江戸切絵図散歩 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101156682

作品紹介・あらすじ

「江戸切絵図」は現代の東京区分地図にあたる。切絵図を片手に散歩に出れば、いたるところで江戸の名残りに出会い、剣客親子や火付盗賊改方の活躍の場所を彷彿とすることができる。浅草生まれの著者が、失われゆくものを惜しみつつ、子供の頃に目に焼き付けた情景を練達の文と得意の絵筆で再現して、江戸と東京の橋渡しをしてくれるユニークな本。切絵図や浮世絵、写真など多数収録。

感想・レビュー・書評

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  • 日本の良き風景がどんどん壊されていく事に嘆いている池波さんの気持ちが随所に伝わります。
    亡くなる直前に書かれたそうで、ご本人がとてもやりたかった仕事だったんだとか。
    古地図広げてご自身の子供時代に思いを馳せながら綴るのは楽しかっただろうなぁとか、変わりゆく東京の姿に対する無念や警鐘と言ったものを残したかったのだろうなぁ。。など池波さんの思いを感じながら読ませていただきました。
    文庫なので古地図の文字が小さ過ぎて拡大鏡でもないと一つ一つチェックするのが厳しかったのですが、江戸からの歴史を感じながらこれからも東京散策をしていきたいと思います。

  • 東京が江戸だった頃を江戸時代の区分版画図を見ながら、失われた景観やものに思いめぐらす、東京が昭和だった頃の作家散歩録。そう、その昭和だったころから平成30年も過ぎて令和にいたり、ますます変わってしまう東京を感じながら読んだ。池波氏が江戸なら、わたしは昭和の東京を懐かしむ。

    個人経営の商店街が住宅地になり、ちょっと大きい家は更地になり分割されて小さな三階建て、大きい通り沿いには10階以上の小マンションか、物凄い階数のタワーマンションが出来上がっていく街の変化を見ていると、昔どんな景色だったか思い出せなくなる。

    そうは言っても自分を振り返れば、高齢者となって自立した生活をするには都会の方がしやすいなどと、それぞれの事情があって集まってしまうのだから、住居も増えるのだろう。

    嘆けばいいというものでもない。結局、池波正太郎氏の『剣客商売』『鬼平犯科帳』などの創作種本はこれだったのだと納得し、そういえば『仕掛人・藤枝梅安』はまだ読んでいなかったなと。

  • 古い江戸の地図と現代の東京を比較しながらお散歩気分で読むことができました。東京に住んだことがないので羨ましいな。ただ新旧の変化を並べるだけではなく池波氏自身の思い出と趣味の油絵も載っていて面白い。歌舞伎の舞台になった場所を読むのが面白かった。

  • 池波正太郎
    江戸切絵図 散歩

    江戸切絵図を眺めながらの東京散歩日記。

    江戸切絵図は歴史情緒を感じる平面図という感じ。

    現存する川や寺社を見つけた驚き、町割の意図 や 町の名前の由来を想像する楽しさ、とても面白い。



    名言「川のない都市は、都市ではない」
    *大川(隅田川)、不忍池、京橋川から江戸湾、築地界隈の堀川など 川から地図を見ると都市の在り方が見えて来る
    *深川は イタリアのベネチアほどの水郷


    井上安治 「鎧橋遠景」「御城二十橋ノ景」を 掲載していた。凄くいい。画集欲しい。



    名言「地形は残っても、風俗は怒涛のように変わる。風俗が変われば人の心が変わっていく。いや、人の心が変わるからこそ、風俗が変わるのだろうか」



    京橋南築地鉄炮洲絵図
    *京橋川から江戸湾に入る手前に、湊稲荷の社がある
    *佃島〜昔の漁師たちが使った船溜まりがある
    *築地界隈の堀川〜三十間堀、京橋川、築地川、霊巌橋川〜大半は埋め立てられた
    *築地=鉄砲洲〜幕府が人も住まぬ砂洲で大砲の演習をさせた



    八町堀霊岸日本橋南之絵図
    *日本橋の南詰から京橋、銀座への道は江戸最古の大道。徳川家康はこの大道を中心に町割をした
    *大通りの両側は町名がびつしり〜繁栄の現れ


