- Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101181332
作品紹介・あらすじ
ヴェネツィア共和国は十字軍の熱狂に乗じて東地中海に定期航路を確立し、貿易国としての地歩固めに成功。異教徒との通商を禁じるローマ法王を出し抜き、独自の経済技術や情報網を駆使して、東方との交易市場に強烈な存在感を示した。宗教の排除と政治のプロの育成に重点をおき、強力な統治能力を発揮した内政にも裏打ちされた「ヴェネツィア株式会社」の真髄を描き出す。
感想・レビュー・書評
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今回は元首たちがいかに安定した政治体制を築いてきたかを教えてくれる。プロローグでシェークスピアの「オセロ」「ヴェニスの商人」がありえない話とあるが、本筋と関係ないのでご愛嬌。
宗教の排除、政治のプロ育成など強力な統治能力を発揮した内政を実現、維持できたのは、資源を持たない貧しい国だからこその危機感から生まれた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2巻は12〜14世紀について。
マルコ•クィリーニ、バイアモンテ•ティエポロの乱の際に、反乱軍の旗手の頭の上に窓から小さな石臼を落として内乱を回天させた女性が、乱後に功績を認められ、何でも望むものを褒美として得られることとなった際に、女性が望んだものが、祭日に自分の窓からヴェネツィア共和国の国旗を掲げる権利と、家賃を据え置く権利だった、という愛国心あふれる慎ましやかさと、国がそれに応えて、その158年後でも家賃が実際に据え置かれていたことが記録として確認出来る点が素晴らしい。
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塩野七生によるヴェネツィア史の第2巻。本巻では、ヴェネツィアの一般的な商人の生き様と、年月が経つたびに洗練されていった共和政治について書かれている。衆議に基づく共和政治は、現代の民主主義と同じく、良くも悪くも意思決定に時間がかかるという特徴がある。ヴェネツィアでは、国家の存亡にかかわる重大事が発生したら、時限的な独裁官を立てて、国家としての意思決定をスピーディに行う仕組みが整っていた。これこそが、ヴェネツィアが1000年間存続できた理由だと著者は述べている。マキャヴェリの「政略論」では、共和国は有事に弱いとされているが、ヴェネツィアは海洋貿易国家ならではの「実利主義」が浸透していたため、ベターな政体を発達させることに成功したのであろう。
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歴史書というより、ビジネス史として面白い。
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ヴェネツィア共和国は十字軍の熱狂に乗じて東地中海に定期航路を確立し、貿易国としての地歩固めに成功。異教徒との通商を禁じるローマ法王を出し抜き、独自の経済技術や情報網を駆使して、東方との交易市場に強烈な存在感を示した。宗教の排除と政治のプロの育成に重点をおき、強力な統治能力を発揮した内政にも裏打ちされた「ヴェネツィア株式会社」の真髄を描き出す。
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ヴェニスの商人という題でヴェツィアの経済についてクールに解説。シェークスピアの描くものとはかけ離れています。
そしてヴェネツィアの政治。これは面白かったです。
地形的にかなり不利なところにいるヴェネツィアは、極力独裁者を出さないでみんなで協力して頑張ってきたのです。
水族館の鰯を思い出しました。
ヴェネツィア共和国が経験したただ二つの反政府陰謀。「クリーニティエポロの乱」「マリーノファリエルの陰謀」後者はその後19世紀にロマン派の芸術家たちの想像力を刺激、ドラクロアが描きバイロンが書きドニゼッティとロッシーニがオペラに作曲。
14世紀前半のこの陰謀のあと以後500年間政治的安定。それはそれで興味深いけど、21世紀の私がこうして本を読んでいるとやっぱり陰謀の部分が面白いと思ってしまいます。ごめんなさい。 -
「ベネチア株式会社」の表現が面白い。現代のビジネスや組織論にも通じるところがある。この巻の気になったポイントは 1.海上交易で安定的に収益を得るために13世紀に初めて「定期航路(ムーダ)」を開設 2.宗教の政治への介入を防ぐために司教の権利・居住地域を制限する 3.議員層を世襲化して政治家のプロの階級を作り上げる 3.世襲化は現代からすれば疑問符がつきそうだが、政治家養成機関や公正なフィルタは当時どこにもなかったことを考えるに 親から子への教育で頼るほかなかったと著者は述べる。
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この巻はヴェネツィアの経済と政治の考察。章構成がこうした順序になっているのは、ヴェネツィアにあっては、経済こそが政治のあり方を決定していたからだ。12世紀後半のヴェネツィアに生きた商人ロマーノ・マイラーノの生涯が紹介されているが、彼にあっては(おそらくは他の誰にとっても)国家の浮沈が、そのまま自己の浮沈に直結していた。20数年も故国に帰らず、東地中海で商売に邁進していた彼のような存在は珍しくなかったらしい。マルコ・ポーロでさえ、北京まで行ったことをのぞいては、これまた特別な存在でもなかったようなのだ。