天国旅行 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101167626

感想・レビュー・書評

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  • 天国旅行 三浦しをん著

    1.購読動機
    舟を編む、まほろば、風が強く吹いている、あの家に暮らす4人の女という具合に定期的に手にとる作家さんです。
    装丁に花があり、そしてタイトルに惹かれて購読です。

    2.新しい三浦さんの世界
    装丁そしてタイトルのような優しさとは違う展開です。
    著書にあるとおり、心中をテーマにした作品です。
    そう、どのような動機で人間は、死を選択するのか?
    7つの短編すべてが、このテーマです。
    したがって、まほろばや、風が、、、のようなテイストの作品とは趣きが異なります。
    作品の遺言は、夏目漱石をイメージしてしまうのは私だけでしょうか?

    3.死
    作家角田さんの後書きで、「死とは死でしかない。それを作品としてどう描くのか?は、作家として一つの関心であり、挑戦」の趣旨を記述しています。
    三浦しをんさんの世界を広げてみたい方はぜひに手にしてみては?いかがでしょう。

  • 2020(R2)8.11-8.13

    帯に『「心中」をテーマに当代一の名手が描く生と愛の物語』とあった。7つの短篇が収められている。
    個人的には長編の方が好きだ。話に広がりや深まりがあり、最後は全てが集約されてスッキリするからだ。
    しかし、この7つの短編集は、僕の好きな長編の要素を全て網羅している。その上、ある意味「完結していない」ので、続きが読みたくなる。

    今まで読んだ三浦しをんは、語り口が比較的“軽妙”だったが、今回はなかなかドッシリとしていて、そこはプロ!ますます三浦しをんが好きになった。

  • 旅行と名付けているのがちょっとびっくりするような内容。
    短編集で後味悪い結末だったりする話もあるけれども死をテーマにしてそれぞれの生い立ちを知りあたたかい気持ちにもなれる。 
    行き先が天国なのかも分からないけれども人の最後だけではなく当たり前だけれどもそれまでの人生や思いがある事を知る事が出来る。
    一気に読み終わりました。

  • 何か読む本ないかな~と思っていたところで出会った。直感で手に取ったのだが、解説の角田光代さんの重く深い言葉の一つ一つが突き刺さり、勢いで購入。これが大当たりでした。
    「心中」がテーマの本作は、どの作品もしをんさん的なひねりが効いていて、それぞれに先が読めない。不気味で、ぞわりと怖いのに、どこか滑稽だったり、静かに哀しかったり。よく描かれる、ただただ悲観的で、過剰に美化されがちな死と違い、しをんさんの視点は冷静だけどどきっとするところを突いている。
    一体どういう気持ちで死を選んだのか?どうして殺されたのか?彼の正体は何なのか?…どこか謎に包まれている、「死」を巡る状況。それぞれの謎の解釈は読者に委ねており、どの作品もいい意味で「わかりやすくない」。前世の夢に捉われたり、あるいは夢で懐妊したり、恋人の幽霊が見えたり…時に非現実的な設定もあるけれど、その描写が不思議と説得力があるのだ。近しい人の死により人生は一変するけど、その後も残された人らの日々は続く。哀しみや苦しみが複雑に入り混じり、だけどほのかな希望がわずかに見え隠れする、独特な読後感の一冊だ。
    一番印象的だったのは、「森の奥」。富士の樹海を舞台に、生死のはざまでみっともなく惑い揺れる中年男性の滑稽なほどのカッコ悪さ。謎の男性との束の間の交流でカッコ悪さはさらに際立つものの、共感できるところもあり。最後はちょっと泣きそうになる、しをんさんらしい作品だなと思いました。

  • 三浦しをん氏の作品を読むのは11冊目、6年ぶり。

    著者本人が「うまい表現でしょ?」と思ってこねくりまわした比喩表現過多の、別の作家さんの著書の次に本書を読んだ。

    そのせいかもしれないが、ほらやっぱり、わかりやすい表現でも深い話、時制が前後する場面にも読者がすんなりついていけて理解できる話を書ける作家さんはいる。

    ただ、自分の記録を読み返してみると、三浦しをん氏の作品間で自分は好き嫌いが有ると書いてあった。
    だとしたら、本書は好きな部類だ。

  • 心中をテーマにした7つの短編集。
    心中なんてものをテーマにしているのだから、暗い小説かと思いきや意外と明るい物だった。死で終わるのではなく、死を通して生を語っているからだろうか。何があっても、今生きている事が大事だと思える内容だった。特に気に入ったのは「初盆の客」。
    相変わらず、しをんさんの文章は美しく読みやすい。

  • 死は決して遠くない。身近なものであるのだと再認識させられる。でもただの死ではなく「心中」だからこそ描ける愛情のようなものを感じた。家族・恋人・友人。そして、死を選んだからといって全てがリセットされるわけではないといったような、哲学も感じられた。残された者の「生」は続いていくわけだし、影響力は残っている。残り香のようなものもあれば、生きている側の何かを突き動かすようなエネルギーのあるものまで。それはただの「死」ではなく、「生きていた」証なのだと思う。
    それなのに重たすぎないのが不思議だ。内容の重たいものはあるのだが、誰もが一度は向き合う「なぜ、生きているのか、生まれたのか」というものに近い気がした。

    余談だが、THE YELLOW MONKEYの「天国旅行」からタイトルをもらっているようで。この曲は本当に好きで、思い浮かべる風景が近いものもあった。読んでる途中もずっと頭の中で流れていたせいもあるかもしれないが、両方を知れて、私はどうやら「生きている」ことを実感したようだ。

  • ひとつひとつが、重かった。今後の人生でほんとにしんどくなったらまた読みたい。

  • 遺書の章が好き。
    "君は夜"残酷すぎて。苦しかった。読み終わった後も続きが気になるというか、三浦しをんとか他の人はこれ読んでどんなふうに続き考えてるんやろみたいな、想像をしていくのが楽しい.好きやなー三浦しをん

  • きれいに生きたいからこそ死を選ぶこともある。
    汚いまま生きれる心の強さがあれば、自ら死を選ぶことはないのでは無いかと感じた
    全て自死をテーマにした内容ですが、重すぎずどこか一筋の希望の光のようなものが見える作品たち

著者プロフィール

1976年東京生まれ。2000年『格闘する者に○』で、デビュー。06年『まほろ駅前多田便利軒』で「直木賞」、12年『舟を編む』で「本屋大賞」、15年『あの家に暮らす四人の女』で「織田作之助賞」、18年『ののはな通信』で「島清恋愛文学賞」19年に「河合隼雄物語賞」、同年『愛なき世界』で「日本植物学会賞特別賞」を受賞する。その他小説に、『風が強く吹いている』『光』『神去なあなあ日常』『きみはポラリス』、エッセイ集に『乙女なげやり』『のっけから失礼します』『好きになってしまいました。』等がある。

三浦しをんの作品

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