- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101157443
感想・レビュー・書評
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剣客商売 十四
今回は特別長編「暗殺者」です。
秋山大治郎を襲う計画があるらしいと耳にした小兵衛さんは、その噂の真偽を確かめる為に奔走します。
そこで浮かんできたのが、波川周蔵という凄腕の剣豪で・・。
例によって、小兵衛さんが弥七や徳次郎と共に探りまわるのですが、自分たちが大変な思いをしているのに、当の大治郎があまりに落ち着き払っているので、ついイラっとした小兵衛さんが大治郎に食って掛かるという珍しい場面がありました。
結局は、田沼老中の暗殺計画が裏にあったという事で、前回の長編「春の嵐」でも田沼老中がらみで大治郎がターゲットにされていましたよね。“大治郎、長編で狙われがち”という感じです。
ラストは波川の想定外の行動に驚かされましたが、彼自身の人柄は良いので、“無口な波川ファミリー”が今後、静かに幸せに暮らしていけることを願う次第です。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2019年9月1日、読み始め。
●人物メモ
・吉右衛門---書物問屋・和泉屋の当主で、三冬の伯父。
・おひろ---三冬の実母。
・永山精之助---町奉行所の同心。弥七の直属先。
・弥七---四谷・伝馬町の御用聞き。
・徳次郎---内藤新宿の下町に住む。女房は、おせき。
・又六---深川・島田町の裏長屋に住む、鰻売り。
・小川宗哲---亀沢町の町医者。小兵衛の碁がたき。小兵衛より10歳位年長。
・文吉(ぶんきち)・おしん---鬼熊酒屋の亭主と女房。前亭主は、熊五郎。文吉・おしんは養子夫婦。
・長次・おもと---浅草駒形堂裏の河岸の料理屋「元長(もとちょう)」をひらいている。
・牛掘九万之助(うしぼりくまのすけ)---浅草・元鳥越町に奥山念流の道場をかまえる。
・金子孫十郎信任(のぶとう)---湯島5丁目に道場をもつ。60歳をこえている。門人は300人以上。
・杉本又太郎---団子坂の無外流・杉本道場の当主で、秋山親子とも顔見知りの剣客であった父親を1年前に亡くしている。 -
池波正太郎を初めて読んだ一冊。話に引き込まれ一気に読んだ。意外な結末に向けて、長い下調べと綿密な打ち合わせが続くが、決して冗漫になっていないのがすごい。
一見、物語に関係ないように思われる朝餉、夕餉のシーンがあることで、かえって時間の経過が感じられた。生活感が出ることで物語にリアリティが増しているように思う。
藤田まことのテレビ時代劇を先に観ていたので頭の中に既にイメージができている。その前提がなかったらどうふうに読めただろうか。その点が不明なので☆4つにする。 -
シリーズ2冊目の長編。暗殺者たる波川周藏の人間らしさが好ましい。10.12.20
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<目次>
略
<内容>
長編である。それ故か、筋は複雑になっている。が最後にその縺れた糸が一気にほどけてくる。老中田沼意次の暗殺の実行シーンでだ。暗殺は失敗に終わる。暗殺犯グループの浪川周蔵の裏切りによってである。無論、秋山親子もこの次第を読んで対応している。ドラマの同作のシーンを思い出した。 -
「池波正太郎」の長篇時代小説『剣客商売(十四) 暗殺者』を読みました。
ここのところ9冊連続で「池波正太郎」作品です。
-----story-------------
老剣客「秋山小兵衛」とその息子「大治郎」が悪に挑む!
