つながる脳 (新潮文庫 ふ 48-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (337ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101259819

感想・レビュー・書評

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  • 著者は,医学部出身の脳科学者であり,このレビュー執筆時点で理化学研究所チームリーダーである.

    従来の脳研究は外側から脳の機能を調べることであった.しかし著者は,実験者と実験対象の脳は双方向性のコミュニケーションで「つながる」ことが必要であると考えている.ここで重要なのは,従来のように「実験者」と「実験対象者」がコミュニケーションするのではなく,「実験者」は「実験対象者の脳」と直接にコミュニケーションすることであるという.

    また,多彩で常に変化する環境とつながっている条件の下で実験することで初めて,実験対象者の社会的生物としての行動が研究できるという.

    そこで著者は,実験対象のサルの神経細胞の活動を微細な多数の電極で記録すると同時に,行動をモーションキャプチャで記録する方法(MDR)を開発し,研究を始める.

    二頭のサルの間におかれたエサをめぐって二頭のサルはどう行動するのか,をMDRで記録し,我慢するサルという研究結果をえる.これは社会的ルールがどのように決まってくるかを考える上でおおきな要因であるという.

    さらにすすめて,ヒトのココロを研究するために仮想現実を使う,BMI(ブレイン-マシン・インターフェイス)技術を進歩させるためにECoGと呼ばれる脳の表面電極を使う,など次々と新しい方法を開発している.

    この文庫の元本は2009年の発行なので,その後の展開は今後追っていくとして,この本の最後部分には,ヒトの社会的脳機能について短い考察がある.そこで述べられている「カネよりホメ.リスペクト(尊敬)を回す社会」は本当に住みやすそうである.

    2015.5

  • 理化学研究所脳科学総合研究センター適応知性研究チーム・チームリーダーで、適応知性および社会的脳機能解明を研究されている藤井 直孝先生の書『つながる脳』。

    世間に広がる脳科学ブームにも関らず、行き詰まりを見せる脳科学研究。
    脳科学の抱えているさまざまな問題点、その内実や、著者の考える脳科学研究のあるべき姿が実直に語られている。
    どうも、僕達が触れる脳科学研究の”成果”は拡大解釈されて伝わっているようだ。

    社会的脳機能の研究については、かなり魅力的に感じた。
    研究室でのかなり限定された環境下での事象ではなくて、より自然な状態での(被験者のサルがそのためのトレーニングすら必要としない)研究も重要だと感じた。
    アバターや仮想空間を使用した研究や課題など、これからの脳科学を切り開いていくのではないかと感じたし、僕の携わるリハビリテーションの世界にも浸透してきそうな予感がした。
    良いアイデアもいただけた。

    著者の藤井 直敬先生の、人間らしさを感じる脳科学解説本。

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    【内容(「BOOK」データベースより】
    華やかな「脳」ブームの影で、研究現場は長い停滞期にあった。そもそも脳は単独に観察して評価できるのか。従来の研究前提を疑った著者はより社会性の高い環境下での脳の働きに着目する。そして、2頭のサルの上下関係を手がかりに、脳の「他者とつながりたい」本質をとらえ、更にその中核となる心の姿へと迫る―理研期待の研究者が拓く脳科学の新時代。毎日出版文化賞受賞。
    ———————
    【著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)】
    藤井/直敬
    1965(昭和40)年広島生れ。東北大学医学部卒業。同大大学院にて博士号取得。’98(平成10)年よりマサチューセッツ工科大学(MIT)、McGovern Instituteにて研究員。2004年より理化学研究所脳科学総合研究センター象徴概念発達研究チーム副チームリーダー。’08年より同センター適応知性研究チーム・チームリーダー。主要研究テーマは、適応知性および社会的脳機能解明————————
    【目次】
    序章 脳と社会と私たち
    第1章 脳科学の四つの壁
    第2章 二頭のサルで壁に挑む
    第3章 壁はきっと壊せる―適応知性の解明に向けて
    第4章 仮想空間とヒト
    第5章 ブレイン‐マシン・インターフェイス
    第6章 つながる脳
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著者プロフィール

理化学研究所脳科学総合センター適応知性研究チーム・チームリーダー/適応知性および社会的脳機能解明が研究テーマ

「2014年 『談 no.99』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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