- Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101207728
作品紹介・あらすじ
複雑きわまる世界史も、たったひとつの歴史=全世界史として読めばもっとわかる、もっと面白い。歴史書一万冊を読んできた著者ならではの切り口で文字の誕生から混迷の現代までを縦横無尽に語る。古代オリエントからローマ、中国、イスラム、モンゴルの歴史がひとつに融合することで日本史の見え方も一新する。現代社会を見る目が変わる、世界史教科書の新・定番。『「全世界史」講義Ⅰ』改題。
感想・レビュー・書評
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まさに全世界史。時代毎に横軸の出来事を紹介してくれる。知らなかったのか?忘れただけなのか?驚きのエピソードがたくさんあり、非常に楽しい通史だった。
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この方の凄いところは「まえがき」にあるが…、
〜僕は、歴史を専門として学んだわけではありません。この本は、一人の歴史好きの市民の趣味が高じたものに過ぎません…〜
謙遜とはいえ、趣味で歴史本を出版できる出口氏はやはり只者ではない
巻末の参考文献も興味深いのだが…
しかし趣味でここまで読めますか⁉︎いう量である
ライフネット生命を立ち上げた時から、注目してきたが、知れば知るほど出口氏の底力の凄さを実感
また語り口も柔らかく具体性があり、わかりやすい
好奇心と好感が持てる
さてこの歴史本は約5000年に及ぶ文明の歴史を1000年(千年紀)に区分して記述されている
歴史本を読むにあたって、毎度挫折するか、若しくは挫折しそうになる(泣)
そのため、前もってどう読むかを意識することにしているのだが、今回は今までの認識と違っていたり、出口氏ならではの内容、個人的興味深い内容をピックアップしていこうと思う(そのため非常に偏っております)
※以下( )は独り言である
・「ドメスティケーション」…狩猟採集生活から農耕牧畜社会への転換のこと
外界(自然)を支配したい 人間の脳内革命
(誰しもが理解している人類の転換点である)
・史上初の帝国
アッカド(メソポタミア)
まずは共通語が必要
アッカド語が人類初の共通語
全ての人を支配→全ての生き物を支配(世界初の動物園)→過去も全て支配したい(文物の収集=図書館)
(支配欲って人類のDNAに刻まれているのかしらん?強欲な人類の歴史の始まりだ)
・知の爆発の時代
紀元前500年頃
鉄器の普及と地球温暖化
農業の生産性が上昇し、世界は高度成長期へ
社会に芸術や知識人を養う余裕が生まれる
(ギリシャ・ルネッサンス、インドでウパニシャッド、ギリシャ哲学、仏教、ジャイナ教、旧約聖書、孔子、墨子、老子など)
(生活がある程度安定し、生きる余裕ができると人類は思考を増やすのだ ま、そうだわね)
・552年
モンゴル高原
突厥が覇者に
突厥はトルコ系の遊牧民
騎馬軍隊として、西方に展開してイスラム化した集団はトゥルクマーンと呼ばれる
現在のトルコ共和国の建国記念日はこの突厥が建国した552年
(「突厥とっけつ」が現在の「トルコ」という民族名の語源 へーへー!)
・610年ムハンマドがイスラム教の布教を始める
ムハンマドは商人
税金さえ払えば、今まで通りの宗教や習俗を認めた
商人がつくった宗教のため、合理性を重んじ無駄なことはしない
このおかげでイスラム教が広く受け入れられた(この辺りからも、十字軍の虐殺振りはイスラムの人たちの理解を超える行為である)
世界中のモスクの周辺は商店街
もちろんマッカ(メッカ)も商業都市であった
イスラム軍が他国を制圧したとき、略奪や宗教的軋轢を避けるため、イスラム軍は占領した都市郊外に「ミスル」を作りそこに駐屯し、占領地を支配した
この「ミスル」がイラクのバサラやクーファ、エジプトのフスタート(カイロ)、チュニジアのカイラワーンなとで、後に大都市として発展した
(寛容で合理的な「商人が作った」ということがイスラム発展の要 各国のモスク周辺がきになる!)
