黒白 下巻―剣客商売 番外編 新装版 (新潮文庫 い 17-18)

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  • Amazon.co.jp ・本 (544ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101157481

感想・レビュー・書評

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  • 下巻読了。

    波切八郎がお信と再会し、橘屋との関係や背後の事情が明らかになります。
    その後も、波切さんは岡本弥助や、伊之吉との腐れ縁がどうも切れずに、ダークな方へと進んでしまいます。
    この、波切、岡本、伊之吉の3人の人生が、もうちょい上手い事生きられなかったものかな・・と、いつの間にか彼らに幸せになってほしいと思いながら読んでいたことに気づく私。
    なので、終盤で岡本が“これで最後”と決心した暗殺の際に、それを阻止しようとした小兵衛さんに斬られ、たまらず飛び出してきた波切さんと小兵衛さんの思わぬ対峙は、何とも悲しいものでした。
    そして最終章「三条大橋」は、じんわりと余韻が残る秀逸なラストでした。

  • 岡本、伊之吉が魅力的で、この人たちの会話のシーンが楽しい。
    ずっとあまり好きじゃなかった波切も、最後の方で好きになれた。
    ただ、話が尻切れトンボというか、モヤモヤが残る。
    そして最後まで、若い小兵衛が想像できなかった。

  • 面白かった。波切八郎も興味深いが岡本弥助も気になる。読んでいて30歳もう少し若いと思っていた。最期は予想されたが生きていてくれていてもよかった。あと一日遅かったら、結末は違っていたと思うが。最後のシーンは和んだ。

  • 後編になって、一気にストーリーが展開した。浪切八郎の物語であり、若き小兵衛の成長譚である。バイプレーヤーの岡本弥助は小兵衛に殺された。ある意味本望だったような。

  • 波切八郎を取り巻く人物の背景が明らかになっていき、それとともに八郎の内面には新たな変化が生じる。八郎と岡本弥助、伊之吉のどこか離れがたい関係は、意味深なタイトルに込められたものと相まって「剣客」の世界を形作っている価値観なのだと思う。結末も含めて味わい深い内容だった。

  • 真剣勝負のその日、波切八郎はついに姿を現わさなかった。しかし秋山小兵衛はなぜか八郎を憎めない。一流の剣客が約束を違えるとはよほどの事がその身を襲ったからであり、実際、道場出奔後、八郎の運命は激烈に転変し、見えない勢力に操られ人斬りを重ねる日々であった。対照的な生き方をとる二人は、互いへの想いを断てぬまま思いがけぬ所で…。「剣客商売」ファン必読の番外編。

  • 剣客商売番外編下巻。

    ものすごいスピード感のあるストーリー展開だった。

    この番外編のタイトル「黒白」は、人の人生を示しているのだろうな。
    善か悪か。
    黒か白か。
    ある一端を見れば、悪であり黒かもしれないが、その裏には善であり白かもある。
    人の人生、人というものは、黒か白かをバッサリと分けることができない。
    頭ではわかっているが、黒か白かをバッサリと切ったほうが、接することも、生きることも楽チンなので、やってしまうが、そんな簡単なものではないのだ。

    波切八郎も、岡本弥助も、人に好かれる資質を持っていたと思う。
    そして、2人とも、それぞれの苦悩を抱えていた。
    辛い人生の道に翻弄された2人という気がする。
    どこかで道が違っていたら、きっと、2人は出会わず、全く異なった人生を歩んだだろうなと。
    ラスト、波切八郎が無事であったことを知ったとき、小兵衛さんではないが、嬉しくなった。
    生きていてくれたと。
    そして、その姿から、今は幸せなのだろうと想像して。


  • 下巻の始まりは、お信と八郎が「情を通じる」仲になった場面からで、小兵衛に引き取られている市蔵と三人で上方へ行くという無難な選択肢もあったはず。しかし、八郎がずるずると岡本弥助の行く末を気にするところから大きく物語は動き出す。本編と違うのは八代将軍・吉宗の逸話や、真田家の騒動という史実を交えて進行することだ。著者の『真田騒動-恩田木工』は未だ積読だが、読む楽しみが増えたというものだ。結びに、小兵衛の好奇心から命を救われた少年が大名となり、小兵衛の隠居祝いを送ったくだりでほろりとさせられた。

  • 最後の結末に向け、ありとあらゆる場面がそこに集約していく過程が何とも言えず、ドキドキハラハラする展開でした。。。やっぱりそうくるのか、いや実はこういう展開になるんじゃ・・・という妄想も楽しく、かつ書かれていた結末もなるほどという納得感があり、よい読後感を味わえました。
    小兵衛の若い頃の活躍というか、動きがわかるというのはとてもよい観点で、人の深みが増した気がします。楽しかった。番外編、もっと読みたくなりますね。

  • 池波先生の「人情」の描写が好きだ。押しつけでも束縛でも依存でもない。人情。いいね。そして、最後に秋山小兵衛が見掛けて涙する、互いに寄り添う幸せそうな夫婦。夫の方は片腕の肘から先がない。死んだかと思っていた人物が生きていた。最後に幸せになれる結末。

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著者プロフィール

大正十二(一九二三)年一月二十五日、東京市浅草区聖天町生まれ。昭和十(一九三五)年、下谷区西町小学校卒業、株式仲買店勤務。昭和十四年より三年ほど証券取引所にあった剣道場へ通い、初段を得る。旋盤機械工を経て昭和十九年、横須賀海兵団入団。敗戦の翌年、東京都職員として下谷区役所の衛生課に勤務。昭和二十三年、長谷川伸門下に入る。昭和二十五年、片岡豊子と結婚。昭和二十六年、戯曲「鈍牛」を発表し上演。新国劇の脚本と演出を担当する一方、小説も執筆。昭和三十年、転勤先の目黒税務事務所で都庁職員を辞し、作家業に専念。昭和三十五年、『錯乱』で直木三十五賞受賞。『鬼平犯科帳』『剣客商売』『仕掛人・藤枝梅安』の三大シリーズや『真田太平記』等、数々の小説で人気を博す一方、食や映画、旅に関する著作物も多く上梓した。受賞歴はほか吉川英治文学賞、大谷竹次郎賞、菊池寛賞等。平成二(一九九〇)年五月三日、入院していた東京都千代田区神田和泉町の三井記念病院で死去。小社では同じく単行本未収録のエッセイ集『一升桝の度量』(二〇一一)と初期戯曲集『銀座並木通り』(二〇一三)を刊行している。

「2022年 『人生の滋味 池波正太郎かく語りき』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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