美の呪力 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (279ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101346229

感想・レビュー・書評

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  • 太郎さんの何がって限定したくはないけど
    私の知ってるうちじゃ、柳さんとパイロットと重なるときがある、あともう一人か。

    芸術家が芸術作品に興味ないって言ってるなら、素人の私もそんなの知らない、あんなのこどものらくがきでしょっ、って言えるだろうか。そしてその理由を質すされたときにだってあの偉い人もそういってるんですよなんて、子どもの絵と馬鹿にしておきながら、それでもって子どもの絵も馬鹿にしておきながら、お主がやっておるのは子どものそれとはどうちがうのじゃろう?それは理解できないだけで外にいるものが内側にいる者、内側に入ることができたものに対する嫉妬、そう嫉妬。芸術、芸術家というものがこの世には存在していました、そして今も存在し、この先も存在し続けるでしょう。我々人類のうち一体何割の人間がこの存在をその生のうちに自分の内側に認めることができるのでしょう?

    極めて少数なら存在しなくても、存在しないとみなしてもよいのではないでしょうか?
    そう、微分です。存在量が少ないものは微分して、多で世界を構成させましょう。我々が依れるのは極めて少数の有限な存在だけ。希少性は不要でございます。
    美なんて言葉は女性にだけ用いるのが正しい。
    芸術作品があるから凡人は引け目を感じるのです。
    理解できない存在ガボン人にとってどんなに苦しい次第か、それはちょうど天才がなぜ凡人は自分たちの作品を理解してくれないのかと悶々とするのと似たようなものでしょう?お互いが会い寄れない。そのようなモノが存在していることが誠に滑稽でございます。

    芸術作品と芸術家と鑑賞者。
    いつまでたっても私にはすごい上手って言葉しか
    出てこないのが、とっても恥ずかしい....

  • しおり p45

  •  大阪万博の直前に芸術新潮で連載された「わが世界美術史」がもとになった本。 自分も生まれる前だし、日本中が熱狂した万博直前の岡本太郎がどれほど忙しかったかは想像もできないが、たぶん寝る間もないほど忙しかったと思う。それなのに、こんな連載を執筆していたなんて、おそろしいほどのバイタリティだ。


     岡本太郎の作品は公共の場にもよくあり、目にする機会が多いが、著作を読んだのは恥ずかしながら初めて。
     
     著述の範囲は、イヌイットの石像、ストーンヘンジ、スフィンクス、グリューネバルトの宗教画、アステカ文明と血の儀式、オルメカ文明の巨石人頭像、曼荼羅、菩薩像、ロシア・イコン、ボッシュの絵、ゴッホの絵、平治物語絵巻、組紐文、ケルトと縄文・・・ などなど、多岐に渡る。 
     それらに共通するテーマが「呪力」だ。


     炎や血などの鮮烈で荒々しいイメージ、石像や仮面に込められた念、動と静のようなイメージの中にも、二律背反するように静と動が内在されていることが、感じ取れた。 


      この1冊しか読んでいないのに、うんぬんするのは良くないが、おそらく岡本太郎にとっては、美しいとかきれいとか、日本人一般が「美術」と捉える心を落ち着かせるようなものには、あまり美を見出さなかったのではないかと思う。


     うまくまとめられないけど、解釈の仕方が独創的で新鮮だった。


     巻末の鶴岡真弓さんという方の解説が丁寧で大変助かった。あっちこっちに話が飛び、芸術家らしく、情熱の赴くまま綴られる熱い文章が表したかった真意がよくわかった。


     岡本太郎の作品を見かけるたびに、読みなおしたいと思う本だ。 

  • あるということを拒否するところからないを考えるという言語化の仕方が気に入ったけど、後半同じテーマの話が引き延ばされている感じでちょっとぐだった。あとあらすじが「わたしは赤が好きだ」という引用からはじまっているがあまり適当でないと思う。

  • 何となく網野善彦さんの「無縁・苦界・楽」に似てるなと思った。
    人が営んでいく上での本能(?)的な所を突き詰めていくと、血や炎、石積みにもある種のアジール的な所を見れてしまうのかもしれない。

