すずの爪あと: 乃南アサ短編傑作選 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (459ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101425566

作品紹介・あらすじ

原発誘致と震災でバラバラになってしまう家族――「すずの爪あと」。不倫に倦んで帰郷した女が再会した同級生は、殺人犯だった――「秋旱(あきひでり)」。体臭に恐怖する女と嗅覚味覚のない男の出会い――「向日葵(ひまわり)」。メールの相手は過去の恋人ではなく、その妻だった――「Eメール」。ひとつになれない家族、すれ違う女と男の心理を丁寧に描いた珠玉のベスト短編集。単行本未収録作品を特別追加。

感想・レビュー・書評

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  • いきなり廃線となった能登線の珠洲駅が出てきて、鉄道ファンとしては嬉しい表題作。猫が主役だが心に爪あとは残らないほっこりした結末。それに気を許し、以降の短編を読み進めると毒のある結末に、気持ちが掻き乱される。「秋旱」で不倫と自由恋愛の狭間で揺れ動く女性の描き方が心に残る。書名に惹かれて購入したが、『新釈 にっぽん昔話』に続く2冊目の著者作品でベスト版を読み、何となく湊かなえのような作風なのかな~と感じ……次は傑作選ではない作品を読んでみよう。

  • 短編集。

    表題作が和み系だったので「珍しい、今回はそういう系?」と思ったらそんなことなかった。
    ですよね!

  • 最初の猫のお話とEメールぐらいかな、優しい気持ちになれるのは。それ以外は微妙な人ばかり。まあ、テーマが狂気の男だからね。でも、ああいう思い込みの激しい人は男女ともに増えてるよね。

  • 様々な人間ドラマを描く事で定評のある乃南アサ氏の短編集。それぞれ、あっという展開があり、面白い。

  • 他の本で読んだことのある話もあった。傑作選だから仕方ないこと。
    それなりにほっこりする話や、嫌な後味の話。読みやすいのに、読み進めにくかった。

  • *一つになれない家族を猫だけが見つめ続けた――「すずの爪あと」。不倫に倦んで故郷に帰った女が癒やしを求めたのは――「秋旱」。幼時の事故で嗅覚を失った男が、ある女と出会って――「向日葵」。かつての恋人に書き続けたメールの思わぬ行方――「Eメール」。すれ違い、交錯する男女や家族の想いを、美しい風物とともに丁寧に描き出した11篇。最新作を含む珠玉のベスト短編集、第三弾*

    さすが傑作集!どの作品も本当に読ませてくれます。

    今回のテーマは「狂気の男たち」。
    どの主人公たちも、一見普通で、目立たず、控えめで、自己主張がないように見えるものの、実は人一倍プライドが高かったり、こだわりが強かったりで、一筋縄ではいかない強者揃い。作中や読後に漂う不穏さ、お見事です。

  • どの短編も味わい深く読み応えがありましたが 「ふく」と言う名の猫の主人公の目線で書かれた「すずの爪あと」では心が温まるラストに感動。

    歯科技工士とジュエリー・デザイナーの組み合わせが新鮮で 恐怖を覚える結末の「こころとかして」 
    タイトルと内容がぴったりマッチしていてとても良い。

    夫婦の心理戦を描いた「寝言」

    平々凡々だが心に凶器を持つ男を描いた「指定席」

    最後までドキドキが止まらない「向日葵」「水虎 すいこ」

    改めて読み直しても臨場感はそのままで以前と同じように楽しむ事が出来ました。

  • こんなにバラエティに富んだ短編集も珍しい。

    すずの爪あと

    穏やかな猫の目線からの話


    こころとかして

    歯科技工士をしている広樹は職場の金の粉をこっそり集め、想いを寄せる彼女に自作の金のリングを贈る。
    贈ったその日以来姿を見ることはなく、次にそのリングを見たのは、金歯を入れるためそのリングを持ってきた女優のたまごだった…


    寝言


    僕のトんちゃん

    これはかなり恐ろしくヤバい!
    外では大人として振る舞い、家の中では子供ごっこをする夫婦の話。
    オットはだんだん、現実と夢の狭間を分からなくなってゆく……


    指定席
    壁に同化してしまうくらい、目につかない中年サラリーマンの定時退社後のルーティン。
    1駅先まで乗り、本屋に行き、なじみの喫茶店でコーヒーを飲む。ウエィトレスに覚えてもらっていると思い込み、そうでないとわかり、放火する…



    出前家族
    ボケてきたおじいちゃん。それはボケたふりだったのか?
    本当の息子夫婦を流行りのレンタル家族だと思いこみ、それが分かりつつも、そのまま曖昧な遺言を残して亡くなっていく…



    向日葵
    幼い頃の転落事故により匂いを感じられなくなった男。
    自分の体臭を、極度に気にする女。
    このふたりが出会い、女は自分の体臭が、わからない男にずっとついていこうと決める。それは嗅覚のない男の母親の死体の始末から、一緒に、ということだった…


    氷雨心中



    秋早


    eメール
    途中から、なんとなく話が見えてきたが、いい話です。このふたりが生涯の友になれますように。


    水虎


    短編集は、何となくジャンルが纏まっているように感じるが、これは1作1作が別の独立した話なので、文庫1冊でとても楽しめる。
    面白かった。

  • 感動物もあるが、大半はオチが黒い物。それが面白い。僕のトンちゃんは初めから異様な世界観が展開されていて面白い。

  • R1/11/11

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著者プロフィール

1960年東京生まれ。88年『幸福な朝食』が第1回日本推理サスペンス大賞優秀作となる。96年『凍える牙』で第115回直木賞、2011年『地のはてから』で第6回中央公論文芸賞、2016年『水曜日の凱歌』で第66回芸術選奨文部科学大臣賞をそれぞれ受賞。主な著書に、『ライン』『鍵』『鎖』『不発弾』『火のみち』『風の墓碑銘(エピタフ)』『ウツボカズラの夢』『ミャンマー 失われるアジアのふるさと』『犯意』『ニサッタ、ニサッタ』『自白 刑事・土門功太朗』『すれ違う背中を』『禁猟区』『旅の闇にとける』『美麗島紀行』『ビジュアル年表 台湾統治五十年』『いちばん長い夜に』『新釈 にっぽん昔話』『それは秘密の』『六月の雪』など多数。

「2022年 『チーム・オベリベリ (下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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