迷宮 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (205ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101289557

感想・レビュー・書評

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  • 「彼に悪気はない。彼は何も悪くない。ただ幸福な人間は、時に乱暴で恐ろしい。」

    「耐えられなかったんだ、その広大な風景の恐ろしさに。無機質で不条理なその広すぎる風景の恐ろしさに。」

    止まらなかった。こういうのを待ってた。
    暗さの中に漂い続ける危うさ。
    なぜ危うさが漂う人に人は惹かれるのだろう。

    誰の中にもいるはずなのにな、なぜみんなはいつの間にか自分の中の何かと離れ、そんなに明るくいられるの。男と女ではなく、「存在」同士で離れられない二人。

    中村氏の著作を読んで、感覚を分かっている(中村氏の本は中村氏の根本的な思考というか感覚が分かり易いから)が故に、身近に中村氏いたら、速攻で惚れそう。本当に思考が似ていて毎回鳥肌が立つ。

    なぜか、不意にあとがきで泣いた。
    こういう人が小説を書いてくれていること、嬉しい。

  • ぶっちぎりで病んでます。
    薄い本だから一気に読めたのか、人の抱える闇の先を見たくて辞められなかったのか…その答えすら迷宮入り。
    一冊まるまる陰鬱な妄想と告白で明るい部分がひとかけらもない。
    昔、密室でおきた一家惨殺事件。その遺族の少女だったとは知らずに中学校の同級生として〝偶然〟に出会う男。
    幼い頃に大人によって深く傷つけられた心を抱えたまま大人になった少年や少女の行く末。
    歪んだ心は物事を歪んでしかとらえられない。
    登場人物の殆どが〝終わってる〟人たちばかりなのに、何故かすんなりと受け入れてしまうのは、それがリアルであることを知ってるからなのか、自分自身がそっち寄りなのか…と思うと怖すぎる。冷や汗しかり。
    謎が解明されるほどに、すっきりしない感が…
    あ…物語の辻褄云々でなくて、人の闇のほうにね。
    サイコホラーとしてもミステリーとしてもどうぞ。
    今年の10冊目
    2019.4.15

  • あー、感想が難しい小説だな、、、
    なんとも鬱々とした、暗いまま淡々と、、、

    でもこういうの嫌いじゃないんだな。

    自分の裏側に燻っている暗い悪(?)の部分が妙に惹き付けられる。

    きっとまたこの作者の作品を読んでしまうだろう。。。

    何となく、昔村上春樹作品を読んだとき、同じような気持ちになったことがある気がするなぁ。何の作品だったのか記憶が定かではないが、、、

  • なんか、難しい本だなぁと思った。でも、難しい本で理解できなくてよくわからなかった、というモヤモヤした感情じゃなくて、『難しい』っていうこと自体に何か価値があるのかなと思う。
    救いのないような内容にも思えるけど、主人公は救われているし、きっと読んだ私も知らないうちに救われているのかもしれないなって思っている。
    作者はきっとずーっと苦しかったんだと思う。でも、こうやって共有して私たちに伝えてくれてうれしい。

  • 泥濘のような逡巡の中 人生に謙虚になれば、身近な希望ならすぐ見つかるのだから。何かが僕いるだろうの中で終わり、そして何も始まろうとはしていない。でも、それで別にいいじゃないか、と思っている。何故だかわからないけど、何というか、僕は今、とても楽だ。毎日が、退屈であることに変わりはない。彼女も軽く上機嫌でありながら、「退屈だね」と日に何度か吐く。Rが僕に手を振りながら去っていく夢でも見るかと思ったけど、そんな夢も見ない。Rはもう、こんな僕に興味すらないらしい。さて…、何年もつだろう?もし八十まで生きたら、誰か表彰でもしてくれるだろうか?  もし思い出して彼女がおかしくなったとしても、僕は側にいるだろう。一人で悩むのは、きっと寂しいだろうから。僕達は最高のデュエットだから。 人にあまり言えないことの一つや二つ内面に抱えてるのが人間だと思う。無理に明るく生きる必要はないし、明るさの強制は恐ろしい。さらに言えば、「平均」から外れれば外れるほど、批判を受ける確率は高くなっていく。そんな面倒な時代かもしれないけど、小説のページを開く時くらいそこから自由になれるようになれるように。共に生きましょう。

  • 期待を裏切らない作家だと思う。
    ただ正義感を振りかざしている小説は読みたく無くなった時期であったので、この人の小説に救われたんだと思う。人間の中の闇を忠実に描く。歪んだ家族、少年犯罪は実際に起こってもおかしくないのでは…と思わせるほどの設定であった。人間の心の中に眠る別の存在。ルールに従った日常生活を蔑むように、現実を壊したくなる衝動は、どんな人間でも持っているものだ。その心情心理を見事に物語に組み込み、動かしている。

  • 日常を愛し、平穏を維持し、他人を思い、笑顔でいることを、絶対的な健全さとして強要されつづけることに、なぜ疑問をもつことすら許されないのか。それらが確実に正しいことであることは理解できるけれど、時として感じる、健全で明るいことを強要される辛さに、この物語は寄り添ってくれた気がする。

  • 教団Xを読んで衝撃を受けてまた中村さんの本を読みたくなった。心の闇を、何層も深く描いている。。

  • 2024年1月9日再読。☆4から☆3へ。

    この世界は誰にとっても平等、誰が死のうと誰が生きようと、大したことなどひとつもない。

    これに尽きる。
    ミステリー部分は消化不良感。
    登場人物全員狂人。メンヘラには効いてしまいそう。

  • 僕が知り合った女性は一家殺害事件の遺児だった。迷宮事件に魅了され調べていくうちに彼の内に抱える闇が表出し壊れていく…。

    中村作品でしか味わえない狂気。中村さんて死を語り匂わせるんだけど、生に向かっているようにいつも感じるんだよねー。

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著者プロフィール

一九七七年愛知県生まれ。福島大学卒。二〇〇二年『銃』で新潮新人賞を受賞しデビュー。〇四年『遮光』で野間文芸新人賞、〇五年『土の中の子供』で芥川賞、一〇年『掏ス摸リ』で大江健三郎賞受賞など。作品は各国で翻訳され、一四年に米文学賞デイビッド・グディス賞を受賞。他の著書に『去年の冬、きみと別れ』『教団X』などがある。

「2022年 『逃亡者』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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