剣客商売 八 狂乱 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101157382

感想・レビュー・書評

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  • 毒婦 大勢巻き込んでぐだぐだ。
    狐雨 狐憑き。ちょっと妖怪じみた話
    狂乱 強いが身分の低い男の悲惨な末路
    仁三郎の顔 恩のある大治郎には良い顔をする悪党。
    女と男 捨てられたヘタレ男
    秋の炬燵 お秀と香具師と子供

    狂乱がイチオシ

  • シリーズ8巻目。
    悪女がいーっぱい出てくる。
    「女」は怖い、などと言えばジェンダー問題に厳しい昨今では問題視される。
    私が思うに「男にとって女性は怖い存在であると同時に女性にとって男は怖い」ということなのではないだろうか?
    これならジェンダーの意識高い方々にも石を投げられないか。
    いやいや、世の中男と女だけと決めつけてかかるなとお叱りを受けるかもしれない。

  • 剣客商売 八

    表題作「狂乱 」は身分の低さに比して剣術が強すぎる為、周りから疎まれ続けてきた、石山甚市の悲劇です。
    嫌われすぎてこじらせてしまっている、彼の孤独を読み取った小兵衛さんが、温かい言葉をかけてあげた時は、確かに石山さんの心の扉が開きかけていたのですが・・・その後仕官先の人々の冷淡な態度によって、結局彼を凶行に走らせてしまうという何ともやるせない結末でした。
    「秋の炬燵」では、5巻「手裏剣お秀」で登場した、女武芸者・杉原秀さんが再登場。狙われた男の子を守る為、おはるも頑張っております。

  • 剣客商売8作目。

    「狐雨」が結構好き。
    3年後の話を読んでみたいなー。。
    狐さん、良い人。(人か?)

    「狂乱」は、悲しい。
    気の毒で仕方がなかった。。
    もっと早く小兵衛に出会えていれば。。。と、思ってしまう。。

    毒婦
    狐雨
    狂乱
    任三郎の顔
    女と男
    秋の炬燵

  • ▼「毒婦」 「狐雨」 「狂乱」 「仁三郎の顔」 「女と男」 「秋の炬燵」

    ▼「仁三郎の顔」が印象的。仁三郎という男が殺人も辞さない悪党なのだけど、以前に(そんなことは知らない)大治郎に恩義がある。たまたま再会した大治郎の前では、「いい人」である。その裏腹の描き方。そしてラストの粋な幕切れ。

    ▼「秋の炬燵」もそうですが、「悪行」は明確にそこにあるけれど、「悪人」ってなんだろう。という池波節がますます切れ味鋭い。

  • おはるの語尾を伸ばす話し方がなんともいい。解説にもあったけれど、女の人の描き方がはっきりしている。したたかさが毒だけれどそれもまた魅力。

  • 『門の外まで、牛堀九万之助は小兵衛を見送って出た。
    道を曲がるとき、小兵衛が振り向くと、いつものように九万之助が権兵衛と共に、まだこちらを見送って立っており、頭をさげた。
    小兵衛も礼を返してから、道を曲がった。』
    池波正太郎「剣客商売」八巻(狂乱)

    人を人として認め、友を終生の友として想う心根。
    これは時の流れのゆるやかな江戸の世にあってのみ、あり得たことでしょうか?
    激流の社会の現代ではこうした様はすでになくなった、希有なことなのでしょうか?
    ひょっとして、今の人々は時の流れに翻弄されているからとエクスキューズしている、
    言い訳にしているにすぎないのではないかもしれない。
    と、ひまを持て余している年寄りは思ってしまうのであります。

  • 「池波正太郎」の連作短篇時代小説『剣客商売(八) 狂乱』を読みました。

    『新装版・梅安針供養 仕掛人・藤枝梅安(四)』、『剣客商売(一) 剣客商売』、『剣客商売(二) 辻斬り』、『剣客商売(三) 陽炎の男』、『剣客商売(七) 隠れ簑』に続き、「池波正太郎」作品です。

    -----story-------------
    老剣客「秋山小兵衛」とその息子「大治郎」が悪に挑む!
    累計2400万部突破の大人気シリーズ。

    足軽という身分に比して強すぎる腕前を持ったがために、うとまれ、踏みにじられ、孤独においこまれた男。
    「秋山小兵衛」はその胸中を思いやり声をかけてやろうとするのだが、一足遅く、侍は狂暴な血の命ずるまま無益な殺生に走る……表題作『狂乱』。
    ほかに、冷酷な殺人鬼と、大治郎に受けた恩義を律儀に忘れない二つの顔をもつ男の不気味さを描く『仁三郎の顔』など、シリーズ第8弾。
    -----------------------

    面白くて、どんどん次が読みたくなる『剣客商売(けんかくしょうばい)』シリーズの第8作… 1977年(昭和52年)に刊行された作品です、、、

    なんだか悪女の目立つ作品でしたね… 「小兵衛」もさらに円熟味を増している印象の強い作品でした。

     ■毒婦
     ■狐雨
     ■狂乱
     ■仁三郎の顔
     ■女と男
     ■秋の炬燵
     ■解説 常盤新平


    大工の「由太郎」が女房の「おきよ」をどこに隠したと「長次」を責めていたところに居合わせた「小兵衛」が仲裁に入り、その後、「小兵衛」は「長次」から「おきよ」はとんでもない女だということを聞く… 女は怖いなと感じさせられる『毒婦』、

