- Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101156255
感想・レビュー・書評
-
人間というものの不思議さ。そして、人生一寸先は闇、ちょっとしたことでどうなるか分からないという、人生の不思議さ。
この、2つの不思議さを、池波は冷徹かつ現実主義的な、悲観的目線で描く。池波の、人間や人生に対する「無常観」のようなものが現れている。
また、ときにはその人の人生を貫き通すひとつの信念であり、ときには訳の分からない動きをし、別のときには様々な顔を持つ―そのような人間の心の不思議を描く。
されど、読み手を考え込ませたり、読み終えてネガティブな気持ちにさせないのは、そのユーモラスな、人間の描き方、また、語り口で、面白く、小説を完成させているからであろう。
池波の描く、不思議な、しかし、人間や人生の本質をついているからであろう、全く別世界の話とも思われない、面白い小説でした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
“この世に生きる人間と環境には、その名称一つではかりきれぬものがあり、どんなところにも善と悪があり、白と黒、やわらかいのと固いのと、向上と堕落があるのだ。”
「あほうがらす」の中のこの部分がいい。特におもしろかったのは「火消しの殿」「つるつる」「男色武士道」だが、どの話も人生の不思議さ・一筋縄ではいかない様子を描いていて、とても味わい深い内容だった。 -
<目次>
略
<内容>
すべて時代物。短編ながら、主題作の「あほがらす」はじめ、実在の浅野内匠頭や大石主税、荒木又右衛門などを扱っても、ちょっと違う視点から切っていく。人生うまくいくものではないけど、捨てたものでもない、と感じられる珠玉の作品群。 -
池波正太郎の書いた本を初めて読んだ。
11篇からなる時代小説で殿様、家来、家臣、そこから繋がる人間関係を読み込むほど、おもしろい話になっている。地位、お金、愛憎、欲、侮辱、と書いて何だ500年後にもあるものばかりだと、苦笑する。
そして、貫く思い、覚悟、看過、変貌それらが混ざり合ってこの小説を愛おしくさせている。
全ての人間に生きる意味がある。 -
「著者の多岐多様な小説世界の枠を精選した」11編とあるが、なるほど納得。
-
あほうがらす。
現代で言えば、ポン引き。フリーのスカウト兼別れさせ屋の女衒士。
差が疎まれる生業ではあるが、その内容はピンキリで、職業倫理や矜持を持ちその道を極めれば、秀でた芸と呼べる。
11編の短編集。
古今東西、人間という生きものの不思議さを漂わせる一冊でした。
運というものの捉え方次第で、見え方は様々ですね。 -
岡本綺堂『半七捕物帳』を読み終えるのが惜しくて、巨匠・池波正太郎の作品を間に挟もうと思った。岡本作品が江戸弁、江戸の街並を彷彿させる筆致だとすれば、池波作品は人情を描く。浅野内匠頭、鳥居強右衛門、荒木又右衛門といった有名どころを配するかと思えば、「あほうがらす」のように市井の……それも裏社会の商いをも描く。そして男色、今で言うBLも、江戸時代の武士の常識として書いているのが著者の作品としては珍しかった。
-
男色やポン引きと言った、光の当たらない人間らしさに焦点があたる作品が多く収録されている。清濁併せ呑む価値観と、武士道のような厳しさのコントラストが人間の生の楽しさを描いているようだった。
-
BSジャパンで見た「狐と馬」が面白かったので、読んでみた。
どの短編も趣があって面白い。 -
『池波正太郎時代劇 光と影』
BSジャパン/毎月第1、2火曜放送
2017年10月3日から