- Amazon.co.jp ・本 (190ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101307091
作品紹介・あらすじ
戦争の傷跡を残す大阪で、河の畔に住む少年と廓舟に暮らす姉弟との短い交友を描く太宰治賞受賞作「泥の河」。ようやく雪雲のはれる北陸富山の春から夏への季節の移ろいのなかに、落魄した父の死、友の事故、淡い初恋を描き、蛍の大群のあやなす妖光に生死を超えた命の輝きをみる芥川賞受賞作「蛍川」。幼年期と思春期のふたつの視線で、二筋の川面に映る人の世の哀歓をとらえた名作。
感想・レビュー・書評
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『泥の河』では高度経済成長期間近の大阪の雰囲気を感じることができる。
小学生や中校生といった多感な時期特有の葛藤を2作品では見事に表現されていると感じた。
『泥の河』で出てきた巨大な鯉ってどんなものなのか想像しながら読むと少し面白かったです。
廓舟で生活する母と2人の子どもが、次の場所では平和に過ごせることを祈るばかり。
『螢川』は文句なしの面白さ、これこそ昭和の純文学という感じ。最後の螢が一面に飛んでいることを描写する文章が美しい。一昔前はこんなにも螢が多く綺麗だったのかと思いながら読み進めた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
螢川・泥の河どちらもとても良かった。特に泥の河(太宰治賞)は個人的にとても好きだ。
流れるように読めるけど、心理・情景描写がその流れを邪魔することなく綺麗におさまっているのが凄いと思った。『田園発 港行き自転車』で富山を舞台にしていたのだが螢川も富山であった。出身地を見ると関西なため、富山が好きなのかなと思っていた。が、解説を読むとどうやら著者は幼い頃、富山に一年間住んでいたことがあるとのこと。一年間だけで小説の舞台に度々登場するくらいなのだから、富山で得た色々は宮本輝にとって特別なものだったのだろうか。
とにかく良い小説だった。 -
近代文学みたいな本だった。
重くて暗い。
デビュー作と芥川賞受賞作の、2作。
作者の10年が詰めこまれているだけあって、竜夫少年の身に色々なことが起こる。
起こりすぎる。
ちょっと疲れる。
「錦繍」で印象的だった一文「生きていることと死んでいることは、同じことなのかもしれない」を、より生々しく表現した感じ。
川の流れる様子を「まるで錦繍のようだ」と例えていて、作者はよっぽど「錦繍」という言葉が好きなんだなと思った。-
私の感想に「いいね」をいただきありがとうございます。
あなたの「近代文学みたいな本だった」と言う一文が気になりました。私の感想に「いいね」をいただきありがとうございます。
あなたの「近代文学みたいな本だった」と言う一文が気になりました。2023/06/22 -
こちらこそ ありがとうございます♪
近代文学は、当時の文化や時代背景、作者の経歴等まで掘りさげたくなりますこちらこそ ありがとうございます♪
近代文学は、当時の文化や時代背景、作者の経歴等まで掘りさげたくなります2023/06/24
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「泥の河」と「螢川」の二篇。前者は太宰治賞、後者は芥川賞を受賞しています。両作品ともに性の目覚めにある少年が主人公。その目に映る大人の弱さ、泥臭さ、悲しさと、自然の儚さ、雄大さ、不気味さ、厳しさ……色とりどりに目まぐるしく変わる描写が叙情たっぷりでした。
少年は身近な者の死によって、常に死が意識下にあるような感じです。さらに二つの作品とも、怪しげな生物の動きが掉尾を飾っています。ラストはまさに衝撃的な一枚の絵となっています。余韻の中でなんとなく、生きることは刹那の繰り返しなんだろうなと思いつつ頁を閉じました。再読したい二作品です。 -
敗戦後間もないまだ鬱蒼とした時代、川の畔の少年達の物語、中編2編。
太宰治賞「泥の河」
