天国はまだ遠く (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (183ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101297712

感想・レビュー・書評

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  • 2023.7.4 読了 ☆3.2/10.0

    『そしてバトンは渡された』が良すぎたせいか、そしてその後に読んだ『君が夏を走らせる』『春、戻る』が良かったせいか、この人の本は読みやすくて自分に合ってるかもしれないと思い始めた頃だったけど、どうにもこの本はページ数も薄いからか、いや、薄すぎるせいか、内容もほとんど響かなかった。

  • いま本気で死のうと思ってる人間が読む本じゃない。

    万人受けの「良さ」といった感じで優等生的な印象を受けた。75点くらいをコンスタントにとれる作家さんなのかな〜と。
    それもまた素晴らしいことではある。

    初っ端の自殺未遂シーンからツッコミどころ満載。
    そもそもその程度の薬で死のうとするなんて愚か。まあそれは主人公の浅はかさを表してるのだと受け取ったが、それにしても単なる過眠で済みました!はちょっとナメすぎだろう。
    ODしたなら嘔吐描写くらい入れてくれよ。
    他の場面でやたら吐いてるくせにODしたあと吐かせないでどうすんだよ!一番の吐きどころだろ!
    そこで吐かなきゃ人間に生まれた甲斐がねえだろ!
    それに自殺未遂までした主人公は精神科や心療内科へのアクセスが必要そうなのになぜかイマジナリー田舎でスローライフを送るだけでいつのまにか改善しているという。
    まあ鬱的な感情の原因の多くが職場であって、彼女自身というキャラクターの生まれ育ちに特に深刻な問題はないようなので、まあそういうものなのだろう。
    しかし、死にたさへの本気レベルを見誤って読むと私のようにむくれることになる。
    主人公がどうしても浅く見えてしまう。
    絵を描くのが好きで努力した過去があるらしいのに田村さんに爆笑される程度の画力しかないのは違和感。この辺りは作者の責任だろう。
    この世界には確かに才能なんてものが存在するのかもしれないが、努力だってそうそうバカにできたものじゃない。こと画業に関してはね。そこのリアリティがどうもあやふやで受け入れがたい。

    まあ文学的才能に恵まれた作家先生には泥臭い絵描きのことなんてわかりはしないのだろうが。

    全体を通して何が言いたいかって、どうも設定だけがそこにある感じがする。リアリティがあまりにもなさすぎるし、掘り下げがなくてフワッとしてる。設定のツメが甘くて人間として存在してない感じがしてしまうので共感できない。主人公のことがわからないまま終わる。真実味があったのは彼女の吐き癖だけだ。おろろろろ。

    あと前述したイマジナリー田舎にも思わず笑ってしまう。好きねえ、スローライフ。

    田舎の人たちが過剰に良い人に書かれてないのは良かったが「お客さん」である主人公には見えていないだけで、この人たちも水面下ではずっと閉鎖社会の閉じた人間関係をやってるのかなと思うとゾッとする。

    主人公が飲み会で美味しく食べた食事はきっと女の人だけが厨房に立って作ったものだし、漁師以外の生き方が自分にないことに絶望した若い少年がきっとどこかの家にいたかもしれない。
    飲み会すら店でやらないなんて、どれほどがんじがらめなんだろう。
    後片付けは誰がやるんだろう。
    いつから続いてる飲み会なんだろう。
    やめようって誰も言わないのかな。本当にそこにいる人全員が楽しくてたまらない飲み会なのかな。なら、それはいいけど。
    でもなんだか、怖いなあ。
    選択の余地がないまま「今」をひたすら暮らし続けてるみたいで。
    この集落で生まれて死ぬ人もいるのだろう。そんなことを考えるとなんともいえない気分になる。

    そして、それらの構造に対して無邪気でいられる主人公はやっぱり異邦人なんだろう。

    都会から来た主人公が田舎の上澄だけ眺めて、集落以外の生き方を知らない人々を「自然と共に生きている」だなんて形容してる様子がどうもグロテスクだ。
    結局のところ主人公はどこまでもお客さんでしかないのだ。最後に主人公は民宿を旅立つから、そこに作者が自覚的だったと理解できて大変に助かったが。
    結局、人間は生まれたところでしか生きられないから。主人公はずっとあの田舎で「異分子」でいいと思う。綺麗なところだけ眺めてればいいんだよ。
    「民宿のお客さん」として滞在することそれ自体も、主人公があくまで異質な存在であることを暗示しているように思える。

