タダイマトビラ (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 101
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  • Amazon.co.jp ・本 (229ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101257129

感想・レビュー・書評

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  • ワンコインでトベる。タダイマトビラの、村田沙耶香のコスパの良さ‥‥

  • 母親がいやいや子育てしてる家庭の
    女の子が主人公
    カゾクヨナニーとは・・・
    著者の独特な世界を堪能できる作品
    まぁでもこういう著者の作品は好みが
    分かれるだろうなとは思いますが
    著者の世界は好きです

  • 2011年の著書

    村田さんの最近の作品を読んでいたが過去に何を書いていたのか知りたく少し古めのものを手にとってみた。

    ……揺るがない!

    親に愛されない子供の家族欲と世の中の家族観を描いていると思って読みすすめたのだがラストは揺るがない村田ワールド。

    この世界の矛盾から逃げるのには細胞に戻ったり原始にもどったり宇宙人になったりするしかないのか?
    途方もない絶望を想像を絶する表現でみせてくる。ついて行くのが精一杯な村田ワールドだけど他の作品も読みたくなるのは不思議。

  • 「タダイマトビラ」
    これは難しいことを。


    恵奈の母親は母性に倦んでいた。家のことは作業として淡々とこなすだけ、恵奈と弟の啓太に愛情を注ぐことはない。そんな母親を避けるように父親は意図的に家に居なくなり、啓太は、より母親の愛情を求め、そして、失望していく。そして、恵奈は「カゾクヨナニー」という密やかな行為で、抑えきれない「家族欲」を解消する。


    恵奈は、高校に入り、家を逃れて恋人と同棲を始めたが、お互いを家族欲の対象に貶め合う生活に恵奈は気づいてしまう。この時の恵奈が受けた衝撃はとんでもないものだっただろう。恋人が恵奈に求めていたものは啓太が母に求めていたそれであり、そんな啓太を恵奈は鬱陶しがっていたわけだから。恋人との関係は啓太との関係よりある種濃いのだから、受けたインパクトはとてつもない。


    テーマは家族。人が帰る所は本当に家族であるのかを現実的に幻想的に、そしてホラーチックに書き上げているのは、流石と感じる。ただ単に現実的に書くだけでなく、現実的だからこその怖さがあったり、理想的な家族との乖離を幻想的な手段で終結させたり、一般的な家族がテーマの小説とは違う。蟻を潰す辺りはホラーなんだけど、結局この行為が、家族とは何かに対しての解になっていて、扉に続いていく。ここのくだりは印象的。


    また、個人的には表現の仕方が凄いなと。ニナオとのカゾクヨナニーという表現によって、一気に「ああ、これは普通の家族ものじゃないな」と。オナニーという性欲解消を家族に対する欲の解消という観点で表現し直すのは凄い。


    村田沙耶香とは、王道になりがちなテーマを変わり種にしちゃうな、と改めて感じた一冊。

  • ありがちなネグレクトの話かなと思わせてからのラストシーンは衝撃的。ある種の救いなのかも。
    ラストシーンで執拗なほど「かわいい」「愛しい」との言葉か使われているのが印象的。これらの感情はある意味で自身とは距離を置いた言葉でもあるんだなと思わされた。

  • 読書備忘録634号。
    ★★★★。
    村田さんの初期作品。
    作者の見ている世界は凡人とは異なる。ただ、ギンイロノウタより遥かに分かりやすかった。理解できた。笑
    "ただいま"という言葉。普通に考えたら家に帰った時に使う言葉。じゃあ、家とは?家族とは?
    ネグレクトの家庭に育った主人公が"ただいま"と言いたかった世界とは?

    主人公、在原恵奈。小学校から高校生までの成長過程で"ただいま"を見つける物語です。ちょっと悲しい。

    恵奈の家庭は両親と弟の4人家族。夫婦関係は既に崩壊しており、母の芳子は食事を作ることだけを淡々とこなす。
    そんな家庭に育った恵奈は、自分の部屋のカーテンにニナオという名前を付けて、カーテンになでなでしてもらうカゾクヨナニーという行為に耽る。ニナオはオナニーの逆読み。小学生ながら欲望を処理するのがオナニーと理解した恵奈は、理想の家族という欲望を処理するために、カゾク、ヨクボー、オナニーとくっつけて、カゾクヨナニーと。笑
    ちなみに性欲を処理するオナニーはセイヨナニーと。

    恵奈は本当の家族を作るために連れ合いを探す。女子高生になった恵奈は、学校の夏休みの間、大学生の浩平と同棲するようになる。最初は理想の家庭に向けてまっしぐらに思えた生活も、徐々に違和感を感じ始める。
    ふと気づく。浩平も理想を追い求めて、私を使ってカゾクヨナニーをしていると!村田さん!ぶっとびです!
    そしてたどり着いたゴールは、家族はオナニーであり、真実ではない。家族から解放された世界、すなわち家族制度が出来上がる前の原始の世界が、"ただいま"の世界であると。
    ラスト在原家の玄関のチャイムがなり、家族はただいまの世界に帰っていく・・・。
    え???玄関の外はどこ?お父ちゃんと弟くんはどうしちゃったの?
    謎のラストでした。笑

    やはり村田さん。村田さんがどういう成長過程を経験してきたらこうなるのか、本人にしかわかりません。
    クレイジー沙耶香ここにありです。

    さて私も、なんたらヨナニーに勤しみます!

