むかしの味 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 827
感想 : 55
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101156507

作品紹介・あらすじ

「〔たいめいけん〕の洋食には、よき時代の東京の、ゆたかな生活が温存されている。物質のゆたかさではない。そのころの東京に住んでいた人びとの、心のゆたかさのことである」人生の折々に出会った"懐かしい味"を今も残している店を改めて全国に訪ね、初めて食べた時の強烈な思い出を語る。そして、変貌いちじるしい現代に昔の味を伝え続けている店の人たちの細かな心づかいをたたえる。

感想・レビュー・書評

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  • 懐かしい匂いのする食べ物を紹介している。飾らない、美味しい料理を食べているなという印象。下手に食レポなどせずに、自分のエピソードとお店を紹介しているので、偉ぶっていないところが好感を持てた

  • 本棚の奥から出てきた。
    池波氏が「うまい!」と思って食べてきた味と店の思い出が書かれているが「グルメ本ではない」という但し書きがつく。
    舌が覚えているのは、思い出と、人の縁。
    この作品の最初の刊行は、昭和59年(1984年)で、およそ40年前。今から見たら、すでにむかし・・・かも。
    その「むかし」に振り返って、まだ続いている店を紹介していたものだから、現在から振り返れば、むかしむかし、である。
    スマホのマップで見たところ、「たいめいけん」や「イノダコーヒー」などのごく有名な店を除いては、すでに残っていないようだ。
    跡地がコンビニやビジネスホテルになっているのを見て、味気ない思いと共に時の流れを感じる。
    「持続の美徳」と言って、変わらぬ味を愛し、賞賛した池波氏であったが、残念ながら変わらないものなどない。
    私たちには行くことの出来ない、戦前の東京。戦後の復興。
    そんなものが、読むほどに懐かしく感じられ、目の前によみがえる気がするのだ。
    「むかしの味」の向こうに池波氏が見ているものは、先に亡くなった年長者たちの思い出であり、戦前戦後と経て音信不通になってしまった友たちとの懐かしい日々だった。
    見たことのない、憧れの「昔の東京」に行くための重要なアイテムとして、また本棚の奥に大切に保管しておこうと思う。

  • いい匂いのしてくる本でした。まつや、竹むら、煉瓦亭はその昔、剣客商売にどハマりした若い時に池波正太郎を気取って食べてきました。資生堂パーラー、行ってみたいなぁ。たいめいけんも。憧れるのは自分だけの、こうしたお店を見つけること。おいしいもの、良き思い出の逸話の合間にちょっとほろ苦いエピソードを交えてただのおいしいだけ、昔は良かった的な話だけではないのは、さすが池波正太郎でした。

  • 美味しそうな食事の写真から始まる。
    食べてみたいなーと思いながら先に進む。
    読み始めたら、わくわくが止まらない。
    どんどん読み進む。
    今年は池波正太郎さん、生誕100周年で、池波正太郎さんゆかりの地を巡るバスツアーがあるらしい。池波正太郎さんが愛した鍋料理を昼食に頂けるらしい。行ってみたいものだ。
    とてもおいしいということが、文章からわかる。食べ物からその時代の様子も伝わってくる。やんちゃな様子が楽しそう。親友の井上留吉さんの消息が気になるなあ。池波さんと天国で再会されているといいなあー。

  • 技術の進歩により、どんなに食材の質が良くなっても、調理技術が向上しても、思い出の味には勝てないものかもしれない。
    私のような、グルメでも何でもない庶民にとっての「むかしの味」は、何気なく食べていた近所の中華そば、海の家のカレー、駄菓子屋のラクトアイス…。なんてことない食べ物だって、思い出による補正が一段と輝かしいものにしてくれる。
    今の子供達は、一体どんな味を「むかしの味」として憶えていくのだろう。

  • まず巻頭の写真がとてもいい
    どれもこれも美味しそう
    昭和感たっぷりで素敵
    池波先生は絵もお上手なんですね
    ポークカツレツ食べたいなぁー

  • 昭和の時代飲の食べ歩きエッセイ。
    懐かしくもあり無くなった店も多い。この先の日本でどんな店を探そうかと考えた。

  • 空腹の時、思い出の味、おふくろの味、美味しいですね。それは子供時分の家庭の味であり、好きな人と一緒に食べた懐かしい味であり、自分が心を込めて作った料理の想い出かもしれません。私にとっては、高級料理、老舗の料理の美味しさとはまた違った感じがしますw。池波正太郎 著「むかしの味」、1988.11発行。小説新潮に連載したものだそうです。老舗の料理がたくさん紹介されています。老舗は、昔の味を大切に育てていらっしゃるんだと思います!

  • 述懐しているのは味だけではなく、その店が持ち合わせ、守り続けてきた店構え。矜持を持った、料理人、店主、店員、客、人も含めた店構え。
    味以上に語りたいのは、そちらなのかも。

  • 著者が気に入っている飲食店とそれにまつわるエピソードを紹介したエッセイ。

    東京近辺をメインに、京都や横浜、長野のお店が紹介されている。
    著者自ら描いた挿し絵も味がある。

    本エッセイを書かれた昭和末期に、既に老舗と呼ばれていたお店が、今日まで残っているのは驚き。
    読んでてお腹がすく。

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著者プロフィール

大正十二(一九二三)年一月二十五日、東京市浅草区聖天町生まれ。昭和十(一九三五)年、下谷区西町小学校卒業、株式仲買店勤務。昭和十四年より三年ほど証券取引所にあった剣道場へ通い、初段を得る。旋盤機械工を経て昭和十九年、横須賀海兵団入団。敗戦の翌年、東京都職員として下谷区役所の衛生課に勤務。昭和二十三年、長谷川伸門下に入る。昭和二十五年、片岡豊子と結婚。昭和二十六年、戯曲「鈍牛」を発表し上演。新国劇の脚本と演出を担当する一方、小説も執筆。昭和三十年、転勤先の目黒税務事務所で都庁職員を辞し、作家業に専念。昭和三十五年、『錯乱』で直木三十五賞受賞。『鬼平犯科帳』『剣客商売』『仕掛人・藤枝梅安』の三大シリーズや『真田太平記』等、数々の小説で人気を博す一方、食や映画、旅に関する著作物も多く上梓した。受賞歴はほか吉川英治文学賞、大谷竹次郎賞、菊池寛賞等。平成二(一九九〇)年五月三日、入院していた東京都千代田区神田和泉町の三井記念病院で死去。小社では同じく単行本未収録のエッセイ集『一升桝の度量』(二〇一一)と初期戯曲集『銀座並木通り』(二〇一三)を刊行している。

「2022年 『人生の滋味 池波正太郎かく語りき』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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