・隋唐世界帝国の成立
秦の始皇帝がつくった骨組の上に漢が建国(国は違うが、国家グランドやデザイン、システムは同じ)というように、
隋の文帝が国を興し→煬帝が引き継いだ
李淵が唐を建国し→太宗が引き継いだ
そして似たキャリアのため比較されがちの「隋の煬帝」と、「唐の太宗」
二人とも兄を殺して帝位についた
二人とも高句麗に敗れた
異なる点は以下
■煬帝…黄河と長江をつなぐ大運河を開削、贅沢をして殺害された暴君
■太宗…素晴らしい時代を開いた名君、貞観政要にその名君ぶりがある
煬帝を暴君にし、自分の価値を高める作戦か
(貞観政要は内容が立派すぎる!政治的策略もそりゃあるよな…)
太宗を始めとする唐の皇帝たちは、遊牧民の出身のため、万里の長城は作らなかった
また太宗は唐の皇帝であると同時に遊牧民から「天可汗てんかがん」の称号を得る
(チンギス・カアンのカアンですね この辺りの北方民族と中国の系統は別途しっかり学びたい)
・唐の高宗(上記の太宗の後継)は大人しく体も弱かったため、皇后である武則天が活躍
この優秀な武則天をロールモデルにしたのが持統天皇である
※父が天智天皇、母は蘇我氏の直系
※天皇という称号の使用も武則天を倣った
出口氏は天照大神のモデルは間違いなく持統天皇としている(まぁ、天孫降臨の背景は同じだから…
意思ある賢い女性たちの登場だ)
・カノッサの屈辱の真実
教皇と皇帝の叙任権争い
ローマ教皇であるグレゴリウス7世は司教の叙任権は教皇にあると主張し、皇帝であるハインリヒ4世と対立
教皇グレゴリウス7世はハインリヒ4世を破門
ここで1077年有名な「カノッサの屈辱」事件が起こる
しかし、一旦譲歩したハインリヒ4世だが、後に軍を率いてローマへ遠征し、グレゴリウス7世はローマを逃れサレルノで憤死
(カノッサの出来事ばかりにフォーカスが当たっていたが、続きがあったのですね ここから十字軍に繋がっていくのでこの事実はきちんと認識しておかねば)
・モンゴル帝国
モンゴル帝国の合理的発想
① 1人の人間が面倒を見ることのできる部下はせいぜい10人ぐらいが限界
よって十進法の軍制ができ、広大な領土を支配する賢い方法
②遠方の子配置に長男を配置、末子を中央に置く遠方の子配置に長男を配置、末子を中央に置く未子相続
長男は強い存在であり、父親に対し批判的になりがち
そのため支配の難しい遠い土地に置くと言う危機管理政策があったのでは
モンゴルは、ポルトガルの喜望峰到達の20年以上も前にアフリカ大陸の姿をほぼ正確に把握していたようだ
モンゴルの戦争は常に周到な準備を行ってから進めていた模様
そのため現地の情報、中でも精緻な世界地図が発達し、国家機密のような存在であったらしい
またモンゴルの支配はイスラム帝国と同様に、帰願した人々に極めて寛容であった
(猛々しいイメージしかなかったが、考え抜かれた戦略的な部分が多かったようだ
また合理的な未子相続があった割に、親族同士の争いは多かった)
クビライ・カァン
(フビライハンと習いました)
クーデターを起こし、五代カァンになる
最初は欲で起こしたクーデターだが、最後は身内の争いを放棄し帝国全体の発展を考えるようになる
自由貿易を促進し、近代的な交易システムを構築し、経済を発展させた
また徹底した能力重視で、科挙を廃止した
(他にもクビライの行った多くの政策は見事である 「元寇」くらいしか知識がなかったのだが、実に興味深い人物であることがわかった)
モンゴルの歴史について
我々が学んだモンゴル史は、中国(明)で書かれた資料が元
異民族に対し快く思わない目線での歴史
そのため、モンゴルは野蛮で文化の破壊者というイメージとなってしまっている
現代、トルコ語やペルシャ語で書かれたモンゴル史が読まれ始め、違う事実などわかってきた模様
(そう、今回この本のおかげで知らなかったモンゴルの一面を知った さらに掘り下げたみたい!)