  • 小説でこのテーマを扱うのは矛盾していると思うし、よく書く気になれたな、と思う。主人公の行動原理にも致命的な矛盾があったため、オチは結構早く読めてしまった。 主人公は自分では直接そうとは語らないが「自分が規定される」ことがとてつもなく嫌なんじゃないか、と思う。人間はただこの世界に生まれてきて、生まれてきたという性質以外何一つ、本来ならば持ち合わせていない。それなのに、年齢や性別、趣向などなどを「言葉」によって強制されている。

  • 欲望を自分で処理すること全てをオナニーだと思い込む少女。
    ショクヨナニー、セイヨナニー、
    そしてカゾクヨナニーと自身の欲望を自分自身で工夫して処理するようになった。
    カゾクヨナニーって言葉を作ったのすごすぎる。。
    怖いけど。。

    この少女も世間一般的な家族になりたいと本当は思っていたはず。
    それが叶わないことが苦しくて、カゾクヨナニーを始めて脳を騙し続けていたために、その形に脳が洗脳されてしまったのだろう。

  • カゾクヨナニーって言う発想もだいぶぶっ飛んではいると思うけど結末がまたぶっ飛んでた。
    普通に愛情のない毒親に育てられた話かと思ってたらこのラストはなに?って言う感じの村田沙耶香ワールドに引き込まれた。

  • 「コンビニ人間」がとても好きだったので読んだ1冊。
    メモをとり、付箋を貼りながら丁寧に読んだ。一つ一つの言葉選びや主人公の思考はどれも印象深かった。
    生命感のある物質の描写、経血や涎などの体液の描写が頻出するので、淡々とした語り口ながらもどこか生々しく不気味。

    浩平が激しくカゾクヨナニーをしてからの急展開に強く引き込まれると同時に、主人公の思想についていけなくなってくる。が、主人公が最後に見出した「本当の家族」の形や、そこへ着地していく様が不気味ながらも面白かった。
    「私たちは取り替えられていく。今まで消えてきた沢山のアリスと沢山の私が溶けた大気の中で、私は呼吸している。」

    123頁 母がインナーチャイルド療法に失敗して2人で爆笑するシーン
    主人公が爆笑したときの感情が難解で何度も読んでしまう。
    「母は私たちを虐待するのを我慢しているのかもしれない。そう思うと顔の筋肉がますます持ち上がり、笑い声は止まらなかった。」
    「人のいい母の辛抱強い努力によるものなのだろう。」
    「この家で朽ちていく失敗者の母を思うと、笑いがこみあげてしょうがなかった。」

    180頁
    「この人、私でカゾクヨナニーしてる!」で思わず笑ってしまった。カゾクヨナニー、キラーワード過ぎるな。
    恵奈、人におかずにされることがそんなに嫌か?
    ただ、確かにこのシーンの浩平のセリフは気色悪い。

    主人公の語り口による洗脳か、カゾクヨナニーする人間達の生々しい描写が原因か、
    カゾクヨナニーする浩平や伯父や家族達等、世間的にみれば「普通」なものが異質に感じてくる。
    家族だから、血が繋がっているから愛情を持たなくてはないけないのか?という疑問は共感できたし、ただ母親としての任務を果たそうとする母親も主人公の「家族」への不信感もなにもおかしなことではないと私は思う。

    「粘ついた糸」「水色」「真っ黒な穴」「ドア」
    上記の言葉が頻出だったのが印象的で、一つ一つの言葉の使われ方を確認していきたい

著者プロフィール

村田沙耶香(むらた・さやか)
1979年千葉県生れ。玉川大学文学部卒業。2003年『授乳』で群像新人文学賞(小説部門・優秀作)を受賞しデビュー。09年『ギンイロノウタ』で野間文芸新人賞、13年『しろいろの街の、その骨の体温の』で三島由紀夫賞、16年「コンビニ人間」で芥川賞を受賞。その他の作品に『殺人出産』、『消滅世界』、『地球星人』、『丸の内魔法少女ミラクリーナ』などがある。

「2021年 『変半身(かわりみ)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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