誘拐犯はカラスが知っている: 天才動物行動学者 白井旗男 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.14
  • (3)
  • (10)
  • (24)
  • (4)
  • (3)
本棚登録 : 153
感想 : 18
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101212913

作品紹介・あらすじ

誘拐された人質を発見するにはカラスの後を追え? バラバラ殺人事件を解く鍵はリスの生態? 密室殺人犯を教えてくれるのは馬? 警察犬ハンドラー原友美が頼りにするのは、大学の先輩である白井旗男。東京郊外の「動物屋敷」に隠棲する天才動物行動学者が、知られざる動物の習性に関する知識を武器に、次々と難事件を解決する新感覚ミステリ! 二人の決め台詞は「動物は嘘をつかない!」

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • けっこうおもしろかった。初読の作家さん。メインキャラの白井氏より、白井氏の大学時代の知り合い(知り合い?だったかしらんが同窓生)の警察犬ハンドラーの原が主人公に思えてくる。一人、関西人異邦人の原友美。関西弁というか神戸系っぽいような、結構オセンティックな発音が頭に浮かぶ、いい話し言葉なので、作者は関西人だろうか、といらんことも考えてしまう。動物が専門ではなさそうだが、良いトピックを拾って面白く設定つくっているな、という印象。
    カラスの貯食を利用した事件解決。文鳥と鳩の審美眼を利用した事件解決。警察犬の嗅覚とニホンリスの習性で事件解決。セミの習性で解決。オオムラサキ、ツバメ、イヌワシ、カモシカ、イノシシで解決。キツネで解決。馬で解決。
     超個人的に気になったのが、
    p127 「靴底に記されたサイズは25.5。これなら俺にも履ける。」
    って、足ちっさ!
    ジョーイ・トリビアーニかっ(古っ)
    犯人と被害者の靴サイズが同じで、犯人が被害者の靴を履いていたために、足がつくというネタ。
    ちなみに私26です。


    決め台詞は「動物は嘘をつかない!」


    と、書いていましたが、
    ほんとのところは
    動物も嘘をつきます。
    おのおのがたご注意めされよ。

  • 不思議な本だった。文章にクセがあり、関西弁が何だかおかしい、ストーリーもそんなに上手くいかないのでは?という展開。でもいつのまにか動物の行動を学び、それなりに人物にも愛着が湧き、読後感も悪くない。

  • ひきこもりだが、天才的な動物行動学者の白井旗男。
    世間には疎いが、あらゆる動物の知識に長けた彼を中心としたミステリー。
    警察犬ハンドラー・原友美と共に、難事件の数々に挑む。

    誘拐された人質とカラス。
    バラバラ殺人とリス。
    密室殺人と馬、などなど。

    様々な動物の余り知らない生態や習性が、謎に満ちた事件を解決に結びつける。
    そして、彼が引きこもるのは、両親の失踪に関係があった。

    『決して、動物は嘘をつかない!』

  • 動物行動学の知識が面白い。推理はちょっと強引な綱渡り感があるけど、軽い読み物として良かった。

  • 「どん詰まり」という言い方がよく出てくるという印象

    論理があんまりわかってない所もあるから、再読が楽しそう

  • 【感想】
    ・このミステリは「こう」と明確な推理はしない。動物の行動を根拠に確率を少しずつ上げてゆき絞り込む。最後まであくまでも蓋然性の問題であり確定はしない。このパターンは新しい気がする。
    ・著者は関西の人みたいやけど、作中の関西弁がなんかヘン。関西弁に「ですます」をつけてるからかな? もともと関西弁、特に大阪の商人言葉はそれ自体で敬語を含む用法が可能やから。

    【内容】
    ・誘拐犯が死んで誘拐された人の居場所がわからない。
    ・鳩や文鳥の絵画鑑賞能力が盗まれたシャガールを見つけ出す?
    ・バラバラ殺人で身許不明の腕や足から犯人を追う犬たち。リスやアリの行動をヒントに。
    ・現金輸送車襲撃犯はつかまったが現金の隠し場所が私らない。日本最大級の蝶オオムラサキの羽が手がかりになるか?
    ・乗馬クラブで偽装自殺か。

