山本美香という生き方 (新潮文庫 や 73-1)

著者 :
制作 : 日本テレビ 
  • 新潮社
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本棚登録 : 98
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  • Amazon.co.jp ・本 (270ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101260860

感想・レビュー・書評

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  • 現場を、現実を知る人々。
    現在進行で全ての事柄が進む時、そのジャッジが正解か不正解か、誰が判断することができようか。

  • シリアで銃撃され若くして亡くなった山本美香さんの評伝。彼女自身が2003年に取材して書いた「中継されなかったバグダッド」が再録されている。


    彼女がなぜジャーナリストを目指したのか、そしてなぜあの場所にいたのか。この本を読んでよくわかった。一人の女性の生き方を追うなかで、平和とはなにか、戦争とはなにか、ということを考えずにはいられなくなる。


    ジャーナリストなら誰でも特ダネをものにしたいといった、功名心を持っているのかと思っていたが、彼女の行動を見ていると、そんな感じはしない。キャパの恋人だったゲルダ・タローなんかは同じ女性ジャーナリストでも、功名心が前面に出てた気がする。


    戦時下で女性や子供がいかに抑圧されているのか、その悲惨な状況を伝えることで戦争を終わらせたい。彼女たちの声を伝えられるのは女性である私しかできない。その一心で、取材をしていたのだと思う。とくにイスラム圏では男性による取材は範囲が限られる。彼女の存在は戦争の前線に偏りがちな報道では目の届かない、女性を苛む苦悩、子供が受ける精神的ダメージなど、仮に戦争が終わっても続くであろう戦禍に目を向けさせることに役立っていた。


    あんまり使ったことのない言葉だけど、彼女の生き方は「崇高」だったと思う。


    彼女はジャーナリストだということで狙われ、殺された。情報統制を厳しくしたい戦争当事者たちがジャーナリストを標的にすることは今後も増えるのだろう。 彼女の志を受けつぐ女性が現れるのだろうか。
    それを期待するのは酷のような気がする。

  • 山本美香さんが、内戦の続くシリアのアレッポで取材中に兇弾に倒れたのは2012年8月20日のことだった。テレビニュースを見ながら、こんな可憐な日本女性がなぜ紛争地帯の中に?死と背中合わせの危険地帯に積極的に飛び込んで行く勇気と原動力はどこからわいてくるの?と次々と疑問が湧いてきたのを覚えている。この本を読むと、彼女の国際ジャーナリストとしての、取材に対する考え方がとてもよくわかる。報道することで戦争は止められるという信念で、最後まで体を張って報道し続けた彼女。まだまだ生きて伝えたいことは山のようにあっただろう。ご冥福をお祈りします。

  • 書店で目が合ってしまい、買うしかなかった。彼女がジャーナリストとして紛争地域で亡くなったことは知っていたので内容を受け止めるのは重いという事がわかっていたのだけれど、目が合っちゃったので読まないわけにいかなかった…。普段平和な国にいると世界のどこかの事は気にもならなくなってしまう。けれどこうやって伝えてくれる人がいることで、自分たちのすんでいる世界がどうなっているのかを知ることができる。ジャーナリストの方もまた自分の活動に様々な可能性を信じて活動している。

著者プロフィール

東洋大学ライフデザイン学部 教授(2022年2月現在)

「2022年 『地域福祉と包括的支援体制』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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