生麦事件(下) (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101117430

感想・レビュー・書評

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  • 生麦事件から幕末の動きを丁寧に描いた作品。あの革命の始まりは生麦事件であるという問題意識が重要。

  • 薩英戦争に下関砲撃。雄藩と列強。勝ったものと負けたもの。けんかして仲直りして、親交を深める。思想と武器。古いものを捨て、新しいものを取り入れる。変化を受け入れるもの、拒否するもの。物語は倒幕まで続く。記録を掘り起こすような淡々とした文体の中に臨場感を見出す。西郷隆盛、大久保利通、大村益次郎、木戸孝允、高杉晋作、そして、坂本龍馬。ヒーローたちが登場するが長くは叙述されない。歴史の主役は一人ではない。愚かさあり、英断ありで時代は明治へと移り変わる。そして今へと続く。ありがちな歴史ドラマとは違う世界観を味わう。

  • ☆☆☆2016年1月☆☆☆

    薩英戦争だけでなく、長州による赤間関を通過する外国艦隊への砲撃なども扱われている。


    ★★★2019年3月★★★


    あまり知られていないが、薩英戦争後の交渉にあたった重野厚ノ丞という人物は立派だと思う。薩摩藩のメンツはつぶさず、戦争を終結させるという離れ業をやってのけた。まず、幕府に言われたからやむなく和議を結ぶという形に持って行ったこと。賠償金の支払いなど譲るべきところは譲るが、きちんと自分の主張もすること。
    戦争開始前に薩摩藩の軍艦を拿捕したことについて激しく責めるというのも、主張すべきことは言うという明快さがある。武器の斡旋を依頼することで薩摩と英国の今後の付き合いを深めるきっかけを作ったのも、交渉術として見事だ。


    幕末の歴史を大きく揺るがした生麦村。この街道沿いの小さな村を駿河に落ちていく徳川家の行列。さらに官軍の華やかな行列が過ぎてゆく。
    そのような描写でこの長い物語は終わる。

  • 生麦事件により薩摩藩とイギリスの戦争に発展し、その最中、長州藩とフランスも戦争となる。その後、さらに長州藩と英米仏蘭各国連合軍との戦争が勃発する。そして薩摩と長州は幕府とともに戦後処理に苦慮を重ねた。これだけでは話は終わらない。蛤御門の変、長州征伐、大政奉還、鳥羽伏見の戦いと幕末の一連の出来事が分かりやすく描かれていました。アメリカの南北戦争が、幕末の日本に少なからず関わっていたことを知りました。

  • 淡々とした吉村昭の作品の中でも最も淡々とした部類に入るのではなかろうか。
    そんな余分な主観の入らない淡々とした描写の中でも、何も決められず交渉にあたっては回答引き延ばしするだけで右往左往して何もできない徳川幕府と比べた時の、トップダウンでまとまってぱっぱと動く薩摩藩の「賢さ」と、下がわーわー騒いであちらこちらへ暴走する長州藩の「幼さ」が際立つ。

    薩英戦争(そういえば藩と国の戦争なんてありえるのだろうか)、死傷者はイギリスの方が多かったなんて知らなんだ。
    悪天候が味方したとは言え、圧倒的に装備が劣る中、意気盛んに周到に準備して、精一杯戦って、現実を見て無理せず和解を決め、素早く交渉をまとめ、イギリスと仲良くなって、公武合体に見切りをつけて、圧倒的な軍備を蓄えまくって、長州藩と結んで、幕府を倒す薩摩藩。単純な経済力だけではない。現実を正しく見て、判断・決断が早くて、方針に従ってまとまって柔軟に動く。なにがこうまで違ったのだろう。

  • 02.10.13

著者プロフィール

一九二七(昭和二)年、東京・日暮里生まれ。学習院大学中退。五八年、短篇集『青い骨』を自費出版。六六年、『星への旅』で太宰治賞を受賞、本格的な作家活動に入る。七三年『戦艦武蔵』『関東大震災』で菊池寛賞、七九年『ふぉん・しいほるとの娘』で吉川英治文学賞、八四年『破獄』で読売文学賞を受賞。二〇〇六(平成一八)年没。そのほかの作品に『高熱隧道』『桜田門外ノ変』『黒船』『私の文学漂流』などがある。

「2021年 『花火 吉村昭後期短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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