生きてるだけで、愛。 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (145ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101371719

感想・レビュー・書評

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  • 主人公はほぼ私である。
    20の頃から鬱→躁鬱になり、不眠と過眠をさまよった自分。あと2週間で誕生日を迎え、25になるタイミングでこの本を完読するのはタイミングが良すぎた。

    主人公ほど激しい躁状態は感じたことないけど、自分が頭おかしいって思ったり、いつ良くなるのか分からないのも、バイトが続かない時期があったのも全部分かる、でも1個だけ違うのは私にはこんな彼氏はいなかった。いても病気のことは隠していたし、ここまで感情をぶつけられる(ぶつけざるを得ないのかもしれないが)相手がいることは素直に羨ましい。

  • この本の主人公のような一面って、誰でも持ち合わせていると思う。その程度の差かなと。
    (自分は津奈木さんタイプの人間です。)
    余談だけど、本編じゃない「あの明け方の」の舞台は自分が今住んでる所に程近いところで情景が浮かんできて面白かった、、

  • 鬱だー、とか簡単に言っちゃうのはとても怖い事だと。
    雨の日はベットから起き上がれなかったり、人の話が人一倍気になってしまったり、
    人の感情に敏感で、自分の感情に鈍感な主人公のお話だと思う。
    「いいな私と別れられて」その言葉に全て詰まってる気がした
    主人公が見えてる世界は何色なんだろうか、と読みながら考えた

  • 自己完結した人間がここまで増えてしまった時代における、恋愛の不可能を描いた小説である。

    自己完結した人間は、恋愛というシチュエーション抜きで世界に対して「閉じる」ことができる。だからわざわざ「二者完結」などという、メンドクサイ状態を他人との間に構築すら必要がない。

    つまり、自己完結できる人間は恋愛をしないのである。

    と、
    あとがきのこの文章に、
    軽く眩暈を覚えた、、、

    板垣寧子のような
    メンヘラではない
    過眠症でもない
    感情の起伏も激しくはない

    でも、

    時々ふと世の中の自分との間に
    なんとも言えない大きな溝を感じ
    急にこわくなり
    今までのすべての自信が
    なくなったように感じたり

    突然なにもかもが嫌になり
    コタツやあったかい布団や
    なんの主張もないただやさしくて
    ぬるいオトコのカラダに
    埋れていたいと感じたり

    硬くて冷たくて
    なんの反応もない壁や床を
    素手で叩き割りたくなったり

    そんな、
    わたしが自己完結してしまった今、

    もう誰かと普通の恋愛は
    出来ないのだろうか

    もう私には恋愛は
    必要ではないのだろうか

  • 読むのにもエネルギーの必要な作品だった。無防備な心で読むと引き摺り込まれそうになる。

  • 2022年4月1日読了。

    鬱症状と多眠症を拗らせまくりの25歳『板垣寧子』
    人数合わせとして参加した合コンで知り合った『津奈木景』のアパートに転がり込むようにして始まった同棲も3年。
    寧子は家事も仕事も出来ず、寝てばかりで引きこもりの日々。
    このままではいけないと焦りながらも、自分自身をコントロールする事が出来ずイライラが募り、毎度毎度何に対して怒っているのかも分からないまま津奈木に強く当たり散らしてしまう。
    発行部数の少ないゴシップ雑誌ながらも編集長として働く津奈木は、多忙な日々の中でそんな寧子の言動を疎ましがる事も干渉する事もなく過ごしていた。

    最早、お互いに何故一緒にいるのかも分からないような毎日を送る中で、突如、アパートに現れた津奈木の元カノ『安堂』
    津奈木との復縁を望む安堂は、邪魔な寧子を追い出そうと執拗に迫ってくる。
    寧子は出ていくにも金も仕事もないと抵抗するが、安堂に無理矢理にレストランでアルバイトをさせられる事に。
    そこで出会った優しいスタッフ達となんとかやっていけると思った寧子だったが‥‥。


    初読みの作家、本谷有希子さん。
    何がきっかけだったか忘れてしまったが、何冊か購入した中の一冊。

    内容に関しては‥‥うーん、自分が読んでも共感出来る部分は無かった。
    寧子ほど突拍子も無い症状の人がいるのかは分からないが、同じような症状で悩みを抱える人には考えさせられる作品なのかもしれない。

    寧子はコントロールする事の出来ない自分の言動に悩んでいたが(思ってもいない事を言ってしまったり、全身の毛を全て剃ってしまったり、 トイレを破壊したり)
    やりたいと思っても自制心が働いて我慢する人間からすれば、捉え方によっては自分に素直に生きる良い生き方と言えなくもない気がした。
    でも、やはり自分もその状態なら悩んでしまうとは思うが。

