- Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101132181
感想・レビュー・書評
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昭和47年に発表された長編小説。
時代に先駆けて痴呆性老人の介護問題を提起した先進的な作品。舅の世話をする嫁が主人公、それをあまり手伝わない夫、協力的な息子。このような献身的な介護は今の人ではまず出来ないだろう、だが当時は家庭内で行われていたということを知ることができる。
現在は当時は無かった介護保険制度があるが、本質的には当時とさほど変わっていないように感じる。実際の介護職の大変さが良く分かるし、これで薄給なら人手不足なのもうなずける。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
時代が違っても人の苦しみはおなじ…なんですが、認知症のおじいちゃんの息子がシベリア抑留経験者、ヒロインであるその妻はすいとんの味を知っている。
近所のおばあちゃんが家族がうんざりするほど繰り返すのは関東大震災の話。
そっちのが気になりました。
だって介護の苦労話なんて、身近でいくらでも聞けるじゃない。 -
再読。
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嫁が介護の時代
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認知症が日常的に出てくる時代になったが、初めて文芸作品として描かれたのはこの作品だろうと思う。「恍惚」は1972年の流行語にもなっている。
家庭内に隠蔽されていた老人の醜態と介護の実態が、非常な抽出で社会的共感を得た。さらに、介護は、女、嫁の役割という因習打破への警鐘も鳴らした。
こおん作品により「認知症」認識と問題も変化する。隠すこと、閉ざすことという人間性否定から「受け入れる」「認め合う」へ転換していったのだ。 -
痴呆老人を抱えた家族の苦悩の物語。1970年代にもう少子高齢化社会を予測してこんな小説を書いていたというのは驚き。この頃から半世紀経とうとしているのに未だに大して変わらない現代というのはどう考えてもおかしい。去り際は潔く去りたいと感じずにはいられない。
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女性が家事を担うことが当たり前の時代、
介護を一人で背負わなければならない主人公の苦悩の日々が続きます。45年以上も前に
高齢者問題を描き出した作品です。 -
読了。舅と長男の嫁との壮絶な在宅介護の物語。老々介護、共働き夫婦で妻にのみのしかかる介護負担。自分の父親の介護に非協力的な夫。徘徊・便失禁・弄便・過去にいじめられた舅の介護をすることとなった主人公の複雑な心情等々、約半世紀前に書かれたものとは思えないほど、現在の在宅介護問題を考えるうえで有益な読書であった。
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最近読んだ中では、ナンバーワンかもしれない。すごく考えさせられるし、他の人にも勧めたい。50年近く前の作品なのに(多分舞台は60年前くらい)、テーマは全く色あせていない。老人の介護について、今も問題だけど昔はもっと大変だったんだなあ。自分や、自分の親に重ね合わせて、どう生きるか、どう死ぬか、考えるきっかけとなった。いい作品。