- Amazon.co.jp ・本 (443ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101391212
作品紹介・あらすじ
「世界の工場」として、アメリカに次ぐ経済大国の地位に登りつめながら、凄まじい貧富の差や大気汚染、水不足など容易に解決できない難題を抱える現代中国。加えて、軍事費を増大させ、外洋進出まで図る人民解放軍を党中央がコントロールできているのかどうかも定かでない。無関心ではいられない「やっかいな隣人」のありのままの姿を、綿密な現地取材で明らかにした必読ルポ。
感想・レビュー・書評
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本書は某ノンフィクション専門書評サイトで紹介された途端にAmazonで在庫切れになった話題の書籍です。
文面は平易で判り易く、この手の書籍にありがちな難解な言葉使いや数字やグラフ等が沢山参照されている様な事は無く中国通のジャーナリストである著者が中国関係者とのインタビューを通じて知り得た情報を基に纏めた2007年当時の中国の大きな問題点について書かれた文庫版ですが今でも、でも恐らく同じ問題が横たわっているのだろうと想像出来ます。
上海や北京・香港等は馴染みのある都市でメディアにも頻繁に登場し料理や観光・買い物等で身近な場所ではありますが、一方でそれだけ近隣である事は本書で綴られている水資源や水質汚染・空気汚染等の問題は西から東に風も海流も流れている環境で中国より東の国、日本ではもはや他人事ではなく深刻な国内問題となるのではないかと本当に無関心では居られない程に興味深く読まされた本でした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
本書は、日本にとっての中国の脅威を、水不足・環境破壊、汚職、農村の貧困、人民解放軍の闇、反日、台湾問題から説き起こしている。
何れも、そのおおもとには「過剰な人口による過剰な競争」が育んだ強かさと、虐げられてきた層の苛立ちがあるとのこと。「ルールを守ることのできる社会は、ルールを守っていれば最低限のモノが手に入れられるという裏つけがなくては成立しない。中国にはこの範囲を超えた競争が存在する。」という言葉が印象的。
兎に角厄介な国だなぁ。 -
21世紀は、水資源を取り合う争いが、世界で起こると予測される。特に水量の乏しい中国は、近年の近代化により水資源の枯渇が、大問題になっているらしい、少女たちが朝シャン(自由経済振興地域の女性たち)している場合じゃないほど、緊迫している。
合わせて、利益優先の工業化により、全国的に環境汚染は、取り返しのつかない状態なのだとか、そして所得格差が広がることで、内陸の農民の暴発はいつ起こるともしれない。他、日本政府の対中国外交が、あまりの体たらくであるなど・・・昨今の中国情勢を詳細に知ることができる。 -
日本の中国ウォッチャー富坂聰氏の著作。
厚いベールに包まれた中国という国で、外からは見えずに燻っている火種は何か。
格差、環境などの中国の国内問題が、日本の国内問題になってしまう時代の到来。まさに大難。
NHKの歴史番組で、歴史学者の磯田道史氏が、停滞即ち新政府の威信の失墜に繋がるため拙速でも政策を打ち出し続けなければならなかった明治日本を評して、常に回転し続けなければ転がってしまうコマだといったことがあったが、周りを押しのけながら回り続けなければ立っていられず、かといって回転が緩めば周りを巻き込みながら転倒する、この中国こそ、現代ではその例えにふさわしい。 -
数字で
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急激な経済発展とその代償を抱え、近隣国にも影響を及ぼす。中国ばかりでないが大国だけに厄介だ。内政問題を党がやらないのでなく、仕切れないというのもよくわかった。中国だけでなく、北方領土に対するロシアも同じなのかもしれない。15.8.30
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著しい経済成長、世界の工場、新たな市場、などと経済の文脈で語られる中国。その経済力は世界経済に影響を与えている。
そんな中国は実際どんな国か。本書は実情を取材したレポート内容だ。
大気汚染の話はよく聞いていたし格差が激しいと耳にしていたが、ここまでとは・・と読んでて驚きだった。特に水不足の問題は初耳。人民解放軍がどこまで共産党のコントロール化にあり、文民統制が末端まで行き届いているのか。ほんとの所は日本人には分からないのではないかと思ってしまう。それほど複雑な力学が権力の中枢で働いている。中国共産党と解放軍が一枚岩でもなく、きっちりと統率もとれていない実情に背筋が寒くなった。
中国国内の苛酷な生存競争と超絶な格差。医療・社会保障制度の未整備。人口の流動化。これらが引き起こす国民の社会不安や不満を外国相手にガス抜きする。あり得る話で中国だけの事例ではない。だが、周辺国としてはたまったもんじゃない。特に標的とされる日本は格好のサンドバッグだ。
隣に存在する以上、好悪を越えてうまくやっていくしかないのだが、ほんとやっかいな国が海を隔てた隣にいる。やれやれである。