    文章に関しては、何とも『ジャンクな感じ』
    ジャンクと言っても悪い意味ではなく、荒々しいというか粗暴というか力強さを感じる。
    きっと他の作品もこの感じの文章なんじゃないかと推測するけど、嫌いじゃないので何冊か待機している著者の本を楽しみにしたい。

    映画化もされていたので鑑賞済み。
    原作を読んでからの映像作品はガッカリする事が多いが、この作品に関しては映画の方が好きでした。
    やはり文章だけでは感じ取りづらかった部分も、演技によって理解し易く感じた。
    原作に忠実でありながら、オリジナル要素も含まれていて映画として楽しめた。
    原作では我の一切無い男のように描かれていた津奈木だが、映画では菅田将暉が演じる津奈木の感情の起伏が描かれていて、そこには共感出来る部分もあった。
    趣里が演じる寧子も鬼気迫るものがあり、狂気すら感じる演技だった。

  • 最近多い「弱者のメンタルを赤裸々に描き、希望を与えるわけではないけれどやさしいまなざしをむける作品」の一つのようで、表現の目のつけどころでワンランク上をいってると思う。
    読み終わって、表紙の北斎の絵をじっと眺めてしまった。
    5000分の1秒でいいから、「この瞬間」を心に焼き付けてもらいたい・・・・奇跡的な数字を要求しているのに、「それだけでいいから」と言ってしまえる主人公の甘えと切実さが、すがすがしい。

    ・・といったけど、この物語の主人公の生活にすがすがしさなんか一片もない。25歳、メンヘル、無職パラサイト、過眠症。
    同じ年頃として、女として・・・・いやーこんなん友達としては絶対愛想付かす自信あるけど(そもそも友達にしてもらえない気がする)、自分の中にもこの主人公のちっさな分身おるな。自覚的に内側にくくって出てこないようにしてるだけで。
    「自分だって病んでひたすら寝てたいわ」という屈折した願望から、彼女のような人を甘えてる人間、と判断して自分の甘えを外部化(遠隔化?)してちょっと落ち着く・・・という、自分のすごく嫌な部分も発見したし、
    こういう人でも誰かに「5000分の1の瞬間」を与える側になりうるんだよな、という新たな目線が生まれた。
    薄い本なんだけど、個人的には印象深い一冊。

    メンヘルっていうカテゴリーが未だによくわからないけれど(自己申告制なのか?)、「外に出てなんかしてくること」とか「自分を含め人一般とかかわること」、ひっくるめて言えばは社会的な行動をとることに、人より緊張するんかな。
    素朴な疑問なんだけど、こういう人たちは、ほんとに食っていけなくなったら(親兄弟友人知人恋人、全てなくなった場合)どうすんだろ。メンヘルという言葉が市民権を得ている今、こんな疑問は愚問なのか。

    真剣に悩んでいる人たちにとっては「高みの見物しやがって」と言われそうな感想だけど、これはある意味女子にとってはおとぎ話のような、相当ロマンチックな話だと思った。どんだけ突き放しても痛めつけても自分の一等酷い有様を見せても、ありのままの自分をうけいれてくれる…たとえ全体の5000分の1しか理解されてないとしても。
    そんな至極女子的な甘えがぷんぷんするものの、嫌みは少なくい。状況の割に後味は軽いけど、インパクトは大。今後「運命の出会い」ときいたら電流びびっじゃなくて波ざっぱーんを連想するだろうと思う。北斎のね。

  • 新しい気持ちを引き出されたりとかはなかったけど、ひたすら共感できる部分が多かった。

  • はじめは寧子の奇人ぶりに興味を持ちつつ引きながら読んでいた。自分も軽度の過眠症なので、夕方に起きて滅入る主人公にはめちゃくちゃ共感できた。
    読了後は寧子に親しみを持てた。日によって気分が変わったり、突発的な行動に後悔することが自分もよくある。
    津奈木が3年付き合った理由はよくわからなかった。クライマックスで一応回答はあったがピンとこなかった。ただ寧子と真剣に向き合っていたであろうし、第一印象によらず最終場面で男らしい?一面も見られたので、いい男だと思う。

  • メンヘラではないけれど、共感できるところも。
    自分が向き合いたい相手って、
    相手も、必死に向き合ってくれることを望むんだよな。

    以下、好きな部分。

    上野の森美術館にピカソ展を観に行って「ラーラリラーって感じだね」ってコメントした時、「ラーラリヒーって感じだと思う」と真顔で返されて、あたしは死ぬほど嬉しかったし、この男のことが大事だと心から思った。馬鹿みたいだったけど、あれが恋愛じゃなかったらあたしは恋愛を知らない。

著者プロフィール

小説家・劇作家

「2022年 『ベスト・エッセイ2022』 で使われていた紹介文から引用しています。」

本谷有希子の作品

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