私という病 (新潮文庫)

著者 :
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感想 : 73
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  • Amazon.co.jp ・本 (183ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101341729

作品紹介・あらすじ

「どうして私は、女であることを、おおらかに正々堂々と楽しめないのか」-男に負けないよう必死で手に入れた「勝ち組」の称号が、恋愛マーケットでは惨めな「負け組」と見なされる。愛されたい、だけど見返してやりたい…相反した女の欲情を抱いた作家が叩いた扉は、新宿歌舞伎町・熟女ヘルス。過激な"実体験主義"に潜む、普遍的な「女」の苦しみに肉体ごと挑んだ、戦いと絶望の全記録。

感想・レビュー・書評

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  • 今回は中村うさぎさんの体験等をもとに、自己分解?をされているお話でした。
    確かに、わかる。と思うことが多く、普段の生活で感じていても言語化することがなくもやもやとしている気持ちをうまく言語化してくださっている感じでした。

    「女であること」を拒否した女は、どんなに出世して「勝ち組」になろうと、惨めな「負け組」に分類されてしまうのだ、と。

    ここはとてもわかる。女だからと舐められたくなく努力して成功したとしても、今度は女としての評価で負けてしまう。
    どちらも勝ち組でいることは、今の社会だと難しいのだな、と改めて感じた。

  • つまらない作品でした。

  •  

  • デリヘル体験記というより
    女性であることへの深い考察。
    女性であることでの生き辛さの深い闇の分析。根が真面目な人なんだろうな。

    うさぎさんのように極端な行動は取らないけれど、うんうんわかるよって頷きながら読了。

  • 文庫版の伏見憲明さん解説がkindleには載ってない....。「『私という病』は結局、風俗という現場で何を見たのか、というルポタージュではなく、風俗という体験を通じて自分の内側から何を抽出できたのか、という深い自己分析の軌跡であった。それはうさぎさんが自分という身体に自らメスを入れ、臓物を掻きだし、そのにおいを吟味するようなグロテスクな作業であり、麻酔もかけずに開腹手術をしていく残酷で怜悧な実験だった。その躊躇のない手さばきこそが、中村うさぎという作家の真骨頂なのだろう。」

  • 女性という作者の実存。そこから風俗の経験を通して、また東電OL事件という記号を通して考えてみる。人間どうしても自分の属性に依存したものの考え方しかできなくなってしまう。男なら男目線で女を見る。筆者は、そういった無知の眼差しに敏感である。これですべてわかるというわけではないが、相手を理解する知性を身につけるために読むべき本。

  •  売れっ子女流作家の著者が「熟女デリヘル」で働いてみるという、前代未聞の体験取材(?)の記録であり、その体験をふまえて感じたこと・考えたことを綴ったエッセイでもある。

     元になったデリヘル体験記が『新潮45』に載ったときにはずいぶん話題になったし、本書の存在自体は知っていたが、もっとおちゃらけたお笑いエッセイだとばかり思っていた。しかし、読んでみれば意外にシリアスな内容で、想像していたよりもはるかによい本だった。

     第1章「セレブ妻・叶恭子(源氏名)のデリヘル日記」こそハイテンションで笑える内容になっているものの、残りの3章は内省的といってよいトーンで書かれている。
     そこでは、著者がデリヘル嬢をしてみる決断をするまで、そして体験後の心の軌跡が、丹念にたどられている。あたかも、自らを精神分析し、自らの「女性性」の根幹と対峙するような内容だ。多くの女性にとっては共感でき、多くの男にとっては耳の痛いものだと思う。

     若き日のOL時代に上司から受けたセクハラ、痴漢に遭った苦い体験、そして、ホストにのめりこんでいた時期に「恋人」だと思っていた美男ホストから与えられた屈辱……。著者は自らの心の傷をさらけ出し、読者の眼前でその傷に塩を塗り込んでみせる。
     ホストから与えられた屈辱をぬぐい去るためには、熟女デリヘルで働いてみるしかなかったのだと、著者の決断にある程度納得がいく。

     そして、最後の第4章は「東電OLという病」。そう、中村うさぎが「東電OL殺人事件」の被害女性と自らを重ね合わせ、彼女への共感と哀悼を真摯に綴っているのだ。
     あの被害女性については、佐野眞一をはじめとした多くの書き手がさまざまな形で論及してきたが、私はこれまで読んだそれらの文章の中で、本書がいちばんよいと思った。「ああ、そうか。そういうことだったのか」と腑に落ちたのだ。

     第4章の途中には、小説仕立てで被害女性の心に分け入ってみたくだりもある。その部分を読んで、中村うさぎに「東電OL殺人事件」を小説化してほしいと思った。すでに桐野夏生があの事件をモデルに『グロテスク』を書いているが、中村うさぎなら、桐野とはまったく違う角度から優れた小説が書けると思う。

  • 「人は女に生まれるのではない、女になるのだ」といったのはボーヴォワールだが、社会的に ― つまり、今の世の中では大多数の男たちから作られる"オンナ"という性はある種の人にとっては病気のようなモノであるのではないかと男である評者は思う。


    男は社会への通過儀礼を経るときに社会化と男性化を同時にこなしてしまう部分があるので"私という病"に自覚しにくいのかもしれない。

  • 期待以上に深かった。中村うさぎの「だって、欲しいんだもん!ー借金女王のビンボー日記」を読んだ時には語り口があまり好きになれなかったけれど、本作は自らの女性性を嫌悪して閉じ込める自分と、男性に愛されたい、性的に魅力的でありたい、性を奔放に楽しみたいという自分との二面性を深く考察している。女性なら多かれ少なかれ誰しも持っているであろう二面性。自分の中の「女」を押し殺して振る舞う自分と、女として魅力的でありたいという自分、どちらも本当の自分で、それを場面や相手ごとに使い分けながら矛盾しないように見せているという感覚、疑問にも思っていなかったけど、それってもしかしてこの社会で生きるために身につけた処世術だったのかな…。

  • 一気読み。

    デリヘルをしてどうだったかの感想ではなく、なぜしたのか、してどうだったか、つまり自己分析の本かなと思った。

    性という題材であるが、形を変えて、割と少なくない割合で多くの人の心の中にある問題を扱っている気がする。
    その表出方法が、うさぎさんは性なだけであって。

    自己確認、という表現はすごくしっくり。
    私にとってのそれは、おそらく仕事を通して子どもと関わること。
    傷をえぐる作業で、辛くなるのはわかるのに、せずにはおれない。

    それから、経験を通してしか学べない、のところは深く同意。
    だからか、、タイプは違うはずなのに、うさぎさんの考え方には共感する部分が多いのかな。

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著者プロフィール

1958年2月27日生まれ。
エッセイスト。福岡県出身。
同志社大学 文学部英文学科卒業。
1991年ライトノベルでデビュー。
以後、エッセイストとして、買い物依存症やホストクラブ通い、美容整形、デリヘル勤務などの体験を書く。

「2017年 『エッチなお仕事なぜいけないの?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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