螢川・泥の河 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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感想 : 355
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  • Amazon.co.jp ・本 (190ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101307091

感想・レビュー・書評

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  • 尊敬する人に勧められて買った。

    家族、恋、友情。
    子どものころに感じはじめた「だいじなもの」が丁寧に、大切に書いてある気がする。

    ラストシーンの描写がものすごく印象的。
    主人公と周りの人たちを慰め、そして応援するような蛍のひかり。
    わたしの実家の近くでは今でも蛍をみることができるけど、近年みられるのは数匹だけになってしまった。
    たくさんの蛍の光が集まった風景は、平成生まれのわたしには想像することしかできない。

    作品から、昭和という時代がもつ暖かさも感じとることができた。



    「運というもんこそが、人間を馬鹿にも賢こうにもするがやちゃ」

  • 泥の河が良かった。
    生死なんて小さなもの。小動物の生死が簡単にコントロールできるように、人間の生死ももっと大きな力に簡単にコントロールされている。

  • 初めて読んだけど、好きな作家になった。情景描写とキャラクターの肉付けが上手。まずは前者だが、授業や小説でもあまり触れる事のなかった戦後、高度経済成長期直前の混沌とした世界をまるで臭気まで漂ってくるかと思う程リアルに描いている。次に後者、どの人物もまるで一度会って話した事があるかのような現実感と説得力。あと、主要人物が全員人柄が良いのが好きだった。特に「泥の河」の信雄と喜一が可愛すぎる…。ただ、そんなキャラクターにも容赦なく苦難を与える作者は真性のドSなんじゃないかと思えてきた。この作者の世界の登場人物には決してなりたくないなぁ。「泥の河」も「蛍川」も、美しい作品だった。老いた時にもう一度読みたい。

  • びりっびりくる!

  • 2017.1

  • 光景が映像として眼に浮かぶ。「泥の河」油を呑まされ火をつけられた蟹が燃えながら這い回っている。蟹から放たれる悪臭を孕んだ青い炎。それを銀子がゆっくりつまんで川に投げ入れていく。「螢川」蛍の大群は、滝壺の底に寂寞と舞う微生物の屍のように、はかりしれない沈黙と死臭を孕んで光の澱と化し、天空へと火の粉状になって舞い上がっていく。

  • 『泥の河』は大阪、『蛍川』は富山と場所は違えど、どちらも戦後から高度成長期にかけてのまだ日本が貧しかった昭和の時代を、2人の少年の視点を通して描かれています。貧しい家庭や、儚い人の命、淡い性の目覚め、自分ではどうしようもない情況の中、もどかしさや、理由の判らない衝動を抱えながら、こうやって人は川に流されるみたいにゆるやかに成長していくのだと感じました。

  • 花まんまを読んでいても思ったが、大阪は猥雑とした街だなと改めて感じる。もっともこちらの描写は戦後すぐの話だから一概に比較できるものでもないが。

  • 過去記録。2016年前半読了。

  • お金、愛情、生活、差別などが複雑に絡み合う日常を送る主人公ときっちゃんの目を通して人間の本質が描かれている作品。

    自分が主人公と同じ頃に大阪で過ごし、まさにここに書かれていると同じような経験をしているという所為かもしれないが、是非とも皆にオススメしたい。

    「蛍川」も、基本的には同じテーマ。決して豊かではないけれど、両親、同級生、父の元妻や友人等からの愛情を受けながら思春期を通過する主人公の物語。時差ぼけで眠れない夜、ベッドの中で何度も涙を流しながら読み進めていった。

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著者プロフィール

1947年兵庫生まれ。追手門学院大学文学部卒。「泥の河」で第13回太宰治賞を受賞し、デビュー。「蛍川」で第78回芥川龍之介賞、「優俊」で吉川英治文学賞を、歴代最年少で受賞する。以後「花の降る午後」「草原の椅子」など、数々の作品を執筆する傍ら、芥川賞の選考委員も務める。2000年には紫綬勲章を受章。

「2018年 『螢川』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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