エスケイプ/アブセント (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.22
  • (5)
  • (38)
  • (66)
  • (12)
  • (4)
本棚登録 : 341
感想 : 49
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (153ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101304526

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • これもよかったな~。京都へ少しの間逃亡する、元・活動家の男の語り。どうしてこんなにどこの方言も自然なんだろう?
    祈りの描写が良かった。手紙みたいな、もっと言えばメールみたいな。

  • なんかいいんだよな、絲山秋子。サクッと読める短くて軽快すぎる文章なのに、気づかないうちにえぐられている。

  • 軽妙な文体で読みやすい。この世代の人はこういう時代を生きて、みたいな世代感が全然分からないためになんとなくぼんやりと霧の中を行くように読み進めていたんだけど、何にも信じられないから神様だけは信じられる、毎日謝ってるっていうバンジャマンの話はすごくわかるなあと思ってしまった。
    江崎は大人は生でぬるついて気持ち悪いっていうけど、私は子供の方が生で怖い。神様は人の罪なんて聞かずに応援しろ、祈れって言うけど、ただ聞いてくれるのってむしろすごい応援だと思う。なんか根本が違うんだろうな。江崎はちゃんと人が好きな人というか、結局のところそうだからセクトみたいな活動だってできるんだろう。そう考えると「愛がない」バンジャマンとは正反対の人なんだろう。

  • ふわふわと、テキトーに、ラクに、諦めながら、なんとなく浮き草みたいに生きてる。
    それは、もう燃やし尽くしちゃったからなのか、もともと燃料が無いだけなのか…。
    でも、どことなく、確実に寂しい。
    捉えようもない寂しさに包まれた二篇。

  • 霞がかったようにふわーっとした語り口。作者が考えていることじゃなくて、主人公の頭の中がそのまま記述されているような感じがする。

  • 遅すぎた中年、福岡に向かい、ふと京都に降りる。
    そこには現在を把握していない、双子がいたが、今はどうやら。
    コスプレ神父バンジャマンと交流。
    結局双子に会うことはなかったが、その不在こそが隠れた透明の背骨である。
    それは作中に形を変えて言及される。
    「不在は、美化される。キリストだってそうだ。」
    キリストなんかより歌子婆さんみたいな人が今現在生きているってことを美化したいね、という独白や、
    なんで大人ってドライでソリッドではなく、生、なんだろう、といった感覚やに、
    大いに共感。ずっとそう思っていた。

    ちなみに「アブセント」はその双子の片割れ。

  • 9年ぶりの再読
    9年前には頭で読んでいた。
    今は肩の力を抜いて読める。

  • 相対する双子の兄弟がそれぞれ主人公の二編。自由でいながら、挫折に影を潜めて生きる中年男の切なさが、軽く明るく描かれている。二編が構成から響き合っているので、短いながらも印象がしっかり残る名著。

  • 職業的革命家をドロップアウトした正臣、偽神父のバンジャマン。彼らはともに、いわばかけがえのない青春期を失ってしまった。そして、過去における継続的な挫折のゆえに将来への展望もなきに等しい。小説のアイディアとしてはわからなくもないが、やや作為的に過ぎるようにも思う。タイトルの所以となったジョディ・ハリスとロバート・クインの「エスケイプ」も職革の過去には違和感が否めない。一方の「アブセント」は、もう少し自然だが、その分インパクトには幾分か欠けるだろう。小説のテーマは「喪失」であり、読後には一抹の寂寥感が残る。

  • あまり感情移入できる要素はなかったけれど、脇役の登場人物がやっぱり素敵だった。

全49件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1966年東京都生まれ。「イッツ・オンリー・トーク」で文學界新人賞を受賞しデビュー。「袋小路の男」で川端賞、『海の仙人』で芸術選奨文部科学大臣新人賞、「沖で待つ」で芥川賞、『薄情』で谷崎賞を受賞。

「2023年 『ばかもの』 で使われていた紹介文から引用しています。」

絲山秋子の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×