生きている源八 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101134543

感想・レビュー・書評

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  • 山本周五郎氏の初期の短編集12篇です。表題作の『生きている源八』をはじめ『虎を恐るる武士』『豪傑ばやり』『足軽槍一筋』などは、武道家として慎ましく謙虚に日々を過ごすなか、ここぞという場面で真価を発揮し忠義の証しを立てるという、読む者を爽快な気分にさせる時代小説です。身分の上下をこえた人情味ゆたかな風情と情愛あふれる物語の展開に、拍手喝采を贈りたくなる逸品揃いです。

  • 1944年、1億玉砕が叫ばれてた太平洋戦争末期に書かれた小説。

    そういう歴史背景を感じて読むと、より胸にくるものがある。

    印象に残ったのは、味方を欺くシーン。主人公の源八郎も織田信長も。

    賢く、真っ直ぐに。

    そんな事を学びました。

  • 短編集。山本周五郎とか池波正太郎はいちいちレビュー書くのも無粋な気もしますよね。読めば面白い、それだけでいいのかも。

  • 秀作多し。

    新女峡祝言
    立春なみだ橋
    豪傑ばやり
    いきている源八
    虎を怖るる武士

    特に後半はどれも良かった。

  • あまりおもしろくない。
    あ、でも藤次郎の恋はすごく胸がすっきりする話なので好きかも知れない

  • 再読了。

  • 読後感がさわやかな短編集。「生きている源八」戦争の形勢が不利になり、統制が厳しかったと思しき時の微妙な作品。12.10.27

  • 久々に読んだがやはりいい。それぞれの話が心に沁みる。木村久邇典氏の解説にある、「山本周五郎は、名を惜しむよりもいのちをたっとんだ文学者であった。」この一語が全てを表している。武士道だとか現代に馴染みのない思想よりこの命を尊ぶという人間として不変の道理が通っているから、世代問わず彼の文学に皆共感し感動するのだ。私もその一人です。一生読み続ける。

    【熊の十郎左】普段は獺眠りと罵られても気にしない十郎左だが、城のために謀反に荷担していた義父を「乱心で義父を切った」ことにして欲しいと言って死ぬ。
    【西本地鮪介】農民の鮪介は針を二つに割ろうと独学で修行するうち武士との勝負にも勝って家禄を与えられる。しかし針を割る修行は進まず、ある日切り捨て御免になろうとしている商人を無償の思いで救ったことで開眼し、農業に再び専念する。
    【足軽槍一筋】足軽のくせに槍修行などして、との陰口を聞いて勝負を挑む平馬。しかし対したのは幼馴染みの孫次郎だった。一本とったが追い出され、妹と雇ってくれる地を求め流浪する。が、最後腕を磨いた孫やんと勝負して引き分け元に戻され師範代になる。
    【藤次郎の恋】道場の皆憧れる小浪に呼び出された日、師範は翌日腕で小浪の婿を決定すると宣言。心躍らせる藤次郎に小浪は幼馴染みで腕は立つが酒を覚えてしまった数馬に勝って欲しいと言った。辛く勝ちは譲るも、数馬は半年後また酒で駄目になる。自分の判断は間違っていたかと悔いる藤次郎だが、ある夜数馬が瀕死で藤次郎の元へ来る。師範の敵が討てなかったという。藤次郎は数馬の代わりに彼の敵を討ち、数馬の手柄とする。
    【聞き違い】幼馴染みの金右衛門に腕は立つが乱暴者の陣兵衛の助太刀を頼まれるがそこに別人もいたので断る。わかっていたが、金右衛門は返り討ちにあう。誰もが平次郎が敵討ちをすると思っていたが平次郎は徹頭徹尾それをさけ、光圀にあまり乱暴者だから出て行く旨の伝言を聞き違えたと言い張って陣兵衛を討つ。
    【新女峡祝言】治水工事を邪魔する叔父の娘の絹絵に想いを寄せていた伊兵衛だが、学友の市ノ丞が彼女を嫁に貰いたいと言う。絹絵に心を聞かれるが貴女が決めることだと伊兵衛は譲る。しかし、絹絵が囲炉裏に落ちて顔半分の火傷を負ったとなり市ノ丞は逃げ出す。しかし伊兵衛は絹絵を嫁に貰いたいと叔父に言う。叔父が感動するところで絹絵が包帯を取り、彼女の狂言だったことが明かされる。
    【立春なみだ橋】賭博に嵌ってしまった新吉は仁右衛門にしょっ引かれるところを「おっかさん」と無我夢中で叫んだことで女手一つで彼のために生きた亡き母のことを諭され、見逃す代わりに同じように息子を探して目を失った老婆を看取れと言われ、そのように過ごすことで改心する。しかし、賭場の連中は老婆に本当のことをばらすと彼を脅し、来るように言う。悩んだ末そこに行くと、連中の一人が他の連中を片付けていた。彼こそがその老婆の息子であった。
    【豪傑ばやり】豪傑を家禄でつるとかどうなの? 本当ははい俺でしたー
    【生きている源八】※注意点※彼が作中話してる勝つことに意味がある云々は戦時中の検閲のためのまやかしなので、彼が生きて帰ることに注目して読むべし。
    【虎を怖るる武士】虎は怖いと臆面もなく言う吉之介は雅典に気に入られ今でも元服前の恰好でいる。しかし独眼竜から家宝の笛を取り返し、元服を果たし、幼馴染みの家禄取り上げを帳消しにし、両思いの子を嫁に貰った。
    【驢馬馴らし】ボヴァリィ夫人こと青べかとの戦記。
    【〔戯曲〕破られた画像】愛は口にしないと伝わらないのよ!

  • 非常によかった。

    長編小説が好きで あまり短編集は読まないのですが、これは読んでよかったです。短編という短いかたちだからこそ、ことばのひとつひとつが光ってる。そしてストーリー展開の見事さを感じました。これに入ってるどの短編作品もよかった。心にゆっくり染み込んでくと思ったら、読後の清々しさと言うのか、清廉な衝撃にハッとさせられる。特に好きだったのは「籐次郎の恋」。

    武家モノ苦手な人にも 最初はガマンしてもらいつつ、騙されたと思って読んで欲しい(・ω・)

  • 2010.11.8(月)。

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著者プロフィール

山本周五郎(やまもと しゅうごろう)=1903年山梨県生まれ。1967年没。本名、清水三十六(しみず さとむ)。小学校卒業後、質店の山本周五郎商店に徒弟として住み込む(筆名はこれに由来)。雑誌記者などを経て、1926年「須磨寺付近」で文壇に登場。庶民の立場から武士の苦衷や市井人の哀感を描いた時代小説、歴史小説などを発表。1943年、『日本婦道記』が上半期の直木賞に推されたが受賞を固辞。『樅ノ木は残った』『赤ひげ診療譚』『青べか物語』など、とくに晩年多くの傑作を発表し、高く評価された。 

解説:新船海三郎(しんふね かいさぶろう)=1947年生まれ。日本民主主義文学会会員、日本文芸家協会会員。著書に『歴史の道程と文学』『史観と文学のあいだ』『作家への飛躍』『藤澤周平 志たかく情あつく』『不同調の音色 安岡章太郎私論』『戦争は殺すことから始まった 日本文学と加害の諸相』『日々是好読』、インタビュー集『わが文学の原風景』など。

「2023年 『山本周五郎 ユーモア小説集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

山本周五郎の作品

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