香華 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (680ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101132020

感想・レビュー・書評

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  • これほどいらつく小説も珍しい。
    おまけに長すぎ。
    それでも秀作には違いない。
    甥を養子にしてほっとしていたのに、
    先行きを案じさせる終わり方。
    女の一代記ゆえ、朝ドラにしてほしいが、
    いまのテレビでは無理。
    橋田ならお手のものだろうが。

  • 毒親とはこういう人をいうのだなぁ。
    朋子の幼少期の心の描写が興味深かった。
    2人の幼い娘を育てている今、自身の立ち振る舞いがこうも子に影響するかと思うと恐ろしい。
    ただ、郁代のように育児の責任感を一切感じずに生きていけたらどんなに精神的にラクだろうと思う。

    毒親の祖母の世話を甲斐甲斐しくしている我が母に勧めたい1冊。

  • ただでは終わらせない最後の場面がさすがだった。
    心が薄ら寒くなる。

  • 奔放な母と、それに振り回されるしっかり者の娘の愛憎を描く。
    そりゃあ誰が見ても母は最低の母親なのだろうが、振り回される方も悪いんじゃないか、もっと毅然とすればいいのに、と思ってしまうのは私が若いせいなのか、それとも時代のせいなのか。
    確かに母は褒められた性格ではないのだけど、それでもどこか憎めない。

    人は誰しも、自分の思うままに生きたいと思うものだけど、それすなわち誰かを傷つけても構わないということになるのかもしれない。
    誰かを傷つけないように生きれば、自然自分がどこかで傷つかずにはいられない。
    母にも娘にも感情移入はせず、ただ親子の情愛の不思議さを思った。

  • 今まで身近な死を見送りつづけた朋子が「生」についての認識を新たにするところが印象的

    少し光が見えたようで救われた

  • 木下惠介監督の映画「香華〈前篇/後篇〉」を観たあとに読んだ。当然・・・・、登場人物に音羽信子やら岡田まりこが浮かぶ。
    最初に読書すべきだったかな・・・・と反省。
    それにしても、木下監督はほぼ忠実に小説を映画化している。
    だから「長く」なったのでしょうが、それでも安子は郁代には似ず美しくなかったし、色事は省かれてもいた。
    有吉の作品に登場する女性はどれも結局は「強く」生きているようだ。

  • 有吉佐和子の紀州弁が含まれている小説はいいなぁ。女性の一生を描かせたら有吉は素晴らしい。紀ノ川に通じるものもあるが、また違う趣きの作品。

    読み応えがあり、途中なかなか止められない小説だった。自分の母親にも、母親としての自分にも似ていない郁代なので共感はできなくても、とても面白かった。さすが有吉。賢くて我慢強い朋子が不憫で、どうにか結婚するなり、子供を生むなりせめてどちらかは実現して欲しかったのに、作者はそれを与えなかったのが残念でならない。自分としてはもう少し朋子が報われる内容だと良かったな。

    郁代が死んでしまった時はさすがに泣けた。「最後に帳尻を合わせたんですね」とつぶやく朋子。朋子がそう思えるなら、それは救いになって良いと思った。そして、自分の骨を半分は朋子に残して欲しいと言っていた事実もまた救われる。もしかして、遺言を実行して欲しかったからかもしれないが、それでも郁代がそう言っていたと分かるのは良かった。

    星が5にならなかったのは、どうにも最後の江崎に対する執着がしっくりこなかったのと、なんとなくここまで来たら朋子の最後も知らないと気が済まないなー、と読後思ってしまったから。

  • 親子3代の話。
    名門に生まれながら、祖母の死後、母の放蕩で身を持ち崩す娘。
    それでも母を見捨てられない、情の深さ。

  • 奔放な母と真面目な娘の40年間、というわけですが、私が娘なら許さないですね、この母。
    そしたら妹の安子が全くその態度で。ってことは私も安子・・・?てか郁代???
    朋子のように強くかっこよく生きたいと憧れますが、その朋子の胸の内にももやっとした闇があったりして。
    久々読む有吉作品の女たちはやっぱり生々しかったです!

  • 大学3年生の後期、図書館で試験勉強の合間に、手に取りました。息抜きがてら、のつもりが、読み始めると止まらず、一気に読み通しました。

    花柳界に生きた母娘の物語で、身勝手に生きる母親・郁代に対して、憎しみを覚えたり、(母親なのだからと)心の支えにしてみたり、娘の朋子のめまぐるしく変わる愛憎が描かれています。

    印象深いのが、郁代の最期と、母の死を知った朋子の言葉。
    郁代は、娘が急病で危篤であるとの知らせを受けて、狼狽えて、慌てて表に飛び出したところで、ジープに跳ねられ即死してしまいます。回復してから、母の死を知らされた朋子は、「お母さん、死んでしまったんですねえ。(無様な死に様を見せず、何の迷惑もかけずに葬られ)帳尻を綺麗に合わせて死んでしまったんですねえ。」と、静かに涙を流します。

    このシーンに、彼女たちの関係の全部が表れているように思います。

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著者プロフィール

昭和6年、和歌山市生まれ。東京女子短期大学英文科卒。昭和31年『地唄』で芥川賞候補となり、文壇デビュー。以降、『紀ノ川』『華岡青洲の妻』『恍惚の人』『複合汚染』など話題作を発表し続けた。昭和59年没。

「2023年 『挿絵の女 単行本未収録作品集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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