千日紅の恋人 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 58
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  • Amazon.co.jp ・本 (429ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101288185

感想・レビュー・書評

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  • やっぱり帚木さんの作品は良いなあ・・。しみじみ感じる。

    この本は帚木さんには珍しく恋愛小説だ。
    私は恋愛小説は苦手なのだが、この本は本当に良かった。

    主人公はバツ2で、父親が残した古いアパートの管理人をしている。
    管理人のほかに近くの介護老人保健施設でパートヘルパーとしても働いているので介護保険のこととか、ケアマネジャーとか認定調査とか、デイサービスなどなどいっぱい出てきて、さすが現役の医者だけあってくわしいし、私には勉強にもなった。

    その主人公だが、性格がすごく私好みで、恋愛小説の主人公にはなりにくいタイプ。
    アパートの住人は個性豊かというと聞こえがよいが、精神病だったり、夫婦喧嘩でナイフを振り回したりで、とてもほかのアパートだったら追い出されてしまうような人ばかり。

    家賃も滞納するし、部屋はゴミ箱みたいに汚くするしで、毎月の集金に行くたびに、悪口雑言なんだけど、それでも住人を追い出すことはしない。
    お年寄りが亡くなったときも、残った妻の希望叶えてアパートでお葬式をしてあげたり・・。

    そんなアパートに若い男性が入居する。
    またこの青年が変ってるんだけど、すごく魅力的なのだ。

    なんというか、この二人を見てると、「私もこういうふうに生きたいな」と思えてくるし、言葉ではうまく言えないけど、読んでると心がほわ~っとしてくるのだ。

    先に読んだ主人が「帚木さんの今までの作品とはちょっと違うがすごく良かった」と言ったが
    その言葉どおりの本だった。読後感最高♪

  • ハハキギ作品にしては珍しく?読んでいて辛い場面もなく、じんわり暖かい気持ちになる作品。

  • 『閉鎖病棟』がすごく良かったから、
    帚木蓬生2冊目いってみました。



    こっちも… とっても良かった!
    シンプルな日常の物語なんだけれど、
    登場人物1人1人がすごく魅力的。

    父親の遺したアパート“扇荘”を管理している時子と、
    扇荘に暮らすちょっと変わった住民たち。
    ほんわりする恋の話。


    それは『閉鎖病棟』でもそうなんだけど、
    帚木蓬生さんは人をいきいきと描くのがうまいと思う。

    扇荘に暮らす人たちの描写はもちろん、
    時子と母親が通うカラオケ教室の生徒たち
    時子が働く特養ホームの同僚や高齢者たち
    みんなすごく温かい目で描かれていると思う。

    柏木のおじいちゃんのお葬式の場面がお気に入り。
    “扇荘葬”をきっかけにみんながひとつところに集まって、
    住民たちを隔てていた気持ちがほぐれていく様子が。


    舞台はおそらく平成(…携帯とか出てくるし)なんだけど、
    流れる空気に平成らしさを感じさせない。
    というより平成の持つ影の部分を感じさせない、
    て感じなのかな。人の情があって。
    時子が家賃を集金して回る様子もよい。

    時子と有馬さんのドライブのシーンが読みどころ!
    すごく描写がきれいで引き込まれます。


著者プロフィール

1947年、福岡県小郡市生まれ。東京大学文学部仏文科卒業後、TBSに勤務。退職後、九州大学医学部に学び、精神科医に。’93年に『三たびの海峡』(新潮社)で第14回吉川英治文学新人賞、’95年『閉鎖病棟』(新潮社)で第8回山本周五郎賞、’97年『逃亡』(新潮社)で第10回柴田錬三郎賞、’10年『水神』(新潮社)で第29回新田次郎文学賞、’11年『ソルハ』(あかね書房)で第60回小学館児童出版文化賞、12年『蠅の帝国』『蛍の航跡』(ともに新潮社)で第1回日本医療小説大賞、13年『日御子』(講談社)で第2回歴史時代作家クラブ賞作品賞、2018年『守教』(新潮社)で第52回吉川英治文学賞および第24回中山義秀文学賞を受賞。近著に『天に星 地に花』(集英社)、『悲素』(新潮社)、『受難』(KADOKAWA)など。

「2020年 『襲来 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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