    これまで芸術に全く興味が無く、岡本太郎さん自体、万博で太陽の塔を建てたり、「芸術は爆発だ」とか言ってる何か変な人と言うイメージしか持っていなかった。

    けど、もし、あの世で網野善彦さんと岡本太郎さんが対談したら、結構、面白いんじゃないかなぁと思いましたよ。

  • 飾られるために創るのでなく、使うために作る。だから使われるときこそ最も輝く。単純なものほど、原点。語学や美術史にも深い岡本太郎のすばらしさを再認識。イヌクシュクの石積み。

  • 石積みの回、失われていった文化にみる本当の芸術、終盤のゴッホ、あやとり宇宙論が特に面白かった
    今日までにのこったものでなく失われたものの側から真の芸術を強烈に照らし出そうと試みた一冊

  • 一回読んだだけでは、この本の良さはあまりわかりませんでした。
    あまりにも岡本太郎が世界中の伝統や文化、芸術の知見があるので読んでいてよくわからなくなりました。

    全体的に、まず本のボリュームが279ページあるので読み進めづらいのと、主張が一回ですっと入らないから岡本作品を何冊か読んで慣れてないと辛いかなと思いました。
    ただ章が「血・怒り・仮面・火」などしっかり別れており、章の初めに考えが書いてあるのでそこはポイントとして抑えておいてよかったです。

    もう一度読みたい本です。

  • 岡本太郎の文章を初めて読みました。
    こんなきちんとした文章を書くんだ、と正直驚きです。
    もちろん、文章にも「太郎節」というものが炸裂していて、その個性は唯一無二。
    ただ、そこにある、「自分自身をまず他者として置き」、問題をとらえ、調査し、思索し、文章を書く――という姿勢。
    それがメディアに露出していた本人のイメージとは違っていてなんだか新鮮に感じられました。

    古代の石、血、仮面、怒り、炎と水、夜。
    岡本太郎が心惹かれるもの。
    その何が彼の心を惹きつけるのか、を論じています。
    比較文化論でもあり、美術史論でもあり、社会論でもあります。
    その独特の感性と、本質に迫ろうとする迫力を感じると同時に、
    客観的な視点から分析しようとする姿勢も感じます。

    「まことに大地と天空は永遠のものであるのに、火と水の激しくはかない性(さが)は人間のいのちを暗示し、
    よろこび、悲しみの波動をおおい、くぐり抜けていく。」
    などという、美しい文章もさらりと現れたりします。

    ピカソやゴヤ、ゴッホなどについて語っているところが個人的にはとても面白かった。
    特にゴッホ論は秀逸。

    様々なテーマを、深く、広く語っている岡本太郎。
    「芸術は爆発だ!」の言葉の意味を自ら解説している書、でもあります。

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著者プロフィール

岡本太郎 (おかもと・たろう)
芸術家。1911年生まれ。29年に渡仏し、30年代のパリで抽象芸術やシュルレアリスム運動に参加。パリ大学でマルセル・モースに民族学を学び、ジョルジュ・バタイユらと活動をともにした。40年帰国。戦後日本で前衛芸術運動を展開し、問題作を次々と社会に送り出す。51年に縄文土器と遭遇し、翌年「縄文土器論」を発表。70年大阪万博で太陽の塔を制作し、国民的存在になる。96年没。いまも若い世代に大きな影響を与え続けている。『岡本太郎の宇宙(全5巻)』(ちくま学芸文庫)、『美の世界旅行』(新潮文庫)、『日本再発見』(角川ソフィア文庫)、『沖縄文化論』(中公文庫)ほか著書多数。


平野暁臣 (ひらの・あきおみ)
空間メディアプロデューサー。岡本太郎創設の現代芸術研究所を主宰し、空間メディアの領域で多彩なプロデュース活動を行う。2005年岡本太郎記念館館長に就任。『明日の神話』再生プロジェクト、生誕百年事業『TARO100祭』のゼネラルプロデューサーを務める。『岡本藝術』『岡本太郎の沖縄』『大阪万博』(小学館)、『岡本太郎の仕事論』(日経プレミア)ほか著書多数。

「2016年 『孤独がきみを強くする』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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