    飯田町駿河台小川町絵図
    *神田川〜大名と旗本屋敷で埋め尽くされている武家の町
    *江戸城(皇居)の内濠〜神田橋、一ツ橋、清水、田安の名城門
    *江戸城の外濠としての神田川
    *江戸から東京にかけての歴史が建物と環境において残されているのは皇居だけ


  • 古地図を携えて思い出とともに綴る池波氏にエッセイ集。

    池波正太郎氏の回顧録的趣が強いが彼の味わい深い文章とともに古地図から江戸時代当時の活況や情緒が炙り出されてくるようである。江戸切絵図と池波氏の青年期、そして現代(1993年)という対比でその変遷が語られるが、そこからさらに時を重ね(2018年)、雑司ヶ谷以外は再開発が進みその様をさらに一変させているが、いま池波氏がみたらその街々に何を思うであろうか。「日本橋のうえに高速道路を架けるような感性」という痛快な指摘はしているが、古き良き面影と近代的利便性(加えて安全性)の兼ね合いを昨今は重視しているように私は思う。

  • 28年9月23日読了。
    江戸切絵図は、歴史本や時代小説を読む時は、いつも傍らにおいてある。いかんせん、東京自体をあまり知らない。若い頃出張の折に歩いた、微かな記憶では何の役にも立たない。こんな時は、東京近辺に生まれたかったと思ってしまう。大都会でありながら、意外と緑多く、ビルの間に忘れられたように神社仏閣が残っていたり、ひと昔前の様な店屋の前に、お客と店主らしき人が立ち話をしていた、そういう光景ばかりが思い出される。江戸切絵図の淡い色彩の中にあった実在の時間を、少しでも体感できる小説に、これからも出逢えることを熱望する。

  • 古地図と池波正太郎。
    組み合わせがもう既に最高なんだけど、内容も最高。
    江戸時代の古地図と、その地理を説明していくような淡々とした内容。
    語り口で書いてあるので、まるでなんだか講義を受けているようなそんな感じ。
    ただやはり分かっちゃいたけど近代社会に対するガッカリ度みたいなのもすごく伝わる
    「日本橋の上に何も考えず高速道路をむやみに敷き詰めるなんて」って。
    さぞガッカリしたでしょうな…
    まぁ確かに現地へ行くとなんだかすごく感動とかが薄いのは、そのせいなのかもしれない。
    風情もなにもないし。
    もちろん日本橋だけでなく色んな各地で「日本らしい」風景ですら都内では数少ないよなーと。
    いつ取り壊されたり、謎の都市開発があるか分からないから
    出来るだけ見に行ったりしてみようかな、と思う。

  • 池波正太郎がこの切絵図を元に
    構想を巡らせていた
    残念ながら文庫本サイズでは
    字が余りにも小さく老眼では目を凝らしても
    見えない
    切絵図を見ながら小説を読めば
    鬼平や梅安達の活躍が手にとるようだろう
    また読み返したい

    最近古地図との対比した書物もあるので
    購入したい

  • 昔の地図は見方がわからない。

  • 13/11/03、神田古本まつりで購入(古本)。

  • 巨匠の残した貴重な東京の記録。

  • とても面白かった。

    切絵図とか古地図の類をちゃんと見たのは初めてだったのだが、その精緻さにびっくりした。あと、当然ながら「北が上」とかいうルールもないし、文字はあらゆる方向から自由に書き連ねられているのも発見だった。江戸の人は、切絵図をくるくると回しながら見ていたに違いない。文庫サイズなのでどうしようもないが、切絵図が小さすぎて読むのに苦労させられた。大判の切絵図を是非見てみたい。また、現存する切絵図を切り貼りして大きな江戸の全体像などが見ることが出来ればとても素敵だろうとも思った。

    日本橋の首都高のくだりはとても同意。オリンピック招致だとか高度成長期のインフラのメンテナンスだとかが取りざたされる昨今、かつての日本橋の景観を取り戻す方策とか考えてもらえたらなあと思ったりした。

