土を喰う日々: わが精進十二ヵ月 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101141152

感想・レビュー・書評

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  • 言葉遣いが独特で、すっと筋の通ったエッセイ。
    田舎暮らしへの憧れが募る。
    映画の内容とはまったく違うけれど、
    エッセンスはこの本からしっかりとられている。

  • はじめて 水上勉の本を読んだ。
    食に対する ポリシーと言うか 信念が実に明確に打ち出されていた。
    旬が 美味しいのである。
    旬という言葉がある 日本の文化が 素晴らしいのだ。
    それに対する 生でない 保存する という文化が 対置されている。

    水上勉の生い立ちというか素性が 明らかにされて
    大工である父親の 自然な食に対する 気持ち。
    そして,9歳にして 寺に出され 精進料理につきあうことで
    料理に対する 気構えが 実にしっかりしている。
    食べようとするものに、無駄なものは 何もないのである。

    ホウレンソウを 丸ごと食べるには それなりの処しかたがあるのだ。
    根っこの持つ意味は 食べなきゃわからない。
    いいねぇ。
    大根にしても,ジャガイモにしても、皮とは剥くためにあるのだろうか。
    栗の渋皮にしても。
    クワイの皮さえも,剥くことで 美味しいと言えるのだろうか。
    捨てることは,何かを捨てていないのだろうか。

    水上勉の料理のすごさは 自分が楽しんでいることだ。
    そして,自分の味への郷愁があることだ。
    タケノコに対する想いが 何ともせつない。

    目先のものを食べることで 精一杯だった 自分を振り返ってみた。
    食べるのは 生きている限り 続けるものだとしたら
    来年食べるものを 今作ってもいいだろう。
    そう思える なにかが そこにはあった。

    自分が生まれたときに つけられた 梅干しを
    60歳の時になって 食べることができたとしたら
    なんてすごいことなんだろう。
    そこには、不変がある。熟成と豊饒がある。

    おばあちゃんの作ってくれた料理が未だに 思い出にあるのはなぜだろうか。
    こんにゃくのトンガラシ煮。フナのミソ煮。
    不思議な味わい。美味しいとはいえなかったが、印象に残った。
    でも、卵焼きやカレーやトンカツがおいしかった。

    母親が来た時に フキの料理が思い出された。
    なんでフキなんだろう。くすんで黒くて、見た目にぱっとしない。
    それが,なぜ母親と結びついたのだろうか。
    そして、突然 チーズの味となる。

    オヤジは チキンラーメンから始まり,寿がきのラーメンに発展するのも
    よくわからない。そして,突然に ヒレ肉トンカツに 変わるのだ。
    味が 飛躍し 料理が飛躍する。
    そして,豚足とホルモン焼きに たどり着き 土手鍋になる。
    味は ますます濃厚になっていくのだ。

    今やろうとしていたことが,クロスする。
    豆腐が 面白そうだ。
    ジーマミ豆腐を作ってみたくなった。

    ゴマの皮をむく。
    『すり鉢へ 適量のゴマを入れ、それに水をわずかにいれて、手で混ぜ,鉢の目にこすりつける。
    そして、水を加えると 皮は水面にぷかぷか浮いてくる。それを静かに捨ててしまえばいい。』

    ケチ という意味が
    本当に 美味しいと理解してくれる ヒトが いるかどうかなんですね。 

  • これも長いあいだ積読でした。ようやくこれを読んで沁みる境地に自分がなってきたのかなあと。自分の今年のテーマのひとつが料理ということもあり、今読むべき本だったのだと思います。くわいや山芋の焼いたの、味噌、豆腐、梅干し、筍、木の実にきのこ。どれもおいしそうでたまりません。素材の味を楽しむにはやはり旬に食べるのが一番。スーパーマーケットの野菜は味気ないものなあ。

  • 京都で小僧として精進料理を学んだことをいかしながら
    軽井沢で暮らした著者の12ヶ月。

    畑と相談しながら丁寧に食事をしつらえる姿に親しみを感じます。
    仏教の教えも引きながら、
    食事を作ることの大切さを教えてくれる本です。

  • 料理を作りながら人や暦に想いを馳せ、頂く。食べることをないがしろにし、生きることに執着しなくなった世代に、この滋味が解せようか。否今だからこそ解せる人が少なからずやいるのではと思う。手本にして毎日台所に立ちたい

  • 【日本縦断参考本】

    著者が京都の禅寺で少年時代に教えられた精進料理の体験を元にして、軽井沢の仕事場で畑をつくり 目の前であるもので料理する様子を 一月ごとに記したエッセイ。
    読み終えるのが 惜しいほど 面白い本でした。
    筍だけで あれだけのページを割いて書く著者も著者だけど もっと読みたくなる私も私・・(笑)

    精進料理の「典座教訓」を読み解いてくれているのも 面白く 
    読んでいくうちに お腹がすいてきて お料理を作りたくなり、畑を耕してみたくなりました。

  • 幼少時代禅寺で過ごした筆者が、その際の経験を生かし、精進した料理を作るエピソードを月ごとに紹介。
    タケノコやタラの芽、ゼンマイ、クワイやクリ、梅干し…。エピソードが記憶にしっかり残るのは、やはり水上勉氏の軽妙な筆致によるものか。
    また、ところどころに挟まる筆者の調理人としての姿がダンディ。これだけの旬の食材を食べられるかと云えば難しい。でもまた読みなおそう、と思えるだけの本である。

  • 「芋の皮一ときれだって無駄にすることは、仏弟子として落第なのだ。」(p.15,ll.10-11)
    軽井沢の山荘に暮らす作者が、小僧時代の典座の経験から身に付いた料理法を、十二か月にわたって道元禅師の言葉を引用しながら紹介していく。まさに「土を喰う」生活。
    今私が暮らすロシアも、人々はダーチャ(菜園付き別荘)を持ち、野菜を育てて暮らしている。それもまさに「土を喰う」生活だろう。
    根なし草の自分には到底かなわない生活。ゆえに、この本は自分にとってバイブル的一冊なのである。
    これを友人に勧めたら、「おまえは土でも食っとけ。」とあっさり一蹴されたけども。

  • 第六章、梅干を漬けるお話がとっても深くて味わい深い。素晴らしい本。

  • 水上勉さんのような生き方をしたいと思える本です。スローフード、スローライフという言葉が流行る前から実践されていた水上勉さんの最高傑作だと思います。

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著者プロフィール

少年時代に禅寺の侍者を体験する。立命館大学文学部中退。戦後、宇野浩二に師事する。1959(昭和34)年『霧と影』を発表し本格的な作家活動に入る。1960年『海の牙』で探偵作家クラブ賞、1961年『雁の寺』で直木賞、1971年『宇野浩二伝』で菊池寛賞、1975年『一休』で谷崎賞、1977年『寺泊』で川端賞、1983年『良寛』で毎日芸術賞を受賞する。『金閣炎上』『ブンナよ、木からおりてこい』『土を喰う日々』など著書多数。2004(平成16)年9月永眠。

「2022年 『精進百撰』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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