- Amazon.co.jp ・本 (235ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101186375
感想・レビュー・書評
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ある意味、これは箱庭小説とも言えるのではないだろうか。
「家族」という箱庭を出て、少女が「個人」へと成長していく物語。
または「物語」という箱庭を出て、人生とか将来とか、そういう「現実」のようなものに踏み出していく物語。
というふうに考えると「臨床心理士」とか「セラピー」とかいうフレーズも思惟的に思えるのだけれど、それは筋違いだろうか。
たとえば63ページの、「ってそんなの興味とも言えない単なる思いつきだけで(…)受験して合格する。認知行動療法に興味を持つ。私は臨床心理士になりたい。」の辺りみたいな、短い平叙文をいくつも並べる書き方が気になったのだけれど、これは意図的なのだろうか。
なんだかまるで、小説のプロットの走り書きそのままみたいに思えて、もしかしてこれはメタフィク小説なのかな、とも思ったりした。
語り手である香緒里はこの物語の時系列にはいなくて、これは別の地平線上にいる彼女が書いた小説なのだ、という。
家族という箱庭を出た彼女が『骨』の次に書き上げた小説がこれであり、そこには彼女の半身のような弟のことが中心に描かれている。
だからその弟を象徴づける「ビッチマグネット」という言葉を、この小説のタイトルに彼女はしたのである。
…というのはちょっと飛躍にすぎる解釈だとは思うのだけれど、
「物語が物語を飲み込んで、時に想わぬ飛躍も起こる」のだから、あながち間違いだとは言い切れまい。
というのはちょっと、強弁にすぎるかもしれない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ストーリーにすると特になんてことのない話だが、それを面白くするのがこの舞城。
…まあ、そこまで面白くはないんだけどね。 -
2016年2月29日読了。
2016年72冊目。 -
単行本でも読んでいたんですけれども、今回もう一度読みたくなって文庫版買っちゃいました…。
まあ、内容は知ってはいたんですけれども、うーん…そこまで、つまりは再読したくなるくらいの内容ではなかったかも…しれませんけれども、舞城氏の作品で女性主人公というのはなかなかに珍しいものがあると思われ、そこは興味深く読めたような…気が致します。
ヽ(・ω・)/ズコー
でもまあ、氏の純文学系の作品はやっぱしどことなく説教臭い感じがするんですよねぇ…でもまあ、笑えたからいいか、という気がします。
確信犯かどうか分かりませんけれども、会話の応酬もなんか笑えるように書いてあるような気がするんですけれどもね…ラノベ的? とも言えるような…けれども、軽い口調の会話の中にもなんか人生の核心を突いたやうな! 一言とかがあって痺れましたねぇ…。
という感じで実は割りと楽しめたかもしれないです…さようなら。
ヽ(・ω・)/ズコー -
良い方の舞城節炸裂。ここまでたいしたことが起き続けない構成で1つ書き上げる力量を感じさせる意欲作。
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全体の1/4辺りまでは、ウウン……と思いながら読んでいたけど後半はけっこう面白かった。が、ラストにでかい文字で「キモッ!」が来た瞬間はやはり頭を抱えそうになった。
舞城さんの作品を読むのはこれが初めてなので分からないのだが、こういう文体、手法を取っている書き手なのだろうか。それともこういう性格をした主人公だから?
ストーリーにいろいろ盛り込みすぎな気もしたが、ラストに向かうにつれ、母や弟、そして主人公自身が変化、成長していく様を読むのはとても楽しかったし、上手いと思った。たまにハッとさせられるブロックがあって、なんだか憎めない作品だ。 -
正論は他人を正すためにあるのではなく、
自分の周囲を確かめるためのもの。
正論で道が開けるわけじゃあない。