社会の底辺よりも底、泥の河で廓舟に暮らす母子と短い交流を持つ食堂の少年。日常が淡々と語られる。抵抗するでもなく、厳しい貧さを受け入れる母子。廓舟の友人の過ちを許せなかった少年。悲しみ辛さの心情を直接表現するものはないが、作品全体から悲しみが溢れる。
芥川賞「蛍川」
中学生という、これからの生き方が決まるであろう時期に父、友人の死に直面する少年。何かが終わろうとも、少年の生は続く。ラストの蛍の乱舞、少女にまとわりつ表現は、圧巻。 -
丁寧に綴られた言葉とリアルな情景が秀逸
人間の生の美しさと強さとそして嫌悪が
子どもの視点を通して不器用に映し出される
忘れた頃にまた読み返したくなる一冊 -
文学的表現が美しく、内容も素晴らしい。
こんな文学に出会えて良かったと心から思います。
泥の河 太宰治賞
螢川 芥川賞
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宮本輝の著作を読むのは実質初めて。むかーし映画化された優駿は映画館で観た記憶。
泥の河、螢川ともに、方言と自然描写が巧みで、その生活が活き活きと伝わってくる。大変美しい。
両作品とも、大人とのやりとりを通じた思春期ごろの子供の成長、過去を背負って前を向きつつも、わだかまりを持った大人たちの葛藤が描かれている。人間って、やっぱり簡単に割り切りシンプルに生きることは難しい。心は揺れる。そういう普通の人間の、どこにでもあるだろう話を、優れた方言表現と自然描写を背景に、深みをもって読ませる作品。 -
宮本輝初期2短編。
「泥の河」は戦後しばらくした大阪の庶民の生活を舞台に、少年の目を通して情感豊かに流れる作品である。下町の生活の中に突然あらわれた対岸の舟に住む家族との交流によって誘われる狂気と不条理な死、そしてエロスを雰囲気良く描きだしている。
実は、最後の巨大鯉が去る場面が象徴する意味はよくわからなかった。(笑)少年の過ごした別空間の、限られた経験の終わりを示しているのかな?
「蛍川」は戦後しばらくした富山を舞台に、やはり少年の目を通し富山を中心とした北陸の風情をよく伝える作品となっている。ラストの蛍絵が映像的にも豪華で、それに辿りつくまでに描かれる少年一家の宿命を、死とエロスを絡めながらとうとうと描かれる。
街の描写が多々あるのですが、路面電車の軌道が現在と異なっているのでしょうか?地理関係が少しわからなくなりました。(泣)
どちらも国語教科書に載るような感じの作品と思いました。自分の試験点数はおそらく悪いでしょうけど・・・。(笑)-
こんにちは。映像化は、かなり以前です。小栗康平さん監督作品。もう40年ほど前の作品です。あえてモノクロで撮影されていて戦後の大阪をうまく表現...こんにちは。映像化は、かなり以前です。小栗康平さん監督作品。もう40年ほど前の作品です。あえてモノクロで撮影されていて戦後の大阪をうまく表現されていました。田村高廣さんも、いい芝居をしています。機会があれば、ご覧になってみてください。面白くなかったら、ご勘弁ください。2021/08/15
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yhyby940さん、こんにちは。
コメントいただきありがとうございます!(^o^)/
またフォローもいただきありがとうございます!...yhyby940さん、こんにちは。
コメントいただきありがとうございます!(^o^)/
またフォローもいただきありがとうございます!(^o^)
機会があれば是非観てみたいですね。
今後ともよろしくお願いいたします。2021/08/15 -
2021/08/15
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うまく言葉にできないのですが、宮本輝という人は「生きてきた」人なんだなと、すごく思いました。人間って、幼い頃は世界と未分化で、それこそ河とか虫とか田畑とかと同じような「世界の一部分」なのだけれど、生きながら独りになっていくのですよね。そのひたむきな哀しさ美しさが見事に紙の上にかきとめられている。胸を打たれました。他に一作品しか読んだことがないのですが、もっと読みたいと思いました。