死にゆく者の祈り (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101209623

作品紹介・あらすじ

何故、お前が死刑囚に。教誨師の高輪顕真が拘置所で出会った男、関根要一。かつて、雪山で遭難した彼を命懸けで救ってくれた友だ。本当に彼が殺人を犯したのか。調べるほど浮かび上がる不可解な謎。無実の罪で絞首台に向かう友が、護りたいものとは――。無情にも迫る死刑執行の刻、教誨師の執念は友の魂を救えるか。急転直下の“大どんでん返し”に驚愕必至。究極のタイムリミット・サスペンス。

感想・レビュー・書評

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  • かつて山岳部で遭難した際に、自分と彼女の命の恩人だった親友の関根が死刑囚となり執行を待つ身となっていた。囚人の仏道を説く教誨師の主人公の高輪顕真が過去の事件に疑問を感じ再調査して真相に迫るミステリ。

    大好きな中山七里のミステリ。
    文庫化された新作、迷わず手に取った。

    教誨師と呼ばれる存在を本作で初めて知る。
    冒頭、説法を解き仏の心へと戒心した、とある死刑囚の執行が確定、執行現場に立ち合う高輪顕真の目線でリアルな終幕の場面から始まる。

    主役が教誨師という観点が斬新、かつテーマが死刑制度であることから、期待高く読み進め序盤は面白かったのだが、話が進むにつれどんどんと現実離れしてしていく感が否めなかった。 もはや中盤以降、教誨の務めではなく、殺人事件の真相解明する探偵、延いては再調査に協力する刑事のバディになっていた。これでは初めから警察小説にしてくれた方がしっくりきた作品だった。展開も終い方も私が中山七里に期待する【らしさ】はなく、個人的には事前期待を下回る作品であった。

    しかしながら、これはあくまで総括。
    作中、脳裏と心に残るフレーズ・セリフがあった。

    とある弁護士が言った。
    「死んで償えるものより、生きて償えるもののほうが大きいはず」

    高輪顕真が言った。
    「僧侶として相応しくない行為を罵られるのは怖くない。人として報いるべきを報いなかったと罵られる方が応える。」

    生きるということはそもそもしんどいと思っている。その過程で人との関わりは不可避だ。時に自分の選択や決断、発言や行動が誰かを救い支えることもあれば、傷付け軋轢を生むことだってあるだろう。だからこそ喜怒哀楽を振るわせながら、人間らしく、土臭くいきたい。綺麗でなくていい。いや、きっと美しくない。冒したならば償い報える自分でいたい。なので、少なくとも私はこれからもしんどいだろうと思っているし、それで良い。私の死にゆく者としての生き様であり祈りだ。



    本作のテーマは死刑制度であったが、同じテーマで既読の東野圭吾の『虚ろな十字架』早見和真の『イノセント・デイズ』高野和明の『13階段』は名作だったことを思い出し、感慨に耽る。こんな回想が出来るのもまた、読書の副産物であり醍醐味だ。本当に読書は面白い。好きだ。大好きだ。

  • 面白かったです。中山七里さんらしくただの推理ものではなく、死刑制度や貧困問題、教誨師など社会問題も絡めたミステリーが秀逸。
    真犯人や真相を探る一方で、死刑とは何か信仰とは何か、色々と考えることのできる作品でした。

    内容は、タイムリミットの迫る死刑囚の冤罪を、大学時代の友人でもあった教誨師の僧侶が晴らしていくというストーリー。
    結末はあまりにも上手くいきすぎている感は否めませんでしたが、全体的に流れも良く最初から最後まで失速することなく読み終えました。

  • 久しぶりの中山七里。
    主人公の教誨師は、浄土真宗の僧侶。教誨師とは、服役中の囚人に道を説き教え導く人たち。
    彼は、担当する拘置所で 大学時代の同級生で山岳サークルの中間、しかも登山中の事故時の命の恩人と再会。彼の個人的教誨を引き受けることとなる。
    友人の過去を知る彼は、殺人罪に納得できず事件の経緯を調べ始める。そこには、罪を引き受けようとする友人らしい理由があったが、それでも冤罪を晴らすため奔走する。
    小説の中でも経文に触れていましたが、それほど深くはつながらないかな。
    ちょうどお盆に読んだので、我が家も浄土真宗で初盆。僧侶が来るタイプではないので、正信偈をあげておきました。
    目先を変えたミステリーでした。

  • 久々の中山七里先生。
    絶対面白いのが分かっているからテンション上がる(*^^*)

    教誨師の高輪顕真は、拘置所で関根要一と邂逅する。
    関根とは、大学時代のサークルで雪山登山をした時に、遭難した高輪と、脚を怪我した高輪の彼女を命懸けで救ってくれた友だった。
    その関根がまさかの死刑囚となって高輪の前に現れた。
    本当に彼が殺人を犯したのか?
    命懸けで2人の命を守ってくれた関根が、コンプレックスだった鼻を笑われたことで、カッとなって2人を殺める、、、そんなことがあるのか??