    機会があれば、池波正太郎先生が歩んだであろう本書の道筋をたどってみたい。

  • 懐古趣味とか江戸趣味とか言われても、江戸×地図で興奮しちゃうんだから仕方なし。切絵図ページをぐるぐる回して眺める通勤電車は幸せでした。

  • 江戸の古地図を片手に東京の街を散歩する。
    それだけを見るとNHK「ブラタモリ」と同じ、と感じるかもしれない。

    森田氏は福岡から、高度成長時代の東京へとやってきた。
    そして古地図と照らし合わせて街を歩き、
    坂道などの現在でも変わらない「江戸」を探して楽しんでいる。

    一方、この本での池波氏は古地図とともに
    自分の記憶の中にある戦前の東京を見ながら
    高度成長の名のもとに破壊された東京を呪う、そんな視点が感じられる。

    江戸っ子であり、時代小説家として江戸を描き続けた氏にとっては
    この本が書かれた当時、そして現在までの「発展」の名のもとに
    『江戸』を破壊し、『TOKYO』へと変貌していく東京を見ることは
    自分の思い出を破壊されることに等しかったのだと思う。
    それゆえにこの本は、哀しい。

    現在の東京に残る江戸の匂いを探す、というよりは
    池波氏の記憶の中の江戸の残っていた東京を辿る、そんな1冊。

  • 2010/08/17完讀

    很認真地研究書裡面小得不能再小的地圖標示,古地圖真的很有趣,看完我也想拿一張古地圖來走自己居住的城市了。

  • 私は日本時代ものはあまり読まないので
    (宮部みゆきくらい。一緒にしていいのかかなり疑問だけれど。多分ダメだろうな)、
    池波正太郎は本も人も全く知らないのだけれど、
    この本を読んだ限りでは
    多分ご本人は情緒を知った味わい深い方だったんじゃないかと
    推察されます。

    しかし絵が上手ですねー。
    中に紹介されているエピソードで
    子供の頃から絵を描いていて知らない人に褒められた
    というのがあったのだけれど、
    それも納得の描き慣れた筆使いを感じる絵でした。

    私も地図は好きですが、
    残念ながら古地図はあまり興味がないのと
    古い時代の街を想像して楽しめるほど親しんだ土地がないので
    猫に小判というか、まあそんな感じ。
    でも好きな人には絶対面白いはず。
    タモリなんかは本当に楽しんで読みそうだ…。

  • 94年5刷本

  • 江戸の時代小説を書くなら、見てみましょう。違いを比べてみたり、じっくり後をなぞってみたり、楽しめます。

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著者プロフィール

大正十二(一九二三)年一月二十五日、東京市浅草区聖天町生まれ。昭和十(一九三五)年、下谷区西町小学校卒業、株式仲買店勤務。昭和十四年より三年ほど証券取引所にあった剣道場へ通い、初段を得る。旋盤機械工を経て昭和十九年、横須賀海兵団入団。敗戦の翌年、東京都職員として下谷区役所の衛生課に勤務。昭和二十三年、長谷川伸門下に入る。昭和二十五年、片岡豊子と結婚。昭和二十六年、戯曲「鈍牛」を発表し上演。新国劇の脚本と演出を担当する一方、小説も執筆。昭和三十年、転勤先の目黒税務事務所で都庁職員を辞し、作家業に専念。昭和三十五年、『錯乱』で直木三十五賞受賞。『鬼平犯科帳』『剣客商売』『仕掛人・藤枝梅安』の三大シリーズや『真田太平記』等、数々の小説で人気を博す一方、食や映画、旅に関する著作物も多く上梓した。受賞歴はほか吉川英治文学賞、大谷竹次郎賞、菊池寛賞等。平成二(一九九〇)年五月三日、入院していた東京都千代田区神田和泉町の三井記念病院で死去。小社では同じく単行本未収録のエッセイ集『一升桝の度量』(二〇一一)と初期戯曲集『銀座並木通り』(二〇一三)を刊行している。

「2022年 『人生の滋味 池波正太郎かく語りき』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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