    命を狙われていた「杉本又太郎」を「大治郎」が助ける、「杉本又太郎」は「松平修理之助」の屋敷から養女の「小枝」を引っ攫ってきたこことから狙われていたのだが、「杉本又太郎」は剣術の方はたいしたことがなく、今度襲われたら逃げると言い切る… しかし、この「杉本又太郎」が別人のように剣が強くなるが、なぜか「大治郎」に稽古をつけてほしいとやってくる!? 珍しくホラー要素(狐憑き)のある『狐雨』、

    「小兵衛」が、「牛堀九万之助」の道場を訪ねた際、「九万之助」の門弟を叩きのめしている「石山甚市」という男と出会う… もとは「藤堂家」の足軽だったが、今は大身旗本の家人になっている「石山甚市」の孤独に追い込まれた鬱屈した心と剣客としての哀しい運命を描いた『狂乱』、

    「黒羽の仁三郎」が江戸に戻ってきていることを知った「傘屋の徳次郎」は、「黒羽の仁三郎」が「佐平」を狙っていると考え、このことを「佐平」に知らせなければと「傘屋の徳次郎」は病んでいる体に鞭を打って知らせに行く… 一方、「大治郎」はこの「黒羽の仁三郎」を助けたことがあるという奇妙な縁を描いた『仁三郎の顔』、

    「小兵衛」は、曲者に囲まれた女を助けるが、数日後、その女が浪人で昔「小兵衛」の門徒であった「高瀬照太郎」と会っているところに出くわす… 「小兵衛」は、この女のために身を持ち崩し、今は女に捨てられた「高瀬」を情けないと思いつつ見捨てることができない『女と男』、

    手裏剣の名手「杉原秀」が助けたのは幼い男の子だった、「秀」の強烈な襲撃に這々の体で逃げた男は「飯富の亀吉」といい、香具師の元締「白金の徳蔵」から殺しを引き受けた男だった… 事件の裏側に気付いた「小兵衛」は、「大治郎」や「秀」、「おはる」とともにひと芝居をうち、悪巧みを打ち砕こうとする『秋の炬燵』、


    相変わらず、どの物語も外れがなくて面白かったですね… 印象的だったのは『狐雨』かな、剣術の腕前はたいしたことがなかった「杉本又太郎」が、狐の力に頼るだけでなく、限られた期間の中で自らも強くなろうとする姿に共感しました、、、

    『剣客商売』シリーズ、やめられなくなっちゃいましたね… 次も本シリーズを読みますよ!

  • <目次>


    <内容>
    石山甚市や高瀬照太郎の哀しい話が多い中、杉本又太郎の話はちょっとよかった…

  • これまでと一風変わった展開の話が見受けられた八巻。特に「狐雨」は登場人物(?)も特殊だが、そのことをきっかけに又太郎が必死になって打ち込むところは微笑ましい。事件そのものはほろっとさせられるのに、おはるのかわいさに全部持っていかれてしまう「女と男」もおもしろかった。
    そんな中で、剣の腕に優れるがゆえの孤独に苛まれる男の悲運を描いた表題作は、このシリーズらしいやるせなさを感じさせてくれる内容だった。あとほんの少し歯車がうまく噛み合っていたら……という不幸を、ただの運命の巡りあわせではなく各人の内面に踏み込んで描写している点が秀逸と思う。やはり、表題作がおもしろいと本全体が引き締まる。

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著者プロフィール

大正十二(一九二三)年一月二十五日、東京市浅草区聖天町生まれ。昭和十(一九三五)年、下谷区西町小学校卒業、株式仲買店勤務。昭和十四年より三年ほど証券取引所にあった剣道場へ通い、初段を得る。旋盤機械工を経て昭和十九年、横須賀海兵団入団。敗戦の翌年、東京都職員として下谷区役所の衛生課に勤務。昭和二十三年、長谷川伸門下に入る。昭和二十五年、片岡豊子と結婚。昭和二十六年、戯曲「鈍牛」を発表し上演。新国劇の脚本と演出を担当する一方、小説も執筆。昭和三十年、転勤先の目黒税務事務所で都庁職員を辞し、作家業に専念。昭和三十五年、『錯乱』で直木三十五賞受賞。『鬼平犯科帳』『剣客商売』『仕掛人・藤枝梅安』の三大シリーズや『真田太平記』等、数々の小説で人気を博す一方、食や映画、旅に関する著作物も多く上梓した。受賞歴はほか吉川英治文学賞、大谷竹次郎賞、菊池寛賞等。平成二(一九九〇)年五月三日、入院していた東京都千代田区神田和泉町の三井記念病院で死去。小社では同じく単行本未収録のエッセイ集『一升桝の度量』(二〇一一)と初期戯曲集『銀座並木通り』(二〇一三)を刊行している。

「2022年 『人生の滋味 池波正太郎かく語りき』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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