    ▼簡単なメモ

    【移動通信鳩】通常の伝書鳩が一方通行の移動しかしないのに対して移動通信鳩は往復する。一方を餌場とし、もう一方を寝床とするらしい。
    【イヌワシ】警戒心の強いハンター。
    【イノシシ】山登り好きですが、イノシシについては一見かわいげがあるが、山で出会ったら大ケガ、最悪生命の危険を覚悟する必要があると教えられてました。時折映像で見ますが、たしかにあの突進力は脅威ではあります。それに、意外と敏捷にターンしてくる。
    【オオムラサキ】国内最大級の蝶。縄張り意識が強く、メスを探す目的もあってエリア内を巡回するが視力が弱いのでツバメだって追いかける。
    【河童】白井にとってはいないと決まったわけでもなく、非科学的でもない。
    【カモシカ】臆病だが好奇心旺盛で人の行動をじっと眺めてたりする。
    【カラス】カラスはコミュニケーションする。カラスの大群に友美は《生まれて初めて鳥に恐怖を感じた。》p.31。礼文島を歩いているときある沼か池の周囲がカラスのたまり場で恐ろしい数がいてやはり恐怖を感じたことがある。
    【カレンダー】白井の屋敷にはカレンダーがたくさんある。
    【岸本】友美の鑑識課での上司。
    【シナントロープ】人間に寄り添って生きる動物。
    【白井旗男】友美の動物学科での先輩。三十代後半。身長百八十センチほど。顔立ちは整っている。乾燥肌で冬は痒い。穴子が好物。かつては明るく外交的で将来の教授候補だったが現在は他者と没交渉。動物園のような屋敷で暮らしている。奇矯な格好をしていることが多い。両親がアルゼンチンで行方不明となっていて調べている。
    【スカベンジャー】腐肉をも食す雑食性の生物。
    【ツバメ】意外に弱い鳥。スズメに巣を乗っ取られることすらある。弱さゆえの「ツバメ型繁殖」というのは人間を用心棒にする生態。カルガモなども。
    【動物の行動】動物の行動には必ず理由があるというのが白井の信条。
    【土橋源造】捜査の鬼。通称「ハシゲン」。
    【友美】原友美。警察犬を操るハンドラー。二十八歳。学生の頃モデルにスカウトされることがあったルックス。大阪出身で関西弁。相棒はジャーマンシェパードドッグのビスマルク号。《一度こうと決めたら岩おこしより硬い》p.19。半ば引きこもり状態の白井をなんとか社会復帰させようとしているお節介だが、その能力を惜しむとともにおそらく気があるからのようだ。縁起かつぎが好きで「コアラのマーチ」占いや「おっとっと」占いをちょっと気にする。
    【化かす】《本当はレナードが我々を化かしたんじゃない。我々がレナードに化かされる能力を備えていたんだ。》p.319
    【鳩】ギリシャ神話ではアフロディティの聖鳥なんだとか。
    【ビスマルク】友美の相棒でジャーマンシェパード。のんびりした性格。クラッカーが大好き。
    【マックス】白井が飼っているビーグル犬。スヌーピーがたしかビーグルだったと思う。小型だが純然たる狩猟犬。
    【眉毛コアラ】「コアラのマーチ」で時折出てくる絵柄。
    【盲腸コアラ】眉毛より珍しいというウワサ。

  • うーん、何というか、動物に絡めて捜査する必然性がイマイチ伝わらなくて、動物知識も頭に入ってこなかった。後半は流し読みになってしまった

  • 何だろう…全てにおいて中途半端な感じだけど、肩が凝らない読み物っていう感じかな…

  • 引きこもりの動物行動学者、白井旗男の捜査協力で事件解決を図る連作短編集。
    安楽椅子探偵のように現場に行かない話もありますが、大抵は現場へ赴き、残された手がかりから真相を探り当てます。
    行動をともにするのは(駆り出しに来るのは)警察犬のハンドラーである原友美。大学時代の後輩です。
    周到なのは、白井の飼い犬にも嘱託警察犬として訓練を施し、犬に捜査協力を求めるので飼い主にも来てほしい、という断りづらい体裁を整えていることです。やり手ですね!
    さらには鑑識課の上司と捜査一課のベテラン刑事も巻き込んで、白井の捜査協力に道筋をつけてしまいます。
    そこまでするのは事件解決のためもありますが、ほかにも理由が。白井の両親が失踪し、手を尽くして調べたものの手がかりがないのです。
    すっかり引きこもってしまった白旗に外へ出てもらいたい、類いまれな能力を捜査に役立ててほしい、その一心で毎回迎えにくる友美をお節介と疎みながらも、次第に乗り気になっていく白井の様子が、読んでいて実に爽快でした。
    動物の行動から導き出す事件の真相は驚きに満ちていて、扱う事件も犯人が死んでいる誘拐や宝石強盗なので、現実では白井のような人がいなければ迷宮入りになるのかもしれません。
    両親の失踪にも、最後にはひとつの結論が示されます。そのあとの彼らも、やっぱり一緒に捜査するんだろうなと思えました。ぜひ続編を希望します。

  • 動物の行動が事件の謎を解くヒントになる、そんな推理小説

全18件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1959年兵庫県生まれ。関西大学卒業後、コピーライターを経て、98年『ダブ(エ)ストン街道』で第8回メフィスト賞を受賞しデビュー。2003年『石の中の蜘蛛』で第56回日本推理作家協会賞長編部門を受賞。

「2022年 『我が尻よ、高らかに謳え、愛の唄を』 で使われていた紹介文から引用しています。」

浅暮三文の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×