移植医たち (新潮文庫 た 79-9)

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  • Amazon.co.jp ・本 (544ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101132594

作品紹介・あらすじ

目の前で失われてゆく命を救いたい。臓器移植を学ぶために渡米した男女三人の医師を待ち受けていたのは、過酷きわまりない現場だった。時間との闘い、そして拒絶反応。幾つもの笑顔と出会い、数え切れぬ苦さを噛みしめ、彼らは帰国。北海道で専門外科を立ち上げる。だが、日本に移植医療を根付かせるのは想像以上に困難だった。徹底取材の上に築かれた、圧巻の人間ドラマ。解説・海堂尊。

感想・レビュー・書評

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  • 臓器移植先進国アメリカに渡り、移植医療を学ぶことを決意した三人の移植医たち。
    生活の全てを捧げるような過酷な現場で、三者三様に、救えなかった命、研究のために失われた命、多くの葛藤を乗り越えてゆく。
    やがて、日本で移植を待つ患者を救うためにアメリカでの成功を投げ打って帰国した三人の前に立ちはだかる、理不尽な厚い壁…


    目の前に臓器移植でしか命を繋げない患者がいて、二度と目覚めることのない人の健康な臓器があったら、何故使わないのか。
    健康な人の臓器にわざわざメスを入れる生体移植の方がナンセンス。
    アメリカで臓器移植の経験を十分に積んでいても、国内ではその経験が認められない。
    …などなど、ハッとさせられるような、知らなかった事が多く、全体に重く苦しい物語ながら、ぐいぐいと読まされた。
    面白かった。

    ………今の日本は、この物語の時代から、どこまで進んでいるんだろう?もし自分が、家族が、移植にしか救いの道がない状況になったとしたら…?

    うむむ、不健康で経年劣化もある内臓ですが…臓器提供カード、書こうかなあ……

  • 一気に読まされました。彼らがあれほどの過酷な生き方を選んでいるのは使命感なのだろうか?カネや名誉などの欲では決して出来ないことだと思う。圧倒されました。

  • 近年、病院に通う事が多かった身としては深い感慨を覚える。
    命、と言うには大き過ぎるかも知れないが目に見える見えないは別として人は確かに受け継がれてれいくものなのだと感じる。
    移植と言う目に見えるわかりやすい形で生命のリレーと日々闘っている人達のそれぞれの物語がピッツバーグや北海道の大自然の中で繰り広げられる。
    帰国の日、たまたま出会した恩師から貰った「何処にいても、ベストを尽くしなさい」と言う言葉は普遍だろう。人は与えられた場所でベストを尽くす事しか出来ないしそれに集中すべきだと。

    佐竹山先生は鈴木亮平さん、古賀先生は真剣佑さんで。凌子先生は竹内結子さんか蒼井優さんあたりで。映画化希望します。

  • 長編。前半はピッツバーグでの修行時代をノンフィクション的に綴っていて、あまりワクワク感はなかった。後半。日本に戻って人間ドラマが展開され、俄然前のめりになった。移植に対する日本の古い考え方、責任逃れ、マスコミの陰湿さ。その環境で、可能性をひたする追求する強さをひしひしと感じた。2020.6.27

  • 脳死の概念が浸透せず、臓器移植が広がらなかった日本。そこに移植医療を持ち込む医師たちの実話をもとにしたフィクション。どんな逆境に立たされても困難に立ち向かい続ける彼らの姿勢に胸を打たれる。彼らのような人たちがいるから今日の日本の医療がある。

  • 臓器移植に挑む医師たちの物語。移植外科医として有名なDr.セイゲルの元に集まった日本人医師たちがアメリカで臓器移植について研鑽し移植治療がまだ定着していない日本において移植を進めていく。アメリカでの佐竹山や古賀、加藤らの働き方は自分じゃ到底できないと思った。でもそこまでしないと得られない技術なんだろうな。
    古賀の彼女が阪神淡路大震災で肝破裂しアメリカで治療しようとヘリに乗せるも間に合わないシーンはそれまでの2人の関係性もあってグッときた。

  • ずっと読みたいと思っていて、いつも利用する書店とは別の書店で発見して購入。通勤・退勤時間に夢中になって読んだ。
    医師では無い人がここまで、医師の心情はもとより手術の手技の仔細、日本やアメリカの医療体制事情、移植の歴史や日本の法律・世論・悪しき慣習に至るまで緻密に描き切ることができるということに驚いた。
    そしてやはり著者の作品の説得力に心を打たれた。「余命」を初めて読んだときと同じような感情が湧いてきた。

  • 読み終わって何年経っても忘れられない1冊。
    日本で移植され始めたのは最近。
    移植が始まるまでどれだけ大変だったかすごくよく分かる。

  • 移植黎明期から本邦での移植医療へのつながりが非常に興味深かった。また、脳死ドナーが少なく生体ドナーに頼っている本邦の移植医療に対して、Dr.セイゲルの「亡くなったものの臓器が使えるのに、なぜ生きたものの肉体にわざわざ苦痛とリスクを与えるのか。」というセリフには考えさせられた。

  • 分厚い本だが楽しめた。移植という行為が意外と試行錯誤の繰り返しと知った。

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著者プロフィール

1962年北海道生まれ。北海道大学農学部卒。’90年『結婚しないかもしれない症候群』で鮮烈なデビュー後、’91年に処女小説『アクアリウムの鯨』を刊行する。自然、旅、性などの題材をモチーフに数々の長編・短編小説を執筆。紀行、エッセイ、訳書なども手掛ける。2003年『海猫』で第十回島清恋愛文学賞を受賞。

「2021年 『半逆光』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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