    納得の出来ない高輪は、過去に関根の調査を担当した刑事と共に真相を探る。



    教誨師なんて職業、初めて聞いたな。。。
    中山先生の作品は一冊読むだけで、勉強になるところがてんこ盛り。
    語彙は豊富で、文章能力もとんでもなく高いのに、サクサク物語が進む。

    こうなるだろうなーという読者の期待を必ずいい意味で裏切ってくる。

    今回の本もいい意味で裏切られた(*^^*)

    そしてもう一つの良いところは、中山七里先生を読めば読むほどわかるのだが、必ず登場人物に知っている人が出てくる(笑)

    今回は、あの悪徳弁護士が話の中だけ登場していた(笑)あの人だな(^^)と思いながら読み進めた。
    こんなところも、いつもとても楽しく読ませて頂いている(^-^)

    あー、また中山七里たくさん読みたくなってきたなぁ。。。

  • 死刑囚の冤罪を晴らす王道ストーリ
    しかし、その主人公は教誨師。
    本書を通じて教誨師の仕事を理解することができます(笑)

    学生時代、雪山で遭難した自分と彼女を命がけで救ってくれた恩人の関根。その関根が2人を殺害し死刑囚として収監されています。
    教誨師の顕真はその動機に不信感を抱き、その事件の真相を調査することに。
    関根は本当に二人を殺害したのか?
    関根が守ろうとしているものとは?
    死刑執行までの間に事件の真相を明らかにすることができるのか?
    という展開ですが、なぜ、この設定?
    教誨師の顕真が別に謎解きしなくてもいいのに(笑)
    顕真の執念が警察を動かし、自腹で動く刑事とともに、真相を明らかにしていきます。
    そして、死刑執行の当日...

    教誨師って辛い仕事ですね。
    教誨師・僧侶といってもやはり人間。顕真の心の葛藤・不安定さがとてもリアルです。

    お勧めです。

  • 教誨師という職業を初めて知った。
    死刑囚が命の恩人が故に、ここまで出来たのでは無いかと思ってしまう。また、看守や刑事などの協力があってのこととも思う。反対側の立場にいたら迷惑この上無い行動だと断罪しそう。仏典の解釈や教誨師の暴走行為にはちょっと引いてしまった。
    結果的に、文屋刑事の取調べ時の違和感と正義感に助けられた。冷静に事実を積み上げて犯人を追って行く姿勢が良い。最後の展開は伏線回収もあり、想定の範囲だった。

  • 囚人に仏道を説く教誨師の顕真は、講話の最中に死刑囚のなかに大学時代の同期を見つける。
    その無二の親友が、人を殺したということが信じられず調べ出す。
    死刑執行直前に事件の真相がわかったとき…。
    やりきれない思いを感じながらも気になり読み進める。
    とても重く苦しい内容ではあった。

  • 主人公の設定。バタバタ感が逆に良かったです。

  • 受刑者を教え導く教誨師・高輪顕真が、死刑囚であり学生時代の命の恩人・関根の冤罪を晴らすミステリー。

    まあ、読み始めた時から結末は見えてしまっていたので、ハラハラドキドキはあまり感じなかった。予定調和的に都合よく物事が進んでいくし。むしろ、仏教僧でありながら冷静さを欠く顕真の不安定な心の動きが不安感を煽る展開だった。

    死刑囚の冤罪を晴らすミステリーといえば、やはり「13階段」だよな。

  • ひーぽんさん、浩太さんなどの本棚から図書館予約

    うん、面白くて一気読み

    護られなかった者たちへ
    も良かったなあ

    余り馴染みのない「教誨師」と死刑囚
    山岳部の命をつないだ友人

    刑事や刑務官や弁護士、僧侶を絡ませながら話は展開していくそして二組の男女
    「手を放したらだめなんだ」

    怒涛のラスト

    平穏は訪れるのでしょうか?

    ≪ カーテンの 向こうは死への 深い穴 ≫

    • 浩太さん
      教誨師という職業がこの本で知られたので良かったですが、
      命を救われたことで、あそこまで頑張れるのがすごいですよね。
      いずれにせよ結末は助けら...
      教誨師という職業がこの本で知られたので良かったですが、
      命を救われたことで、あそこまで頑張れるのがすごいですよね。
      いずれにせよ結末は助けられる、と思いながらもギリギリまで
      惹きつけられるのは、中山さんならではと思います。
      『護られなかった者たちへ』は、ちょっと重過ぎたような。
      2023/11/25
    • はまだかよこさん
      浩太さんへ

      心に響く本をご紹介下さってありがとうございました
      かなり重いです。ね。
      ぎりぎりラストで救われましたが
      まだまだ苦難...
      浩太さんへ

      心に響く本をご紹介下さってありがとうございました
      かなり重いです。ね。
      ぎりぎりラストで救われましたが
      まだまだ苦難の道は続きますね

      わざわざコメントありがとうございました
      2023/11/26
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著者プロフィール

1961年岐阜県生まれ。『さよならドビュッシー』で第8回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、2010年にデビュー。2011年刊行の『贖罪の奏鳴曲(ルビ:ソナタ)』が各誌紙で話題になる。本作は『贖罪の奏鳴曲(ソナタ)』『追憶の夜想曲(ノクターン)』『恩讐の鎮魂曲(レクイエム)』『悪徳の輪舞曲(ロンド)』から続く「御子柴弁護士」シリーズの第5作目。本シリーズは「悪魔の弁護人・御子柴礼司~贖罪の奏鳴曲~(ソナタ)」としてドラマ化。他著に『銀齢探偵社 静おばあちゃんと要介護探偵2』『能面検事の奮迅』『鑑定人 氏家京太郎』『人面島』『棘の家』『ヒポクラテスの悔恨』『嗤う淑女二人』『作家刑事毒島の嘲笑』『護られなかった者たちへ』など多数ある。


「2023年 『復讐の協奏曲』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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