星への旅 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101117027

感想・レビュー・書評

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  • 私にはただ悪趣味で内容がなく思えたけど、SF好き・グロ描写好きには響くのかもしれない。

  • やたら轢死の描写が多くて、毎日通勤電車に揺られている身としては苦しいところもあった。
    若さゆえの死の儚さと美しさみたいなものを感じた作品。

  • 「鉄橋」「少女架刑」「透明標本」「石の微笑」「星への旅」「白い道」の六篇。
    吉村昭氏の初期作品。「死」が色濃く表れている。
    表題作「星への旅」。名状しがたい読後感。

    個人的には、「少女架刑」「透明標本」が印象的。ある意味。対のようになっている。
    「少女架刑」は、吉村昭氏には珍しい、「私」という一人称の語り。また、物語る「少女」の視点も不思議で。そして、怖い。

    収録されている6つの短篇の登場人物たちは、“星への旅”になっていくのだろう。
    “星への旅”という言葉の響きは綺麗だが、表題作の「星への旅」は、テーマが重い。

  • 今のところ、厳しい。死体処理の話。


    読了。解説を読む。

    小説はエンターテイメントだと思って来たが、たしかに戦争体験のある吉村氏のような人物の語る物語にはある種、思考実験というか、考えの表現というか、そういうものを読み取れなくもないのかなぁと妙に納得してしまった。

  • 読みたいものが収録されていたので手に取った一冊。

  • 死を題材にした短編集。
    吉村昭の記録小説以外の物語を読むのは初めてだった。
    記録小説で見せる重厚感無く、ひたすらに儚げでロマンティシズム。
    少し、肩透かしを食らったような感じがした。

  •  死体愛横溢する作品集。特に「透明標本」の完成度には眩暈がするようだ。

     ...
     義父の問われた罪の内容は意外だった。義父は、焼土になった町々を深夜ひそかに忍び歩き、死体の大腿部の骨を鋸でひき、その骨を持ち帰っていまわしい彫刻をほどこしていたのだという。倹四郎おその仕事を手伝ったのではないかという疑いを受けて、激しい拷問を繰返され追及されたが、ようやく嫌疑もはれて二ヶ月後には釈放された。義父は、その後、体の衰弱が甚だしく未決監で病死した。...(p167)
     ...琥珀色の液の中には、兎の頭部の骨がこちらに鋭く尖った歯列をむき出しにしている。
     ...眼窩と歯列の間から、気泡が液の中を立ちのぼっている。骨のうすい部分は、電光を受けて雲母のような明るい光沢をやどしていた。 (p168-169)
    ...美しい標本を作り上げようと思い立ったのは、その時からであった。かれは、腐肉の中からのぞいている骨を仔細に観察した。骨には、寒天状に透けている個所がある。その部分の骨は、新鮮で美しく見えた。もしも、透明な骨標本ができたとしたら、骨の内部も透けてみえ、医学的にも価値があろうし、また、美しい骨を作りたいという自分の欲望も満たされる。水晶のように透けた骨、水槽のガラスを透して中をのぞくように骨の内部もうかがいみることのできる骨標本。(p173)
    ...かれは、執刀医の肩越しに患者の背の骨がきり開かれてゆくのをまたたきもせずに凝視していた。
    ...シャーレの中に、骨が捨てられた。かれは血にまみれたその艶やかなものを息を殺して見つめた。それは、腐爛死体から取り出される骨とは異なって、水からあげられたばかりの小魚のように、さわれば弾ね返りでもする新鮮なものにみえた。(p179-180)
    ...「反対か?」
    目が凝固して、するどく加茂の眼にそそがれた。
    「俺は百合子の親なのだ。美しい骨に仕上げて残してやるのだ」...(p218)
     「透明標本」。

     併録の「少女架刑」とリンクしているけれど一部齟齬がありそこが絶妙な加減である。
     著者はどれだけ死体が好きなんだろうと感心する。「赤い人」「磔」も肉体損壊描写しつこくて、今思えば源流はこれなんだな。
     それにしても「生麦事件」「羆嵐」の吉村昭と直接つながらず混乱。澁澤龍彦のエッセイに文学仲間として登場してて、えっあの生麦事件でえげれす人にカタカナセリフ書いた吉村昭?と中間小説の人だと思ってた。
     これ読みながらお腹空いて鶏肉のスープ作ってて似られる様子を見て一瞬みぞおちがひゅっとなったさ。

    2017/02/14

  • 死が漂う6編の小説。雨に濡れた蜘蛛の巣など細部の描写がとても美しい。作品を通して何を言いたいのかはさっぱり掴めなかった。

  • 初期短編集
    表題作で太宰治賞をとっている

    「鉄橋」
    傲慢かつ臆病、ゆえに意味なく自分を試そうとしてしまう
    それも無駄に危険なシチュエーションで

    「少女架刑」
    人体標本としてボロボロに使いたおされながら
    誰にも感謝されない女の子

    「透明標本」
    人骨標本に美を追求する老人と
    永遠の架刑にのぞむ娘

    「石の微笑」
    意味のないものにだって美術的価値を見いだすことはできる
    しかし人間は

    「星への旅」
    集団自殺の旅になんとなくついてきてしまう少年
    臆病者と思われたくないがためだけに

    「白い道」
    空襲で街が焼けるなか
    人々は絆の空虚さに直面する

  • 短中編小説集。
    全話、死や自殺に関する話となっている。
    くらい主題を扱いながらそれほど、暗く感じないのは、死を暗いものではない風に描いているからか?吉村昭の小説。
    20161015

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著者プロフィール

一九二七(昭和二)年、東京・日暮里生まれ。学習院大学中退。五八年、短篇集『青い骨』を自費出版。六六年、『星への旅』で太宰治賞を受賞、本格的な作家活動に入る。七三年『戦艦武蔵』『関東大震災』で菊池寛賞、七九年『ふぉん・しいほるとの娘』で吉川英治文学賞、八四年『破獄』で読売文学賞を受賞。二〇〇六(平成一八)年没。そのほかの作品に『高熱隧道』『桜田門外ノ変』『黒船』『私の文学漂流』などがある。

「2021年 『花火 吉村昭後期短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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