- Amazon.co.jp ・本 (398ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101325316
感想・レビュー・書評
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ほとんどの世界で大っぴらに語るのは憚れる性。そのなかでも
厳格な戒律に基づいて生きるイスラム世界の人々の性に焦点
を当てたのが本書。
大きな括りでは「イスラムの性」なのだが、著者がこれまでにも
追って来た底辺で生きる人々のルポルタージュと根っこは同じ。
蔑まれ、虐げられ、それでも生きて、生き延びる為に、彼ら・
彼女らは性を売り物にする。
生きて行く為に路上でゴミ拾いをする兄弟。だが、それだけでは
家族の生活を支えられない。兄は男娼として不足分を稼ぐ。
弟にはこんなことはさせたくない。だが、弟は兄を少しでも
助けようと、兄には内緒で同じように大人の男と姿を消す。
公園で暮らす浮浪児たち。12歳にもならない彼女たちは大人たち
に体を売ることで生き延びる。それは、抱きしめて欲しいから。
どんなに無茶なことをされても、ただ、ぎゅっと抱きして欲しいから
言われるままに体を預ける。
著者がところどころで取材相手に投げかける言葉は浅はかだ。
だが、それは日本という恵まれた場所に生活する者たちの
思いを代弁しているのかもしれない。
次から次へと繰り出されるエピソードは非常に重い。結婚前に
男との逢瀬を繰り返していた娘を、自らの手で葬らなければ
ならなかった父親の話なんて、途中で本を閉じてしまった。
世界の片隅は私たちの道徳や倫理感を超えたところで、
生き抜こうとしている人々がいる。
本書で気になるのはある程度の脚色がなされていることと、
盛り込まれたエピソードがパターン化していることかな。
ただ、一夫多妻という婚姻関係については目からうろこの
部分もあった。
そろそろ石井さんも他の分野を書かないとマンネリ化しそうだな。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2017.8.2読了
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この地上に 一人でも
飢えている人が いる限り
私たちの 食事は
どこか楽しくは ないでしょう
この地上に 一人でも
差別されている人が いる限り
私たちの 遊びは
どこか楽しくは ないでしょう
ひとつぶの 麦を
ひとつぶの 汗を
ひとつぶの 怒りを
ひとつぶの 涙を
※「ひとつぶの涙」笠木 透さん の 詩より
今の日本で
何も考えずに暮らしていたら
ここに書かれてある実態とは
全く無縁に暮らすことはできるだろう
今の日本で
何も思わずに暮らしていたら
ここに書かれてある実態は
全く無視すべきものとして捨て置かれるだろう
だからこそ
次の人に手渡したい一冊です -
何回か定期的に読まないといけないと思う。日々に倦やないように。日々意図的に見逃している多くのことを見直すために。
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インド政府は女性への不妊手術を推奨、手術をすれば補償金(七百五十円)がもらえる。貧しい階層の女性たちは不妊手術の後、売春宿で働かされ、住む家を持たない女性浮浪者たちは、数日生活できる金欲しさに手術を行う。隣国バングラデシュ、ダッカの売春婦は豊満さ求めてステロイド中毒者になっているのだとか、社会のひずみは弱いところに色濃く表れる。日本も遠い国のことだといってはいられない、低所得者の子供の虐待は増え続け、昨今TVのニュースをにぎわす。
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「性」視点からのイスラム世界報告。目を覆いたくなる現実。どうにかしてあげたい、となる。でも、今その中で必死に生きている人にとってそれはこちらの思い上がりでしかない。輪の中に入っている人に対してよりも、輪に入らずにすむような知恵の方が貢献できるのではないか。
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いつも旅しているアジアの裏の部分。こういうことを、気づかないフリして見ないようにして通過してきたんだ、と思った。
だからと言って何か自分にできる訳ではないけど、
これからの旅の印象はずっと違うものになる。 -
著者がイスラム諸国の夜の街を歩き生の性を隠すことなく調査する。2人の娘がいる小生としては胸が張り裂けそうな内容だ。どこの国に生まれるかはただの偶然のはず。その偶然が子供たちの人生を決める。その人生は過酷だ。何とかならないのだろうかと無力な自問を何度も繰り返した。
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現地の人たちには申し訳ないが、日本に生まれてよかったというのが、率直な感想。この本には目を背けたくなるような悲惨な状況の女性達がたくさん登場する。
ルポということで、ノンフィクションということだが、半年の間に十数か所を放浪しては現地の人とここまで深くかかわれるはずはないし、フィクションも入っていると思われる。フィクションであってほしい。
イスラム文化圏は性にとても厳格に見える。しかし貧しい地域では、女性は子供のうちから売春をして生きていかざるを得ないようだ。一番つらかったのが、インドの行き場の無い十代の女性が、娼婦になる前に不妊手術をしなければならないというところ。
いろいろ思うところがあり、勉強にもなった。ただ、作者の怖いもの見たさ、顔を半分突っ込みつつも無力な自分に酔ったりするパターンはなんだかなぁと思った。