生きてゆく力 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (267ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101293202

作品紹介・あらすじ

貧しい家の少女たちを妓楼に斡旋することを生業としていた父への怨みと憤り。姉妹のように育った「仕込みっ子」たちの、芸妓、娼妓となってからの哀しい末路。幼子を抱え結核を患いながらも、農家の嫁として家事をこなした日々。満州で夜空の満月を仰いでは想いを馳せた、故郷の豊かな川。創作の原動力となった心に突き刺さる思い出を、万感の想いを込めて綴った自伝的エッセイ。

感想・レビュー・書評

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  • 宮尾作品のバックボーンが語られた、自伝的エッセイ。
    本書を読むきっかけは、「寒椿」を読み、これら自伝的作品にも出てくるエピソードを更に知りたいと思ったこと。その、第一部「心に突き刺さる思い出」の「堪え忍んだ貧しさ」「運命を受け入れて」は、小説とはまた違った視点からの思い出語りが郷愁を誘い、少し切ない。
    切ないだけでもなく、当時の懐かしい出来事は微笑ましくほんのりユーモラスなものもあり、特に食べ物描写!宮尾さんの故郷である高知の、美味しそうな数々の食材に心が弾む。楊梅を食べてみたいなぁ。
    晩年、長編連載に挑むにあたり、入院して徹底的に体のチェックをするとか、思いきって誘惑を絶ち北海道に移住するとか、プロとしての矜持に唸る。
    解説は翻訳家・文芸評論家の大森望さん。ちょっと意外な気がして読んだら、まさか宮尾さんとそんな関わりがあったなんて!驚きです。
    宮尾さんの軌跡を辿りながら、昭和という時代を様々な側面から見ることができた。エッセイは勿論のこと、もっと色々な宮尾作品を読みたくてたまらない。

  • 【文章】
    とても読みやすい
    【ハマり】
     ★★★・・
    【気付き】
     ★★・・・

    まともな社会福祉などない昭和初期の話。
    妓楼への斡旋業を営む父の元で育った著者の回顧録。
    登場してくる女性たちが著者も含めてみんな逞しい。

    ・結婚相手に深い愛情と奉仕を求めるならば、自分も同じものを相手に差し出さなければならない

  • 小説『櫂』の著者・宮尾登美子さんの自伝的エッセイ。
    『櫂』登場人物のモデルになった人たちの話は面白かった。
    本書で言及されていた『宮尾本 平家物語』を読んでみたくなった。

  • エッセイにより自伝小説の綾子の世間知らずの行動や反省しながらの行いが中和されたような気がする。


    流れるような文章で女性らしさもあるこの本は題名の力強さ、這いつくばるイメージとは全然違う。

  • 辛い経験をした話をする時、辛さの度合いを話す人が多いし、僕もそう。辛い経験をさらっと書いて、乗り切ってん!ほんで今はこんなことしてるねん!て楽しく言えるのは、思ってるよりすごいことなんだと思った。

  • 20190921〜0925 綾子3部作の後日譚や前後の事情が端々に。作者は仁淀川の先も書きたかっただろうなぁと、つらつら思いつつさらっ読んだエッセイ。

  • 大正の終わりに高知の遊郭で芸妓紹介業を営む家に生まれた作者。主に戦前、戦後あたりの出来事を綴ったエッセイ集。言葉遣いが丁寧であり、当時の華やかな遊郭の裏側や、戦後の厳しい状況が比較的悲壮感無く、軽やかな文体で描かれるエッセイ集であり、思いのほか読みやすかった。
    作者である宮尾登紀子さんは、当時としては恵まれた家系にお生まれになったのであろうことが感じられる。

  • 第一部で語られる幼少期の宮尾さんを囲む人々のエピソードはまさしく心につきささった。
    小説では堅い流麗な筆致がここではほぐれていて、制作背景を覗き見できたような気持ち。

  • 芸妓娼妓紹介業を営む父を持ち、西原理恵子と同じ土佐の女のエッセイ。好奇心もりもりで臨んだが、うーん。わたしには敷居が高かったようです。刺激を受けるわけでもなく、共感できる箇所もなく、感心するところもない。お勉強とも違うし。先生のありがたい昔話を拝聴させていただきました、といったところかなあ。遠かった、いろいろと。
    食べ物のくだりはどれも美味しそうでおなかがすいた。向田邦子もそうだけど、うきうきと弾む料理の描写は読んでいて楽しい。

  • 小説だと思ったら、エッセーだった。でも今までの作品の裏話的な事が解り、それはそれなりに良かったけれど面白さには欠けたかも。
    宮尾さん現在休筆していると知って、残念。まだまだ宮尾さんの作品を読んでみたいな~、復帰を願っております。

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著者プロフィール

1926年高知県生まれ。『櫂』で太宰治賞、『寒椿』で女流文学賞、『一絃の琴』で直木賞、『序の舞』で吉川英治文学賞受賞。おもな著作に『陽暉楼』『錦』など。2014年没。

「2016年 『まるまる、フルーツ おいしい文藝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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