というわけで、さすがに全部は無理であるが、少し知識が膨らんだかなぁ
興味を持てるように上手に書いてくださった出口氏には感謝である
下巻もこんな調子で(ゆるゆる)進めていこう! -
モンゴル愛に溢れている一冊。流れるように歴史を学びつつ、第三章で空前絶後のモンゴル帝国について触れる。読み終わる頃には、モンゴルについてもっと知りたいと思ってしまった。
以下、お気に入りの箇所を抜粋。
「(人間の)楽しみは、馬の背の上、本のなか、そして女の腕のなか」アラビア人の好奇心を語る、当時のことわざ
「十進法の軍制。モンゴルの人々は、一の人間が面倒を見ることのできる部下はせいぜい10人ぐらいが限界であると認識していました。したがって、一人が10人の面倒を徹底的に見る。10人の部下を持った隊長10人をもうひとつ上のランクの人間が見る。」モンゴル帝国の合理的発想
「遠方の支配地に長男を配置する」モンゴル帝国の合理的発想 -
かつて「歴史」という「教科」は、ただ歴史的事実を直線的になぞり、いつどこで何が起きたのかを記憶するという意味で、極めて無味乾燥なつまらないものでした。そもそも「記憶」する意味や理由が、まったく理解できません。つまり、歴史を学ぶことの意義を理解しないまま、ただやみくもに教科書の記述を憶えるだけのものであったと思います。
ということは、本書を読んで、大げさに言えば「初めて」歴史を学ぶことの意義を、少なくともその楽しさを知ることができたと言えるでしょう。
歴史とは、ただ直線的に過去に起きた出来事をなぞるものではありませんでした。歴史的事実が発生するのには、すべてその理由が存在します。同時に、ある出来事を契機として、次の出来事が起こります。出来事は、別の出来事の発生に影響を及ぼし、影響をもたらす地域も大陸の遠く離れた場所だったりします。あまたの歴史的事実が相互に関連して、大きな意味での「世界史」が構成されています。その「関連」を理解することこそ、歴史(世界史)そのものを理解することでした。そして、理解するという体験は、とても楽しいものだったのです。
本書には、下巻という続きがあります。つまり今一度、同じくらいの楽しい体験ができるということでしょう。出口氏が著した『全世界史』に出会えたことは、天啓でした。早く続きを読んでみたいと思います。 -
出口治明さんの知見をもって語られる全世界史。高校時代にまともに授業をうけてなかったため、最初は撃沈→一念発起してムンディ先生の「一度読んだら絶対に忘れない世界史の教科書」→20話プロジェクトhttp://historiamundiproject.blogspot.comを受講して再読。
基礎知識があれば、膝をたたくほど面白い。
人類の歴史を知ることで、いまの自分がわかる。
人間はどういうことで躓いて、外的からの挑戦にたいしてどう思考・行動するのか。そのやりがちなミスと陥りやすいパターンは、都度納得する。
下巻はこれから。 -
超AI時代の生存戦略を読む中で、より歴史について広く知りたいと考えて、この本を購入した。人類史として、"人類"誕生から1000年毎に区切られており、人類の歴史の流れを、滑らかに書いている。ただ、歴史を熱心に学んで来なかった理系の大学生が読むには知らない用語が多く、多くの時間がかかってしまった。歴史初心者には、辞書やパソコンの近くで読むのが良いかもしれない。
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著者は言わずと知れた起業家で、世界史の研究者ではない。
おそらく趣味が高じて書いたものだろうが、それでも知識量には舌を巻かざるを得ない。これだけのものを書くのであれば、最低でもこの数倍の資料を読み込んだ上で、自分なりの視点で整理しなければならない。
著者は「文字の誕生」を世界史のスタート地点と捉えている。したがって四大文明のうち、エジプト文明にはあまり触れていない。
それでもアジアからヨーロッパまで満遍なく取り上げている。
しかも平易な言葉で書かれており、読みやすい。 -
著者の出口氏は、いまは、立命館アジア太平洋大学の学長を務められていますが、それ以前には、ライフネット生命の創業社長をされていました。元々は、日本生命で社会人を始められています。
そう言う意味では、アカデミアの世界に身を置いてきた方では無いのですが、趣味で学ばれていた歴史について書かれたのがこの本。「趣味」とは言いますが、ここまでの中身を描くことが出来ると言うのは、中々できる事ではありません。
また、元々学者の方では無いので、書き方が平易で、わかりやすいたとえもあって、理解しやすく、読みやすい本になっています。 -
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歴史もどんどん「発見」されてるんですね。イスラムとモンゴルの歴史。事実をきちんと抑えないといけませんね。誤ったイメージが浸透している気がします。