長英逃亡(下) (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101117263

感想・レビュー・書評

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  • 高野長英という名は知っていたが、こんなにも過酷な人生だったなんて知らなかった、吉村昭さんの語る長栄にグイグイ引き込まれて、地図を見ながら自身も逃亡している気分で読み込みました。

  • 壮絶な終わり方だった。伊達宗城、島津斉彬など幕末の有名人が登場して、時代は一気に動いていく。せっかく開けたと思った長英の運命が、生活費のために落ちていってしまったのが悲哀である。

  • 非業の死を遂げたのは嘉永三年。幕末志士の活動が活発化するのはその先。ペリーもまだ来航していない。それなりに法の秩序が保たれていたのだろう。もう少し混沌としていれば、、維新を生きていれば・・歴史のifを禁句とするのは学問の世界。空想に浸るのは自由。想像の補完がなければ、小説すらも成り立たない。薩摩、宇和島の雄藩に期待された能力。幕末・維新、列強に対抗するのにどれほど力になっただろう。生き残れなかった。そして日本が植民地化されることもなかった。それが歴史の事実。兵書の翻訳は読み継がれた。逃亡生活を生きた証として。

  • 長すぎる。

  • 非常に面白く、細部まで圧倒される力が注がれた作品だった。
    根を込めて読んだ事もあり、長英の目線でoneショットカメラ的に彼の人間的なものを共有して行った想い。

    当所は「インテリ特有の不遜傲岸」さが有れども、長い逃避行の裡に、下賤問わず(たいていは裕福な医師や商人だったが)人に触れて、温もりへの謝意に溢れて行った日々。それでも晩年では「世話になり続けたことへの卑屈な感情の高まり」は押し殺せず、拗ねた思いになったことも有ったろう。

    驚のは毎度の事、筆者の考え・・どこまで資料が有ったのか!
    例えば、捕縛のきっかけとなった男・・良く「身内に気をつけろ」というものの、アリ得る設定。
    一番納得がいくのは向学心、栄誉、自尊心からくる「蘭学の和訳」を増やしていったこと。実るほど首を垂れるじゃないが、「実らせないように」コウベは垂れ続けないと。

    明治の夜明けまであと13年という散り方。とは言え、3人の子持ちでは生活が辛すぎる。

  • 各所への逃亡を経て、江戸へ身を隠した長英は、自らの顔を焼き、ひとりの町医者として暮らすことを選ぶ。しかし逃げ続けることはついにできず、彼の家へ捕吏が踏み込み、殴殺されてしまうまでを描き切る下巻。
    様々な史料、伝説を勘案し、取捨選択することで生まれている説得力と、抑制的な筆致によって、全編に緊張感が漲っている。読み終えた後は、充実感とともに、空を見つめるしかないような大きな虚脱感も覚える。

  • 綿密な調査で史実に基づいた作品。生涯のうちの僅か6年の短い期間の逃亡生活をスリルに満ちた長編に仕立てた。長英の強い意志はもとより、周囲の人が命懸けで支援する。友人はありがたい存在だ。追われる身で妻子と過ごせたのは信じ難いが、娘が吉原に売られる話は真実味があって暗澹たる気持ちになった。2019.1.22

  • 世が世なら一流の学者として栄光に包まれた生涯を送っていただろう高野長英の逃亡劇。捕吏に怯える日々の描写はリアルで、陽のあたる平凡な生活がどれほど幸せか思い至らされるほど。彼を匿う学者仲間とその縁者たち、入牢時代の恩義を忘れぬ侠客たちの助力は、学識を誇り時に傲慢だった彼を、真の意味で人間的に成長させたかのようで、出る杭を罰する歪んだ国情と、危険を承知で長英を守ろうとする人々のコントラストは本作の魅力。その中で主人公は、死罪覚悟で破牢した意義を、自分以外には成し得ない洋書の翻訳、いわば国防への貢献によって見つけていくが、もう少し待てば、もう少し逃げきれば、という宿運の悪さが彼に常につきまとっており、ラストは衝撃的。登場する著名人は(ゲスト出演含め)、シーボルト、島津斉彬、遠山金四郎、勝海舟など。時代の端境期を感じずにいられない。

