄想に壊れていく姿、妄想に巻き込まれていく男性。常に死やおしまいの予感の漂う中、強い感受性によりそれを綺麗に包み隠そうとしつつ、読み手を導いていく印象でした。戦争と言う大きな傷、変化を踏まえたこその作品のような気がします。それゆえ抱える重さもひとしおです。
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幻想的な短編集。『幻影』が特に気に入った。福永武彦の愛についての思想を垣間見ることが出来る。どの作品も夢のようで儚く哀しい。
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草の花の美しさに中てられて読み始めたので、長編と短編の違いで少し戸惑った。しかし読み進めるうちに、短編は短編で瞬間の風景を切り取る力に魅せられた。幻想の中に住む人たちについての短編集といったところだろうか。「鏡の中の少女」「死後」「世界の終り」のような夢遊病に近い感覚を持つ小説は夜に読みたい。
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ぶんがくーなアイテム(鏡とか)がたくさんちりばめられた、幻想的で素敵な短編集なんですが、何で引用文がわざわざそこなのっていうとこ登録しちゃったよ。
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「死神の馭者」がいい
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再々読……くらいでしょうか、記憶も曖昧ですが。
1954-1959年に書かれた短編集。
長~いブランクを経て読み返すことの醍醐味を再確認。
その昔、気に入っていたお話が、
今、この年で(笑)読んでみると、
どうにも感傷的過ぎる気がして評価が低くなったり、
逆に、かつて今イチとか思った作品が、
すこぶる面白かったりするというアレです。 -
◎「死後」 ○「風景」「幻影」
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『夢みる少年の昼と夜』、『秋の嘆き』、『沼』、『風景』、『死神の馭者』、『幻影』、『一時間の航海』、『鏡の中の少女』、『鬼』、『死後』、『世界の終り』の11篇の幻視譚。ギリシャ神話に惑溺する少年の夢想を描いた『夢みる少年の昼と夜』、物の形が大きくなり自分を押しつぶす様に見え、自分が鏡の中に映る自分に乗っ取られてしまう『鏡の中の少女』、医者の妻が世間体を気にする姑と夫の狭間で段々と魂が壊れてゆく様を描いた『世界の終り』が好みだった。普通なら「華奢」と書く所を「花車」と書いているのが印象的。
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短編集。
どれも共通して昔の児童文学のような独特の古めかしさを持った文体。
有島武男みたいに、
話の内容の幼さと文章の媚びない感じがちぐはぐでいい。
表題作は長野まゆみの小説のような、
キラキラした単語の羅列が美しい。
空想少年はいつも素敵。