    それで主人公が休養をとって落ち着いて、自分がずっとここにいるべきでないと悟り、帰っていく。大きな変化はないけど、少しシンプルに、肩の力が抜けた状態で。

    …………うん、理解できる。お手本のように綺麗に流れ着く結末だ。
    しかし、あまりにも飲み込みやすすぎて、私のようなひねくれ者には逆に拒否反応が起きる。

    なんだかなぁ。なんだか納得できない。
    希死念慮は商業的に演出される「癒し」の踏み台ではないんだが。

    民宿行って?美味い飯食って?散歩して?綺麗な風景見て?ちょっとマシな私になれたねーって?

    そんな覚悟で自殺の描写をいれていいの?
    自殺はそんな甘いものじゃねえんだよ!!おい!!世間の人間がどれだけ思い詰めて生きてると思ってんだよ!!おい!!!

    甘いんだよ。瀬尾まいこ先生。
    冒頭、主人公の置かれている状況が「死にたい」である必要はあった?
    なんか、書かれてる死が軽いよ。希死念慮も軽いよ。
    回復がどれだけ大変だかわかってんのかよ!!
    そんなハンパに扱われちゃ困るんだ!!
    バカにすんな!!

    まあ、この感想は私の被害妄想とも言えるね。
    こういう本に癒されて頑張れる人もいるのだから。私のための本じゃなかったってだけ。
    でもここでは素直な感想を言わずにはいられなかった。それだけ。

    まとめます。

    わかりやすい。そのぶん浅い。
    きれいな物語。そのぶん見えない部分が怖い。
    大抵の人は共感しやすい。そのぶん私は共感できない。
    そして何より、いまマジで死にたい人間の読む本じゃない。本当に。

    まあでも、ちょっと気分転換したいなあという人には大いにおすすめ。短いし文章も平易だし、田舎の描写は素朴で好感が持てる。個人的には夜中に道路に寝っ転がって歌うシーンが好き。
    田村さんへのキャラ萌えだけを語るのなら最高としか言えない。よく笑うのも訛ってるのも、彼の過去も、都会との別離と田舎を守る覚悟も主人公との隔絶を感じさせる描写として簡潔で良い。メロつく。

    以上。田村さんは可愛い。

  • 大切な友達におすすめされた本。

    朝起きて、今日が終わることを願いながら時間が過ぎるのをただただ待つ。その気持ちわかるなあと心を痛めながら読み進めるも、自殺失敗後、田舎のゆったりとした時間の流れ、周囲の気楽な大雑把さ、命との向き合い、自然の包容力、そういったものに心安らいでいく様子が描写されればされるほど、不自然なほどに物事がうまく進んでいく居心地の悪さを感じてしまった。原田マハさんの生きる僕らを心地悪さに負けて途中までしか読めなかったのと同じ感覚。
    そのまま読み進めていって、ある程度予測できる内容に結末も終着。
    「自分のこと繊細やとか、気が弱いとか言うとるけど、えらい率直やし、適当にわがままやし、ほんま気楽な人やで」っていう、物語終盤の田村さんの言葉がちょっと胸に刺さった。私も、辛い辛いと自分の負の感情に気づくのだけは一丁前だけど、案外図太いという自覚があるのでチクチク。
    自己嫌悪。

    希望の持てるような終わり方だとは思うんだけど、
    いろいろ主人公の嫌(だと私が感じる)ところと自分を重ね合わせてしまって、そして、物語全体の出来レース感を感じてしまって何ともモヤモヤ。
    でもこの本を勧めてもらえたということが嬉しい。

  • 自殺しようと北へ向かい、睡眠薬を2週間分飲んだけど死ねず、その土地で心身を回復させる、若い女性、千鶴のお話。

    うーん、作者は本気で死にたいと思ったことがないのかなぁと感じた。そもそも、この主人公は本気で死にたいとはならないタイプじゃないかな。

    ただ、遠くに行きたくはなりました。

  • 薄~いこの本、令和最初のダービーデーに読み進み、読み終わる。

    仕事にも人付き合いにも倦んだ主人公が、山奥の民宿で睡眠薬自殺を図るも果たせず、ブラブラと民宿で時を過ごす内に再び生きることを決意するという筋立て。
    始まった時から結末は見えているお話をどう読ますかだが、田舎の生活に嵌ってしまうのではなく、都会に帰っていくというのは、まあいい方かなと思った。
    ただ、作者のあとがきを読むと、自ら教員として経験した話をシチュエーションを変えてなぞっただけのお話にも見え、正直、多少鼻白んだところはあり。