  • 2013/12/01完讀

    「歴史そのものがドラマだ。」--吉村昭

    在俠客的幫忙下,長英回故鄉見了母親一面。之後他到福島、米沢等地,決定回到江戶,進行他脫獄的目的;翻譯。江戶的警戒已經不再那麼嚴格,他從鈴木春山處獲得蘭兵書,在內田的安排下也和妻子在麻布宮下町住了下來。後來江川英龍安排他離開江戶,過一陣子他在搬回江戶住。他向島津家世子齊彬獻上譯書,宇和島藩主伊達宗城招聘他去宇和島譯書(高島秋帆入獄前的藏書)。於是他在宇和島家臣陪同下,驚險地渡過東海道之旅,在大阪拜見宗城。到達宇和島之後進行翻譯,但是最後不知為何被幕府查知,他離開宇和島,本想前往薩摩,但是薩摩當時正發生お由羅之亂的血腥屠殺,齊彬也無力保護他,他只好前往廣島,但又回到宇和島取辭典,並決定回到江戶。回到江戶之後,繼續和妻子一起生活,幕府當時正逢開明派的阿部正弘老中執政,原本長英抱持希望,但此時幕府害怕時人批評時政,並全面禁止洋書。長英失去翻譯支持家計的方法,但又想要自立,於是當掉自己的辭典(這想必是錐心之痛,不過為了生活、妻兒和即將出生的小孩,也是要放棄自己最重要的初衷),最後甚至用火燒傷自己的臉,在青山以假名沢三伯繼續行醫。幕府當時查知他的譯本,認為能有這麼高水準的翻譯能力的非長英莫屬,又開始警戒,並且找了當時同獄的人當線民四處搜索,長英就這樣被發現,捕快們偽裝病人衝進他家,長英竟然在逃走過程被十手圍毆致死,幫助他的人都被審問嚴懲。三個月後,島津齊彬終於成為薩摩藩藩主,終於有力可以庇護長英,但是他已經不在人世。

    讀到あとがき,才知道吉村是經過多麼緻密的調查與考證,不禁為這部作品感到十分佩服。他以非常客觀及考證的立場在寫作(而且一切的路線都可以在地圖上找得出來),連成一氣,十分有說服力。對長英本人情緒的描寫,極度壓抑作者的存在和主觀的感情散溢(這也是吉村文學的特色,「記錄感」很強),但是還是在限度內有把主人公的感覺描寫出來,他和母親見面的那一幕,還有和妻子ゆき事隔七年重逢的那一段令我印象很深刻。(不過讀完這麼壓抑的一本書,突然很想讀情感很奔放的感性文章。交替閱讀,輪換主題的的感覺很棒)

    翻譯是一件神聖,也是無比困難的事。可以流暢地意譯,並且精準地予以註釋說明,並且譯出正確的譯文,是很困難的(也是我覺得功德無量!!!!!的工作)。尤其在當時的時代,他可謂是無可取代的唯一人才,因此他那種懷才不遇的鬱悶感是很正常的(其實是整個國家和大環境對不起他)他那悲劇性的人生,讀完之後一種哀傷的情緒還是一直留在心中(無辜被牽連、入獄後兩個月鳥居就下台、想拜託島津結果島津家無力救他、時政頒佈禁止譯書令、他因為自己的仁慈反而被獄友背叛、死後三個月島津齊彬就執政了),他花了很多無謂的人生在逃亡,要是讓他好好可以不擔心財源進行翻譯,諒必幕末史又會有另外一番風貌(如果阿部正弘重用他,說不定幕府不會那麼快垮台,洋式軍隊和防禦會更早並且健全地建立…等等,有好多可能性。)他身邊有好多人具有道德勇氣並且拔刀相助,但也因此受到牽連,這部份也讓人覺得很難過。但是能夠透過吉村的文章,認識這位一百多年前的悲劇英雄,跟著他的腳步審視他的生命,還是覺得,要是高野地下有知,一定會很欣慰吧。卷末的解說提到,吉村不接受編輯部想題目、提供鉅額的酬金給他來寫作的方式,他認為 「そのような仕事をするのは、自分をゆがめることになる」,凡是他寫的,都是他有興趣的題目。我非常能瞭解這種感覺,也對他的骨氣與堅持感到佩服。只寫自己想寫的,也讓吉村文學的作品中燃燒著一種靜謐但執著的火焰與愛着。

  • 一方、下巻では長英に影響を受ける人たちが確かにいたこと、また「志士」という人たちがどんなものなのかと考えさせられた。やはり現代において、ここまで気高い志を保つ人にならねばと思って仕方がない。
    しかし、不運。不運だが、気高い。

著者プロフィール

一九二七(昭和二)年、東京・日暮里生まれ。学習院大学中退。五八年、短篇集『青い骨』を自費出版。六六年、『星への旅』で太宰治賞を受賞、本格的な作家活動に入る。七三年『戦艦武蔵』『関東大震災』で菊池寛賞、七九年『ふぉん・しいほるとの娘』で吉川英治文学賞、八四年『破獄』で読売文学賞を受賞。二〇〇六(平成一八)年没。そのほかの作品に『高熱隧道』『桜田門外ノ変』『黒船』『私の文学漂流』などがある。

「2021年 『花火 吉村昭後期短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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