箱男 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101121161

感想・レビュー・書評

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  • ある日、箱をかぶることによって別の存在になれると思った男が、箱男のなり方から、のぞき窓から見る世界について独白調に書いたし小説風の物語。
    何度も見るを多用しているように、一方的に見る、注視する、覗き見ることに意識を向けていて、描写もとても細かくズームしていくが、よく読むとそこまで見えるはずもなく、音や匂い、又は妄想を実際にみえているように書いている。
    とすれば、この箱男も男が箱を被りその中で妄想しているのではないかとさえ思う。
    自分は見ているが相手はこちらを見ない、何かを挟んでみる、または意識されないような存在になる。
    文中でも箱男の変装とあるので、気にされない、又は気にしてはいけないと思わせる存在になる、それから見られているという被害妄想のようでもあって、自分から向いた矢印が実は自分に向いていた。みたいな読後感を味わう。

  • 難しいのでもう一回読む
    不思議な構成だった

  • 砂の女から、箱男を読んでみた。どちらも1日で読める内容。文章自体は読みやすいが、何を示してるのかまで深くは理解できてない。相手からは見えてないがこちらからは見えている状態は、見たらいけないものを見てしまうのではというハラハラする感情、相手よりも優位な感情になる気持ちは共感できるが、、少しフェチだ。

  • 他人からみられずに他人のことを見る。という根本的な欲求を書かれた小説であったが、心の奥底にあるものを表出させられた感覚があるものの、どのように解釈したらよいか悩んでしまう。見られずに見る立場になるには、社会生活から断絶するしかないのか、中途半端しかできないからモヤモヤするのか。しばらくしてから再読してみます。

  • 「箱男」という一方的に見続ける存在。
    私は箱男になりたいと思った。人に見られずに人を見れるなんて、そんなに愉しいことはないように思う。
    だが、「箱男」は人間という立場を放棄しているからこそ誰にも見られない訳だし、決してノーリスクではないのを鑑みると悩ましいところではある。

    著者はそんな「箱男」という生き物の特異性を利用して「作品」というものに対して面白い試みをしていた。
    本書は主人公が物語を語っているように見え、そこには作者の存在が感じられない。なんとも奇妙な読書体験だ。

  • 解釈するのになかなか難しい作品だった。というのもこの作品を現代的に理解するのに様々な要素に分解・構成させることができるからだった。まずは、「箱男」が特別な存在でなく偏在する存在として暗喩されている点について、現在の引きこもりの様相に解釈することができる。その引きこもりは存在が問題化されたころは社会のほんの一部としての存在だったのが、どんどん増殖していき、決定的にはcovid19で好むと好まざるに関わらず、それを多くの人々が強制された。そんな風に解釈して読み進めていたところ、いわゆる「ネット住人」であったりクラッカーであったり監視カメラの向こうの人々だあったりする解釈も可能であることにも気づかされる。そこに反・資本主義的な意味合いを加味されており、それらのことが30年ほど前に書かれたこの作品は現在の様々な問題点を包摂していることに驚かされると同時に何をどう解釈することができるのかの迷路に入り込んでいる自分に気づく。なかなかに解釈することが難しい作品だった。

  • 平野啓一郎『文学の森』
    【2023年10月クールの、深める文学作品】

  • 見ているのか、見られているのか
    この話がおかしいのか、自分がおかしいのか
    彼我の境界があるようで、ないようで
    箱をかぶった変態の話かと思いきや、変わってるのは理解できない自分なのかと不安になる

  • 箱は規格品 他の箱男と同じ、匿名性のため
    (箱や袋を被ってるキャラが複数いて、片方みかん箱だったらみかんがあだ名になるだろう)

    必要なのは、七徳ナイフよりカミソリの刃一枚を使い分ける工夫 日に三度は使用するもの
    貯める苦労はあるが、捨てる努力はそれ以上
    自分の持ち物に掴まっていないと、風に吹き飛ばされそうで不安

    自殺志願者が途中で目覚めるより、寝たふりだと分かっている方が安心
    いくら未練があろうと、未練は未練

    失恋の自覚、終わりから始まる、逆説的な恋

  • 見ることには愛があるが、見られることには憎悪がある。

    前半は手記形式で共感できることも多く読みやすかったが、後半は視点がころころ切り替わり結構読むのが大変だった。匿名SNSのもっと先にはこういうものが待ち受けているのかも。

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著者プロフィール

安部公房
大正十三(一九二四)年、東京に生まれる。少年期を旧満州の奉天(現在の藩陽)で過ごす。昭和二十三(一九四八)年、東京大学医学部卒業。同二十六年『壁』で芥川賞受賞。『砂の女』で読売文学賞、戯曲『友達』で谷崎賞受賞。その他の主著に『燃えつきた地図』『内なる辺境』『箱男』『方舟さくら丸』など。平成五(一九九三)年没。

「2019年 『内なる辺境/都市への回路』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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