螢川・泥の河 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (190ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101307091

感想・レビュー・書評

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  • 「喜一の瞳が、その変貌のさなか、一瞬冷たい焰を点じることを信雄は知っていた。」

  • 小説と言うと、人物の言動が物語のために作られすぎていて記号的で無機的に感じることがあるけど、この作者の紡ぐ言葉は一つ一つが自分の生活と非常に近い線にあって、普段当たり前すぎて気に留めないような言葉や空気が、小説の中にぽっと浮かんで来たりする。それは、断片的に自分の覚えている思い出のワンシーンに似ているように思う。 そうした表現の群れが生む生々しさと、扱われることの多い死、貧困、愛憎と言ったテーマとが相まって、人間の体臭とか空間のすえた臭いが本から漂ってくる。生を持った有機的な文、と言う印象がとても強い。

  • 第13回(テーマフリー)

  • 2019.7.16

  • ★4.0
    「螢川」は芥川賞、「泥の河」は太宰治賞の受賞作品。2作とも著者の代表作の内のひとつで、タイトルから受ける印象が“光”と“闇”で真逆なのが面白い。が、どちらも物語は昭和30年代を舞台とし、貧困や死、別れといった悲哀が常に付き纏う。特に後者は、以前に映画を観ていることもあって、信雄ときっちゃんに訪れるラストがあまりに切ない。と同時に、前者は英子の清らかさから、後者はきっちゃんの母親の倦怠感から、タイトルと同じく真逆の色香が漂ってくる。未見の映画「螢川」で、言葉を失うほどの螢の大群を観てみたいと思う。

  • 「泥の河」は、まだ高度成長が始まる前の日本、大阪の風情を描いているが、陰鬱で哀しい話で、あまり引き込まれなかった。
    「螢川」は、北陸富山を舞台に、父親と親友を亡くした主人公がきらめくばかりの蛍の光に包まれる物語。
    叙情的でありながらも、人生の襞を描いた秀作であった。

  • 以前、読んだことがあるが、覚えていたのはわずか、ほぼ忘れていた。楽しめた。

  • 3.9 貧しさも死さえもすぐそばにあった昭和の話。人への思いは、不変だと感じる。

  • 「螢川」「泥の河」ともに、ゆかりのある土地が舞台で親近感があった。

  • 2018年6月10日に紹介されました!

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著者プロフィール

1947年兵庫生まれ。追手門学院大学文学部卒。「泥の河」で第13回太宰治賞を受賞し、デビュー。「蛍川」で第78回芥川龍之介賞、「優俊」で吉川英治文学賞を、歴代最年少で受賞する。以後「花の降る午後」「草原の椅子」など、数々の作品を執筆する傍ら、芥川賞の選考委員も務める。2000年には紫綬勲章を受章。

「2018年 『螢川』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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