- Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101133041
感想・レビュー・書評
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明治維新期の渋沢栄一の活躍を、同時代の官僚や商人の活躍と絡めて描き出した作品。
個人の裁量でによってマネジメントされる組織ではなく、多くのものが知恵を出し合って調整する組織によって殖産興業を計る、これが株式会社を多くの産業で設立しておきながら渋沢が財閥形成を行わなかった理由であった。
時折感情に駆られて行動を起こしそうな輩が出てくると、常に彰義隊の失敗を思い出して渋沢が冷静に振る舞うようその者を諭すシーンが印象に残っている。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
[03][120513]<yi
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渋沢氏は自ら運を呼び込んできたのだが、そこには幾多の苦難を経験しそれを乗り越えていくだけの胆力があった。この胆力の大きさが事を成すにあたって、とても大事なことであると感じた。
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渋沢栄一の生涯を描いた歴史小説。下段は明治新政府での官僚時代から実業家として一時代を築くまで。
財閥の盛衰も興味深い。三井と長州閥の関係、大隈と三菱、また小野組等の没落する財閥。このあたりは金と政治の関係をよく理解しておかないと歴史が理解できない。また、それを理解すると尚更、渋沢の振る舞いが日本の近代資本主義の礎構築に多大なる影響を与えていることもよくわかる。
官吏時代の大久保利通との確執も興味深い。
大久保は殖産興業を進め、幕臣からも優秀な人材を登用していたのだが、渋沢栄一については長州閥との関係が疎んじられたのか。
後半の三菱岩崎との確執など、もう少し紙面を割いてもいいのではないかと思った。
(以下引用)
・木戸孝允が江端のことについて尋ねるために渋沢を訪れた。
たっぷり二時間は話をしたであろう。その中、栄一は、江端のことなどは口実で、実は木戸は栄一に会うためにやってきたのだと気づいた。
適材を適所に配するのが、上に立つ者のつとめ。それには、評判の人材を、自分の目でたしかめておこうとする配慮からであろう。栄一は、そこにも「一柱の神」の姿を見た。
・岩倉は、大久保を木戸孝允と比較していった。
「木戸は先見あるも、すねて不平を鳴らし、表面に議論せず、陰に局外の者へ何かと不平話をなすは木戸の弊なり。大久保は才なし、識なし、ただ確固と動かぬが長所なり」
・徳富蘇峰の大久保評。
「最善を得ざれば次善、次善を得ざれば、其の次善と、出来る程度において、出来得ることを為し」と。最も現実的で、最もおそるべき神である。敵に廻せば、いちばんこわく、いやな相手といえる。
・(台湾出兵に際して)大久保の「忍人」ぶりが、清国首脳をも圧倒したのだ。残忍無類というが、目的のためには死をおそれぬ気持、そして、おそろしいほどの集中と持続のたまものであった。
・政府内でも、参議外務卿の井上と、農商務大輔の品川弥二郎が、とくに反大隈・反三菱の強硬派であった。
「三菱は、征台の役や西南の役で国家に奉公していたというが、それ以上に私腹を肥やしている。これは、国家事業を個人に独占させておくからで、このまま海上権を三菱の手に委ねておいてはならぬ」と公言。 -
八百万の神々が知恵を持ち寄れば。
渋沢栄一のその謙虚さと行動力に感心させられる。若いころの栄一がどのような経験をしてそこに至ったかを知るのも面白い。渋沢栄一のような社会になれば、万人がしっかり働いて生きていける。 -
日本を代表する実業家 渋沢栄一
今まで名前は知っているけども‥といった具合でありました。
最近の王子製紙・オリンパス騒動をきっかけに読み始めましたが、企業・経営者の心構え・姿勢を改めて考えさせられる作品でした。 -
渋沢栄一の功績の概略を知るには一番!!
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渋沢栄一の人間ができあがっていくまでの話
つじ推薦
農夫出身てのがまず特殊
上巻は、農夫でもこんな気概と教養持った人らがおった江戸時代の教育レベルてすごいなー、と思った
下巻では、明治政府の要人の個性の強さとその混沌さが伝わってきた。
八百万の神、って連発してて、日本ならではの考えだし、神様も大変じゃなあ、と感じました。
知らないことが多すぎる。
渋沢栄一は実業家で華々しい活躍をおさめながら、三井三菱はじめ財閥を作らなかったことで際立つ。
彼にインタビューして記事にしたいなあ。 -
政府に出仕し、調整役としての才能を発揮し、ついに日本初の合本組織の立ち上げとつづく。岩崎弥太郎率いる三菱との海運業の競争など。
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明治が夜明けを迎える時代に渋沢栄一が民間側から起業と国家の形成に挑む人生を綴った書。
主な登場人物:渋沢栄一、徳川慶喜、井上薫、大久保利通、三野村利佐衞門、西郷隆盛、他。