大洋に一粒の卵を求めて: 東大研究船、ウナギ一億年の謎に挑む (新潮文庫 つ 33-1)
- 新潮社 (2015年6月26日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101260068
作品紹介・あらすじ
海で孵化して半年、その後姿をかえて川で十年、再び海へ産卵に戻る不思議な生態のウナギ。何千キロも大洋を回遊するウナギ最大の謎はその産卵場だった。海の塩分濃度、海底山脈の位置、月の満ち欠け。様々な仮説の検討の結果、浮かび上がってきたのは西マリアナ海嶺の南端部の海山域だった。広大な海で直径1.6ミリの卵を探しあてた世紀の大発見の軌跡。「世界で一番詳しい ウナギの話」改題。
感想・レビュー・書評
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ウナギ、美味しいんですがなかなか口にする機会がないです。土用の丑の日にスーパーにズラッと並んでいるのを見ても、絶滅危惧種になっている魚を(しかも旬でもない夏に)買い叩いて食べる気持ちにはどうにもなれず。。
地方出張した際に、昼食を取る場所が鰻屋さん以外存在せず、4,000円ちょいを払うコトになって、美味しかったけど複雑な気持ちになった記憶があります(笑
本著は、ウナギ研究の第一人者が、ウナギの生態を追い求め、ついには大海原で産卵直後の卵を採集するに至る研究記。
「(資源が減ったからと言って)ウナギのかわりにタイやヒラメを研究するわけにはいきません」と言い切る矜持と探求心で、ウナギの産卵について様々な仮説を構築し、それを実証していく過程はまさにサイエンスで、専門用語が飛び交う本著ではあるものの、ドラマチックで読みやすいと感じました。
研究者のモチベーションについても正直に書かれていて、成果を求めて厳しく管理することは、研究を委縮させ、目先の小さな利益を求める矮小な研究ばかりになると警鐘を鳴らしています。
つまり、著者は「ウナギ資源の減少を踏まえ、完全養殖を達成するために産卵のメカニズムを解明しよう」というのが主目的という訳ではないのです。(経済的な完全養殖も、めざしていない訳ではないでしょうが)
駆け出しの研究者だったら、資金の拠出元におもねってそういうタテマエを言わざるを得ないのかもしれませんが、著者くらいの大家だからこそ言えるというコトでしょうか。
個人的には、様々な研究が行われることは、社会として必要な余裕なんじゃないかと思います。もし、その中に将来のブレイクスルーを生み出すモノがあればラッキーでしょうし。ただ、食い詰めていく日本社会ではなかなか難しい面もあり、だからこそ、社会を食い詰めさせないための為政が必要なんだなと思います。
解説がウナギ好き繋がりでラズウェル細木さんというのもまた面白く、著者と細木さん両名が「天然ウナギはとらない方が良い」「ウナギは鰻屋で食べた方が資源保護につながる」と同意見なのも勉強になりました。
たまに目先を変えた本を読んでみたい、という場合に適書ではと思います。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
うなぎは美味しいです。大好物の一つです。出来れば月一くらいで食べられるようになりたいななんて思います。
15年くらい前からうなぎが将来取れなくなると言われ、食べるなら今の内などと駆け込んでいた人たちもいましたが、なんだかんだ今でもうなぎが食べられるのは本当にありがたい事であります。
さて、うなぎはどこで生まれてどういう生態なのか。とても謎の多い魚である事は皆さんご存じかと思います。
そんな謎多きうなぎを長年研究し続けて来た成果を、分かりやすく一冊にまとめてくれています。
これほどまでに産卵地の特定が難しいとは・・・。読んでいて気が遠くなる思いです。
無限に広い海を碁盤の目に塗りつぶして行くような作業。凄い。 -
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うなぎの話がなぜか好き。釣り師ということもあるし、地元でうなぎの稚魚を獲っているのも見たことがある、もちろん食べるのも好き。それ以上に、うなぎの卵を探す物語はロマンがあると思う。そのうなぎのロマンの第一人者の語る、うなぎの卵さがし、科学の意味するモノのお話。