累計2400万部突破の大人気シリーズ
「波川周蔵」の手並みに「小兵衛」は戦いた。
「大治郎」襲撃の計画を知るや、「波川」との見えざる糸を感じ「小兵衛」の血はたぎる。
第十四弾、特別長編。
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やめられなくて、どんどん次が読みたくなる『剣客商売(けんかくしょうばい)』シリーズの第14作… 1986年(昭和61年)に刊行された作品です、、、
シリーズ2作目の長篇… 短篇も良いのですが、長篇の方が読み応えがあるので好きなんですよね。
■浪人・波川周蔵
■蘭の間・隠し部屋
■風花の朝
■頭巾の武士
■忍び返しの高い塀
■墓参の日
■血闘
■解説 常盤新平
香具師の元締である「萱野の亀右衛門」が、浪人の「波川周蔵」に五十両で殺しを依頼するが、「周蔵」は返事を渋っていた… 「小兵衛」が「横山正元」宅を辞してからのこと、この「周蔵」を二人の男が襲っていた、、、
その後、「小兵衛」は不二楼の主に招待されて、不二楼に久方ぶりに赴いた… その折りに、先日「周蔵」を襲っていた男の一人が不二楼に現れた。
その者たちは隠し部屋のある蘭の間に通され、「小兵衛」がこの隠し部屋からこっそりと聞いていると、襲った男はどうやら誰かを襲うために「周蔵」を試したらしい… その報告をしてい相手は「小田切」と名乗っていた、、、
一体この者たちは誰を襲うとしているのか? やがてそのことは分かった… 不二楼の主「与兵衛」がこの「小田切某」が蘭の間に入ったのを幸いに、こっそりと聞いていたら「「秋山大治郎」が…」というのが聞こえていたのだ。
このことを聞いた「小兵衛」は、「周蔵」に襲わせる相手が「大治郎」だと直感する… 「周蔵」は「小兵衛」の見るところ、息「大治郎」と斬り合ってどちらが勝つか分からない腕前である、、、
その「周蔵」であるが、「萱野の亀右衛門」のところに赴いて、殺しの件を引き受け、その代わり、妻子を人に見つからないような場所に移して欲しいと頼む… この「周蔵」に「大治郎」を襲わせる理由は何なのか? 「小田切」の後にはまだ別の人物がいるようである。
この人物の意中とは? そして、この「周蔵」と「大治郎」の対決はどうなるのか?
「松平伊勢守」と「田沼意次」の確執や、「徳川家」が綻びを見せ始めていた時代背景が描かれ、長篇らしい重厚な展開が愉しめましたね、、、
そして、最後の大どんでん返しが印象的でした… 「周蔵」の武士としての良心と判断には驚かされたけど、共感しましたね。
あと、「大治郎」のことを心配するあまり、ヒステリックになってしまう「小兵衛」の姿が忘れられません… 「小兵衛」のような人物でも、子どものことになると心が乱されてしまうんですね。
これで在庫として持っている『剣客商売』シリーズは全て読み終わってしまいました… 飛び飛びで半分くらいの作品しか読めてないので、機会があれば全て読破したいですね。 -
「春の嵐」に続く長編。今回の長編では刺客となる波川周蔵に早くから光が当たり、大治郎との対決を予感させつつもその魅力的な人物像を描き出していくという憎い演出。おかげで最後まで緊張感を保ちつつ読むことができた。人の心とそのありようが時を経て変わってしまうように、時代の移ろいをも予感させる展開はうら寂しい。そんな中で、旧友の死を引きずって老いを実感し、息子の前ですら逸る気持ちを抑えられない小兵衛と、その父に対して剣客としての成長ぶりを示しながらも父を立てようとする大治郎の対比がたまらなく良かった。
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小兵衛は見た。凄腕の二人の浪人者をたちまちにして蹴ちらした、その巨漢の剣客の手並みを。男の名は、波川周蔵。「あの男ならせがれの大治郎でも危(あやう)い」。波川にいわれなき胸騒ぎを覚えた小兵衛は、やがて大治郎襲撃の計画を偶然知るや、卓抜した剣客の直観で、その陰謀と波川との見えざる糸を確信する。
秋山小兵衛六十六歳、一剣客として父として、その血は熱く沸いた。シリーズ第14弾、特別長編。