- Amazon.co.jp ・本 (349ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101247137
感想・レビュー・書評
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疲れました。
歴史小説は難しいなあ。
ただ、上辺だけ習ってきた小学校の歴史に味わいが出てくる。
とはいえ、私にとって藤沢周平といえば歴史小説ではなく時代小説だなあ。
それも藤沢周平らしさが出ているんではないかと感じられる市井物がいい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
下巻は家康が天下を取るに至る過程を上杉景勝、家臣の直江兼続の目線で物語は進んで行きます。盟友の石田三成をはじめとした西軍側の武将たちの動き、特に関ヶ原の各々の武将たちの判断はリアリティがあります。兼続を支えた草たちの戦後も感銘受けます。藤沢周平はやはり面白いです。
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戦国末期、舞台はいよいよ関ヶ原へ。 なぜ上杉は関ヶ原へと参戦しなかったのか。 兼続と三成の行く末は・・・ 下巻の主人公は、正に兼続。 上杉の名を残すか、義を貫くか。 景勝の決断に従うのか否か。 石田も上杉も、機略ではなく天下の勢い、欲に狂奔する人の心に敗れる― 人の心をつかんだがゆえに、家康は天下人となる―
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直江兼続視点はとても面白かった。
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上杉家家老・直江兼続を主人公に、豊臣から徳川へ移って行く時代を描いた上下二巻の歴史長編小説です。
兼続が使う山奥の村に住む草(忍者)の一族が伏線として登場します。司馬遼太郎(『梟の城』など)を意識していたのでしょうか?そんな作りも有って、どうしても司馬さんとの比較してしまい、そうなるとどうも弱いのです。主人公が時代の中を闊歩しないし、何故上杉は関が原に反転した徳川軍を追走しなかったのかという一番の謎に対する答えも少々唐突で弱い気がします。
司馬さんが俯瞰的視点で(正しいかどうかは別にして)独自の「史観」を作り出し、その中で主人公を闊歩させたのに対し、藤沢さんの歴史小説の視点は主人公の目の高さに終始する為、事実に沿って丁寧に描かれているものの、時代全体が見渡しにくく、躍動感に欠ける気がします。それを良しとする人も居ると思いますが。。。
やっぱり藤沢さんの真骨頂は歴史小説では無く時代小説なのだと思います。 -
いよいよ天下分け目の関ヶ原へ。
新潟県、山形県、福島県にゆかりのある人は、知っている地名が出てくるはずなので、よりイメージがわきやすいかもしれません。
戦に備える描写では、馬でこんなに長距離を移動したの?なんて軽く衝撃を受けました。
石田三成が敗戦の将になってから死ぬまでの描写が少し物足りない気もしましたが、メインが上杉だと考えると仕方ないのかと思いつつ。
兼続が得られた情報量を表現するためにあえてあっさり描かれたのか。
上杉らしさが一貫していたのも読んでいて気持ち良かったです。
すごく読み応えがありました。 -
後世の人間にとっては、歴史というのは、すでに確定したものとしてしか見れないので、それを見ながら、なんて馬鹿なことをしたんだとか、先見の明があるとか言っているわけだが、その渦中にある人間にとっては、先の読めない、右にも左にも転ぶかもしれない中での判断を強いられているわけで、とくに戦国時代から徳川時代にかけての武力を伴う政治闘争の時代にあっては、それこそ上杉のような有力大名は、常時生きるか死ぬかの決断を迫られていたに違いない。
固定した歴史でなく、さまざまな可能性に満ちた動いていく時代のなかでの政治的な決断の有様を、この作品ではリアリティをもって描いている。 -
2018.10.12(金)¥165+税。
2018.11.3(土)。 -
家康の描写が印象的だった。
「おのれの欲望をむき出しに、義を踏みにじて恥じない人物に対する憤りが、兼続と石田を固く結びつけたのである。(中略)むろん家康は、義で腹はふくまらぬと思い、家康をかついだ武将たちもそう思ったのだ。その欲望の寄せ集めこそ、とりもなおさず政治の中身」
「ひとの心に棲む欲望を自在に操ることに長じた家康のような人物こそ、天下人の座にふさわしい。」 -
藤沢周平作品2作目。
「蝉しぐれ」では、名もない青年の人生と、幼少期彼のそばにいた女性の人生を切なく描いていた。
今回もそういう感じかな?と思って読み始めると、あれよあれよとどんどん歴史の登場人物が登場する。
上杉謙信くらいは知っていたけれど、その子孫 上杉景勝や直江兼続は、すでに私の頭の中引き出しの奥の方にしまってからだいぶたっていた。
勉強したはずの歴史がすっぽり頭から抜けた状態で読み進めていったので、ペースがつかめず苦労しました が、やっぱり読後感の面白さは「蝉しぐれ」同様。
関ヶ原の戦いの少し前から、景勝と兼続、そして兼続の草たちが裏に表に、時代が変わりゆく姿をしかと見極めながら、上杉家の存続をかけて外交を重ねる。
その中で、時の人豊臣秀吉や徳川家康と言った名前ももちろん登場するが、
兼続と親交を持つ石田三成の姿がとても鮮やかだった。
豊臣家のために働く姿は、勇ましく屈強な印象を与えない。
頭脳をもって豊臣家繁栄を模索しつつ姿は、終盤になればなるほど痛々しくなる。
その石田の心許なさを物語るような、まいの笛が頭の中で響くようだった。
歴史にはない架空の人物として、牧静四郎と妹のまいが登場する。
彼ら2人は、上杉でも豊臣でも忍びでもないから、縦横無尽に地を行き交い、
物語に広々とした地形を表してくれた。
静四郎が出会う草の娘うねとの恋も、ほんのりと印象に焼きつく。
◼︎一つの時代が終わり、新しい時代が始まった、その区切られた瞬間の人々の模様が、ひとつひとつ丁寧に描かれていた。読んでいくうちに直江の気持ちに共鳴したので、最後には少しやりきれなさが残った。そういう気持ちにさせてくれる小説でした。