みいら採り猟奇譚 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 13
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  • Amazon.co.jp ・本 (413ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101161020

作品紹介・あらすじ

相良外科病院のひとり娘、比奈子は19歳で、38歳の内科医・尾高正隆と結婚した。昭和16年の初夏ふたりの生活が始まった。正隆は、今から少し遊ぼうと、比奈子に、真に生きることを教えはじめる。快楽死を至上の願望とするマゾヒストの彼は、妻をサディストに仕立てあげた…。グロテスクな現実と人間本来の躍動と日常生活のディテールの濃密な時空間に「快楽死」を描いた純文学。

感想・レビュー・書評

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  • 新婚夫婦のSMがエスカレートしていく話だが、フォーカスは性の描写ではなく狙いはもっと深い。
    戦時中という舞台で家督相続などお家関係をメインに物語が進みながら、ひそかに性倒錯が進んでいく様は見事で、事の顛末含め作品の印象はお堅く非常に格式高い。
    読後に、表題の意味を照らし合わせながら、あとがきの吉行淳之介との対談で作者の美学に触れる所までがセットの重厚な作品。

  • 歳が20も離れた男と結婚した娘は
    実はマゾヒストだった夫に教育されて、サディズムに目覚めてゆく
    時は日米開戦前夜
    開業医を営むその家で、のどかな昼と倒錯的な夜の
    二重生活がはじまる
    東京大空襲で焼け出されることにはなるが
    徴兵に取られる心配はなし、他にさしたる苦労も面倒もなく
    長い非日常をむしろ楽しんでしまう2人なのであった
    子供をつくるそぶりもない
    夫はドイツ人の血が混じったクォーターで
    ヒトラーのナチス政権が滅びるころ、非日常の終わりを予感してか
    2人の営みも、最後の一線を越えることになる

  • 意外だったのは、夫婦のSM関係が前景化され、掘り下げられていくのかと思ったら、太平洋戦争、および空襲の歴史的経緯のなかに塗り込められるようにして夫婦の倒錯した性癖が描かれる。それがかえって、時代を超越した個人の尊さや自由を暗示し、えもいわれぬ感慨をさそう。50年後も10年後も読み継がれるべき傑作。

  • Mの夫により徐々にSへと開眼していく比奈子。忘我に陥る二人の凄まじいほど究極の愛。猟奇的ですらある題材をこれほどまで純粋に浄化し昇華させるとは。神々しいほど感動のラスト。

  • 日中戦争・太平洋戦争期、東京に暮らす医者とその妻の話。夫婦仲はよい。どちらの実家も医者一族。いろいろあるものの、登場人物は皆恵まれた階層でごく常識的なバランスのとれた人々。戦争が起こり、物資が不足し、空襲にあい、疎開するが、そうした出来事にも落ち着いて対応する余裕がある。何の不足もない。が、夫はマゾで、妻はそれに応じてサドになった。何か欠落したものを埋め合わせるためのSMではなく、普通の人が純粋に趣味でSMの深みに淡々とハマっていく。疎開生活で人との繋がりや物資も最小限となる中、夫婦の営みは純度を増していく。淡々とした文章がその純度を表すのに適しているのかもしれない。しかし、この小説はおもしろいのか。一気に読んでしまったことは確かだが。すごい作品なのかもしれないが、そうでないかもしれない。

  • 舞台は昭和20年前後。戦時中にもかかわらず、ドMの夫の感化でドSに目覚めた若妻が、最終的にはその夫を互いの快楽のために殺すお話。今でこそSとかMとか日常的に使ったりしますが、設定を戦中にしてあったことで、かえって妙なリアリティがありました。

  • とにかく文章がすごく下手。そのうえ瑣末な出来事をえんえん語るので、もうやめようかと何度も思うのだけど、そう思っていると、突然ぎょっとするような変態シーンが出てきたりするから困る。まだらぼけの老人が突然正気になって毒を吐く、というような感じ。これがどうも著者の持ち味らしく、いやいやながら、最後まで読まされるはめになる(最後の昇天クライマックスも突然アクセルがかかる感じ)。SMの奥義、戦争とエロスの関係、「ふり」の問題、呼び名について、たしかにいろんな要素が詰まっているが、どうも本書だけでは著者が偉いのかどうか判断つかない。もう少し他のを読んでみるつもり。

  • ラストが秀逸。女性は23歳のときが精神的にも肉体的にもセックスに最も適している、という記述が印象的。

  • こ-9-2

  • 購入日:2008/11/3
    購入者:桃色博士

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