それでも、日本人は「戦争」を選んだ (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101204963

感想・レビュー・書評

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  • 日中米欧の浩瀚な情報には発見や驚きがあり、大変参考になる。

    しかし個人的にこれは歴史書とは言えないと思います。浅いです、内容が。理由は視点の一面性と情報の恣意性だと思います。
    特にWW1から太平洋戦争に至る議論に顕著です。

    基本的な話の流れは陸軍が中国への謀略を企て、英米との関係悪化を招いて開戦に至る、という流れです。
    陸軍は基本一貫して中国侵略の徒です。でも陸軍の全員がそうだったのか。違うでしょ?

    日中戦争で南京が陥落し、そこで出て来た休戦話が頓挫して反発したのは陸軍参謀本部だった。この時蒋介石がトラウトマンを介して行った停戦提案を蹴ったのは陸軍ではなく政治家の近衛です。同時に海相の米内も停戦に反対した。

    陸軍の東條は日米対立回避のために岩黒を対米交渉に送り込んだ。岩黒はその目的を果たして日米了解の諸条件を明確化した(それを潰したのが松岡であることを、松岡贔屓の著者は書かないが)。

    陸軍にも様々な人間がいた。海軍も政治家も官僚もしかりです。それら関係者の思惑が様々に絡み合い、しかし結果として戦争は起きた。それを丁寧に解きほぐすのが歴史を紐解く作業ではないですか?全般的に視点が一面的すぎて軽さしか感じない。

    この本の内容は部分的に著者と高校生との対話形式です。著者が質問し、生徒に考えさせる。そこまでは自然です。しかしその後に著者は言います「ではそろそろ答えを言いましょう…」。
    答えってなんですか?あるのは解釈だけでは?
    複雑に絡み合った歴史に明快な答えがあるとは、私には到底思えませんが。

著者プロフィール

東京大学大学院人文社会系研究科教授

「2023年 『「戦前歴史学」のアリーナ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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