ローマ人の物語〈34〉迷走する帝国〈下〉 (新潮文庫 し 12-84)

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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101181844

感想・レビュー・書評

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  • もう皇帝の名前も覚えられない!
    それほど次から次に変わる皇帝たち。
    時代に翻弄されたと言うべき皇帝たちで、なんか悲哀を感じざるおえない。
    とくにアウレリアヌスとプロプスは時代が違えば名将と称えられたのではないか。

  • 2022/01/11 木の本棚より 歴史 @図書館 ◇塩野七生

  • このままローマはどんどん坂道を転がり落ちていくのかと思っていたらそんなことはありませんでした。

    前座がクラウディウス・ゴティクス
    今までの流れを変えて順調
    でも疫病で1年半で亡くなりました。

    アウレリアヌス(5年)とプロブス(6年)は本当に久々に立派な皇帝が出てきたと思ったら、心無い人たちに殺されてしまうんですね…。

    アウレリアヌス暗殺については塩野女史もかなりお怒りなのでしょう。主犯のエロスは

    >生きたまま身体を裂かれるという極刑に処され、

    と明記されています。エロスにそそのかされて加わった将官たちの中には後悔の思いに苦しみ自殺した人もいるそうです。

    「実力重視の皇帝」の、欠点としては距離が近いこと。
    >いわゆる「貴種」、生まれや育ちが自分とはかけはなれている人に対して下層の人々が説明しようのない敬意を感じるのはそれが非合理であるからである。多くの人にとって素直に胸に入ってくるのは、合理的な理性よりも非合理的な感性のほうなのだ。

    そんな非合理に慣れ親しんだ一般大衆に敬意を捧げられるには距離をおくことがよい方法ですが、それには時間が必要だそうです。

    >リーダーであり続けることは相手が感性に左右されやすい人間であるだけにむずかしい。親近感をもたれながら距離感もいだかせる必要があるのだから。

    プロプスの頃には皇帝になってもすぐにローマに行く余裕もなく蛮族やペルシャに勝利して凱旋式挙行でしかローマへ行くことはなかったそうです。後のハリウッド製ローマ史劇ではパラティーノの丘全体を占める壮麗な皇宮で乱痴気騒ぎを享楽する場面があるらしいのですが、もしもこの時期のローマ皇帝たちがこれを見たら「こうも誤解されるのならば一度くらいは実際にやるべきだった」とくらいは言うかもしれないと塩野女史。

    もうひとつ笑ってしまったところ
    >ペルシア戦役再開を告げる告示を、兵士たちは歓声をあげて迎えた。鍬をもつ日々から開放されただけでなく、オリエントは彼らにとって、豊かな地と同意語なのである。まるでイタリアとかガリアの名を聴くだけで金や銀貨の山を思い浮かべてしまうゲルマン人の蛮族と変わりないが、ローマ軍の兵士たちも三世紀も末になると、このようなことでも蛮族化が進んでいたのであった。

    巻末にキリスト教について書かれています。

  • アウレリウスがキリスト教のトップはローマの司教と決めたことが、現代においても踏襲されていることが興味深い。

  • アウレリアヌスもプロブスも殺されてしまう。
    カルスも事故死してしまう。
    とても残念。

  • 毎日、少しずつ読んでいたのだけど、毎日、皇帝が一人ずつ死んでしまって、悲しくなってしまいました。

  • 73年間で22人の皇帝が、しかもそのほとんどが謀殺により代替わりする三世紀の後編。

    ローマ皇帝が敵国に捕らえられるという前代未聞の国難により、ローマ帝国は覇権を失い、ガリア帝国とパルミラ王国がローマから分離する。
    いよいよ帝国も崩壊かと思われたが、生え抜きの軍人皇帝アウレリアヌスにより、なんとか失地回復に成功する。
    だが、そんな皇帝でさえ謀殺により5年で失われてしまうのが、このときのローマだった。
    5ヶ月の皇帝空位の後、75才のタキトゥスが8ヶ月で老衰、6年戦地を転々としたプロブスは謀殺、メソポタミアを回復したカルスは1年で事故死、ヌメリアヌス1年で謀殺、カリヌス2年で謀殺。
    もはや何故これで政体として維持し続けていられるのか疑問だが、次の皇帝でようやく21年間の継続に成功する。
    しかし、終わらない外敵の侵入により生活を脅かされた人々は、もはや国ではなく宗教に救いを求めるようになっていた。
    外敵にはどうにか対抗できていたローマが、内なる敵にどう立ち向かうのか。
    キリスト教との21年が始まる。

  • 2~3年、またはそれ以下の年数で次々に代わる皇帝。
    しかし、なりたい人が部下の推薦という形で立候補しては、謀殺されてしまうことの繰り返しに、一体帝国に人材はいないのか、と思うほどだったが、この巻でようやく能力とやる気に恵まれた皇帝が現れる。

    なのに。
    やっぱり謀殺されるのだ。
    やる気があって才能のある人は、往々にして厳しい。
    自分に厳しいだけではなく他者にも厳しいとなれば、それに応えることのできない人には鬱屈が募る。
    だから謀殺される。

    そうなると今度は、殺されないように人気取り政策に走ることになる。
    小手先のそんな政策では帝国の危機は乗り切れない。
    能力のない皇帝はやっぱり殺される。

    もちろん謀殺されなかった皇帝もいる。
    やる気も能力もあったが、疫病に斃れた人や、戦地に向かう途中に高齢で斃れた人や、落雷が直撃した人。
    ここまでくると、これはもう神の意志かと思う人が出てきてもしょうがない。
    でも、まだ何とか帝国が帝国として存在できていたのは、辛うじて社会的なシステムが生きていたことと、志半ばで倒れたと言っても全力でローマ帝国の再興に努力した皇帝のおかげというのは確かにある。

    そしてついに、迷走する三世紀最後に、20年もの長きにわたって帝位に就くことができた皇帝が現れる。
    彼の出現は帝国にとって吉だったのか、凶だったのか。
    次巻が楽しみである。

  • 現時点で家にある本シリーズ完読、この先買うのでしょうか?自分とももうお一人にともどちらともつかぬ呟きです。
    ようやくキリスト教の本丸の議論に入ってきて、この先どうなる?という面白さがあります。ただまぁこの作家のことだから、あんまり期待できないかなぁ、と思ったりして、読み続けべきか否か、ちょっと迷うところでありまする。

  • 迷走、分断、混乱…。もう強くて寛容なローマは見られないのかな。後ろ4分の1はキリスト教がテーマ。こちらの方が興味深かった。

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