- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101181738
感想・レビュー・書評
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ティトゥス、ドミティアヌス、ネルヴァの治世。ティトゥスの治世、まるで令和の日本のようだなと思いながら読んだ。元旦からの数々のニュースから一度離れようとこの本を手にしたのに、こちらはこちらで火山の噴火。奔走するティトゥス。こんな働き方をしている人、いるなぁと思う。真似できない集中力と誠実さ。
ドミティアヌス。そんなに悪い皇帝か?と疑問。ローマの皇帝、というかローマの女性たちは自由な雰囲気を感じる。若い時から皇帝になるという自負が良い面もあり、驕りにもなる。ただやはりカエサルやアウグストゥスとまではいかない、と思うのは塩野さんの筆の力によるものか。
ネルヴァ。ローマにはこういう人がこういうタイミングで出てくるなぁ。でも、ネルヴァがいるかいないかは五賢帝時代と言われるこれからに大きく影響するのだろう。五賢帝の1人だしね、ネルヴァ。
さぁ、次はどんな皇帝なのか。楽しみだ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
皇帝ヴェスパニアヌスの死後、後を継いだ長男ティトゥスと次男ドミティウス。しかしフラヴィウス朝は3代で終了し、五賢帝時代へ入る。
ネルヴァは次期皇帝に属州出身のトライアヌスを指名。ヴェスパシアヌスも父親が元老院階級ではない人で異例だったけど、ついに属州出身者がローマ皇帝になる時代がきた。「ローマ人が他民族を支配するのではなく、他民族までローマ人にしてしまった」というのがよく表れていると思う。 -
歴史家ギボンは、
「ローマがなぜ滅亡したのかと問うよりも、ローマがなぜあれほども長く存続できたのかを問うべきである」と言った。
1000年存続したローマ帝国。
それは、
「ローマ人が他民族を支配するのではなく、他民族までローマ人にしてしまったから」である。
結局、
ローマは最後まで属州の反乱では崩壊しなかった。
また、
学校で教えるローマ史では、蛮族の侵入によって滅亡したような印象を与えるが、これは完全な誤解だと著者は言う。
ローマが再び蛮族に蹂躙されるのは、防衛システムが機能しなくなったからだった。故に機能していた東ローマ帝国は崩壊を免れている。
「敗者になりたくなければ、防衛努力を忘れるわけにはいかない。」
ローマ人は平和協定を結んだ相手に対しても自衛努力を怠らないことは、矛盾どころか当然のことと考えてもいた。
「有権者ならば誰でも国政への判断力をそなえていると思うのは、人間性に対する幻想である。」
選挙というのも素晴らしい人を選ぶ作業ではなく、なるだけマシな人間を選ぶということなのだろう。
この時期に書かれた、
その先1000年わたって読まれ続けてきた「教育論大全」
そこにある教育通年は、
「教育とは、放っておいても一人で育つ天才のためにあるのではなく、社会全般の知力の向上が目的である」する考え。
これも非常に鋭い指摘で面白い。
現代のシンガポールのそれとはまた違うようだ。
シンガポールではエリートを選抜して官僚を育てていくための、敗者復活戦なしの教育システムを構築している。
教育の必要性の背景によって、
教育のあり方も時代と場所によって変わると考えられる。 -
ティトゥス、ドミティアヌスそしてネルヴァまでの事績を紹介した巻。なかでもドミティアヌスがなした「リメス・ゲルマニクス」の壮大さに感心した。下地はできた。いよいよ五賢帝時代へと突入。
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ティトゥスとドミティアヌスそしてネルヴァと続く。
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フラヴィウス朝創始者であるヴェスパシアヌスの死後(紀元79年)、彼の息子であるティトゥス、ドミティアヌスの兄弟が皇位を継ぐが、紀元96年にドミティアヌスが暗殺されてフラヴィウス朝は3代で途絶える。その後、五賢帝の一人に数えられる皇帝ネルヴァによる1年ちょっとの中継ぎ期間を経て、いよいよ次巻からはトライアヌスが登場する。
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のちに「暴君」の代名詞ともなったネロが失脚、自死してから、約一年の間に3人の皇帝が即位しては消えた。圧倒的な帝政であるが、元老院や市民の支持を失った皇帝は、暗殺されるか自死を選ぶしかないという構造は興味深い。短命の跡を継いだのは「健全な常識人」と言われた皇帝。内乱や外敵の侵入など、帝国の危機に瀕してもそれを建て直すことができたのは、ごくごく普通の政治だったということ。その後、しばらくは安定した時代になるが、若くして登位した3代目は、暗殺された上に、歴史から抹消されるという罰を受けることになる。政治家・軍人としては悪くなかったが、市民の気持ちに鈍感だったことが思わぬ反発を招く結果になった。この物語は歴代皇帝の動向とそれに対する元老院や市民の反応を詳しく解説してくれているが、リーダー論として本当に面白い。次からはいわゆる「五賢帝の時代」でこれも楽しみ。
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「記録抹殺刑」って凄すぎる
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皇帝の評価は、後世の文筆家の評価に頼るのではなく、後を継いだ皇帝たちが政策を継承したかを見るのはいい視点だと思った。