  • 仕事や人間関係で悩み追い詰められた若いOLが死に場所を求めて山奥のある民宿に辿り着く。睡眠薬で安易に死のうとするが失敗する。しかし民宿の主"田村さん"と出会い再度人生を見つめ直す。むさ苦しく大雑把でガサツ。裏表のない男に自然や人々との触れ合い、自給自足の術、讃美歌、そして吉幾三(笑)を学ぶ。心の栄養補給をした彼女は改めて人生の荒波に再度立ち向かう人生の応援歌的な話。著者が実際に過ごした丹後地方の体験が描写にリアリティを出している。

  • ■書名

    書名:天国はまだ遠く
    著者:瀬尾 まいこ

    ■概要

    仕事も人間関係もうまくいかず、毎日辛くて息が詰りそう。23歳の
    千鶴は、会社を辞めて死ぬつもりだった。辿り着いた山奥の民宿で、
    睡眠薬を飲むのだが、死に切れなかった。自殺を諦めた彼女は、民
    宿の田村さんの大雑把な優しさに癒されていく。大らかな村人や大
    自然に囲まれた充足した日々。だが、千鶴は気づいてしまう、自分
    の居場所がここにないことに。心にしみる清爽な旅立ちの物語。
    (From amazon)

    ■感想

    どうなんでしょう?これは・・・・
    自殺の動機がよく分からない。現代社会に疲れたのは分かる。
    ただし、自殺の本気度が最初から無い。
    本気で睡眠薬で死のうと思えば、致死量ぐらい確認してから飲むだ
    ろう。
    本当に死にたいならね。
    他の自殺案が実行出来ないというのは、性格という解釈で理解できる
    が、本当に本気であればね・・・・
    最初から、失敗して欲しいという気持ちがあるから、失敗したので
    しょう。

    後、彼氏の存在もはっきり言っていらない。
    意味の分からない関係だし、別にいなくても作品として全く困らない。

    もう少し、一人ひとりを丁寧に描いて入れば面白かった気がしますが
    このままでは、あまり読む意味がありません。

    最後も、結局逃げ場を残して、人に甘えて生きていこうとしている姿
    で終わっています。

    この内容では、"ただの甘えた女が、自殺に失敗し、結局は人に甘
    えて生きていく事を決心する"話です。

    つまらないです。

  • 図書館の神様という本で気になった作家さん。
    なので、期待しすぎたかも。
    悪くはなかったけど・・・。

    都会で人間関係に疲れて自殺するしか考えられなくなっちゃった女の人が誰も知らない所の民宿で死のうとして泊まって、結局死ねなくて・・・。

    • m-daifukuさん
      コメントとハート、どうもありがとうございます。

      瀬尾さん、私も最初調べたときに思ったより沢山の本があって驚きました。ほんの少しですが、...
      コメントとハート、どうもありがとうございます。

      瀬尾さん、私も最初調べたときに思ったより沢山の本があって驚きました。ほんの少しですが、お力になれたようで嬉しいです。

      「図書館の神様」は読もうか悩んでいたところでした。是非読んでみたいと思います!

      「優しい音楽」「卵の緒」など、短編集も何冊か出ているので、是非お気に入りを探してみて下さい。

      お薦め頂き、ありがとうございました!
      2011/12/05
  • 読みやすい。でも、あまり響かなかった。

  • 描写、ストーリーが浅いように感じたので星2。
    短編小説なのでしょうがないのかと思いながら、紹介レビューは期待はずれでした。

著者プロフィール

1974年大阪府生まれ。大谷女子大学文学部国文学科卒業。2001年『卵の緒』で「坊っちゃん文学賞大賞」を受賞。翌年、単行本『卵の緒』で作家デビューする。05年『幸福な食卓』で「吉川英治文学新人賞」、08年『戸村飯店 青春100連発』で「坪田譲治文学賞」、19年『そして、バトンは渡された』で「本屋大賞」を受賞する。その他著書に、『あと少し、もう少し』『春、戻る』『傑作はまだ』『夜明けのすべて』『その扉をたたく音』『夏の体温』等がある。

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